AWAZI PerfectRide 〜南淡路攻略編〜


『さ、ほな行きましょか。』

とサドルに跨る。
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休憩も昼食もとったし、

何より、
後は鳴門門をやっつけるだけだと言う思いが、
出発の足を軽くした。

そこからはほぼ直線と言って良い海岸線。

起伏はないが、コンクリートの地肌の様な路面と、
劣化したアスファルトで激しく振動し、
それに加えて延々と緩やかな向かい風。
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これが全く楽しくなく、
地味に体力を削っていた。

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ここはトレインを崩さずやり過ごす。
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とにかく、ピスト初心者のブナマがしっかり着いて来てるのが
すごい。
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しばらく同じ様な景色に飽きてきて、
むしろ少しなごみ始めた頃、
上り勾配になってくる。

まぁ、少しくらいの丘は覚悟していた、ところが。

また、

突如としてその勾配はグンと背を立てて、
その雰囲気は丘と言うより山に近い。

後、峠は鳴門門だけと思ってた気持ちは、
簡単に裏切られた。

既にアキラさんブナマ、ウエキュンの三人は降車して押し歩き出す。

俺含む残りの三人は、降りない。


先頭の俺を、またしてもホイホイっと、
抜き去る前田さん。

とてもついて行けない。
後ろからユックリ抜きかけてくるソウ君と並んだ。

彼は、小さく蛇行しながら走る事で、
なんとか登っている。

俺もそれを見習い、蛇行。

速度計を見ると、時速6km。

案の定、押し歩いてるウエキュンに追いつかれ、
彼は抜き様に「押した方が速いっすよ。」と言い放っていった。


速いとか楽とかじゃない、
もし、ここで妙なやり残しを作れば、また淡路に来なければ行けない。

『・・・冗談じゃない』

俺は、下ハンをガッチリ握り直し、うねうねと車体をうねらせながら登る。
押し歩く奴らを抜き、

ぼたぼたと落ちる汗を拭く事も叶わずに、
ペダルを踏む、と言うより、ハンドルを引く。

突然、
大円筋(背中の脇の裏の筋肉)がピキッと音を立てた気がした。
次の瞬間、それが激痛に変わる。
ハンドルを握る手を緩めそうになるが、あと少しで下りかもしれない、

そう信じ、引いて、引いて、

時にはソウ君と声を掛け合いながら登る。
何の打ち合わせもしてないが、
きっとソウ君も俺と同じ様なルールで今回走ってるんだろう。

「絶対完走」、だと。

まもなく下りが見え、
その高度に気がつく。

水仙郷より延々と急な登りが続いた。
足も背中ももう限界だ。

足を持っていかれない程度に、
坂を下る。

ピストでの下りは気を緩める事が出来ず、
緊張の連続だが、
それでもまだ下りがマシと思える程、ヒドイ峠だった。

下りきった交差点で一旦皆を待つ。
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『おいおい、こんな峠あるなんて聞いてないで〜』

皆口々に毒づいて、それでも笑う。

予想外だった事も含めて、本当に苦しかった。

押し歩いた連中も皆ぐったり。特にSPDで登山した
アキラさんは、常にアキレス腱がストレッチ状態だったとか・・。

そりゃ、彼も壊れます。
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流石に鳴門門も不安になる疲労具合。
しかし距離計を見ると、

走行距離75km。

なんと、まだ80kmにも届いていなかった。
傾きだした秋の日差しに初めて不安を感じたのはこの時だ。

ボトルの水を口に含んで吐き出して、
今度はガブガブ流し込む。

旅は、
ようやく折り返し地点に差し掛かったところだった。


続く

AWAZI PerfectRide 〜それぞれの道編〜

メーターを確認しなくても、
ここまでの距離は想像がつく。

恐らくまだ、100km超えていない。
80km前後、といったトコだろう。

到着するなり、
前田さんは『回復や〜』と足湯に。
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衛生上の問題で、足湯に躊躇するソウ君。
まぁ、気持ちは解る。

しかし俺は、とにかくブナマが気になる。
何度目かの連絡でようやく電話がつながり、
足湯で落ち合う事に。

アキラさんも無事合流し、

安心した俺はとにかく、足湯へ。

やや濁る湯。

ぬるっとした感触に、流石に躊躇するものの、
脚の疲労に加え無類の温泉好きの血が、
既に靴下を脱がせる。

前田さんと向かい合い、
ほーっ、と、
息を着く。

ヘモグロビンが酸素をたっぷり含んで、
ふくらはぎを駆け回る気がした。


間もなく、出発。
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ここで、160コースと、130コースに分かれる。

アキラさんは、
『コレで前回と合わせたら160km。もう全部知ってる(笑)』
と、
福良をショートカットする130kmコースを選択。

ウエキュンは、鳴門門はパスって事で、
155kmコース。

たかだか5kmの違いと思うかも知れないが、
一度この5kmを走ったら、わざわざもう一度走ろうなんて
普通は思わない、そんな5kmだ。

ブナマも当然、そのショートカットコースへ。
いや、彼は十分過ぎる程頑張った。
むしろピスト乗りたてで130kmでも相当キツイはずだ。

『ほんま、下り坂では死ぬかと思いましたよ』

そんな彼の言葉に罪悪感混じりに笑いながら、
それぞれの道へ。

残る3人は、もちろん160km。

パーフェクトライドだ。


ちりめんロードと名付けられた海岸沿いの道を走る。

香ばしいちりめんの匂いを馳走に、
いまなら白ごはん2杯はイケルな、

なんて思いながらいよいよ、最後の登山、
鳴門門へ。

平坦な漁村の道から、一気に山道へ。
織り込み済みだ、
と強がっても脚が思うようには進まない。

だが、

前田さんが俺を抜き、ソウ君が続く。

いくら引っ張るのがシンドいったって、
ちょっと悔しい。

前回の余裕はテースケさんあっての余裕だったと、
感謝したり、自分の浅はかさに後悔しながら
二人を追う。


小径車で前方を苦しそうに走る、
茶髪にピンクジャージの女子をソウ君が事も無げに抜く。

ほほー、ソウ君、意外と紳士じゃないなぁ、

紳士な俺は抜きザマに、

『頑張ってくださいね!』

と声をかけ、ちらと横顔を覗くと、

オカンくらいの歳の女性が
息絶え絶えに、なんなら軽く睨んでる。


・・・。

笑顔をで一つ頷いて見せ、
すぐに正面を向きなおす。

坂道は苦しい。


前方の二人はガンガン俺とのきょりを空けるが、

福良方面と鳴門門の分岐点に止まってるのが見えた。

ぜーぜー言いながら、俺はどうしました?
と尋ねると、

「・・・鳴門門、いくの?」

と前田さん。
俺は、

そうっす、行って帰らないと、160にならないんですよ!

と叫ぶ。

鳴門門に行っても、結局この分岐点まで帰って来なければいけない。
いわば、ただの寄り道なのだ。

「やっぱ行くんやー」

とほほ、と二人、走り出す。
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あの前田さんでも泣き言を漏らす程、
すでに俺たちは疲労困憊だった。

鳴門門までは強烈な下り。
って事は・・・

とにかく南端、鳴門門に到着。
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写真だけ撮り、
すぐ出発。もう観光なんか意味がない。

分岐点までひいひい上がると、
なんとウエキュンとブナマが二人で
坂を押して歩いていた。

結局合流。

ここから福良港までは強烈な高速コーナーと下りが続く。


脚が回らない。

ピストで下ると脚が回されるというが、
クランクの回転にもう、脚がついていかない。

そうなるとどうなるか、というと、

チェーンが、ガッチャンガッチャン音を立て始め、
「まわせ、まわせ」とせがむのだ。

もう、いつチェーンが外れてもおかしくない。

速度計はすでに50kmを超えている。

高速コーナー、ブレーキを握りしめるが、効かない。

ステム横に着けた補助レバーみたいなレバーでは、
上手く握れるわけもない。

下って、大きく左に曲がり、すぐに大きな登り。

歪んだランプみたいなもんだ、

下りで速度を落としたら、次の登りが登れない。

クランクに脚を引っ張られるように、それでも回し、
膨らみながらコーナーを抜け、
登り頂上付近まで上がる。

楽しむ余裕はない。

そこからの下りは、握力の勝負だった。

下りきった時には肩も腕もパンパン。
今日、使ってない筋肉はあるんだろうか。

先へ行こうとするとソウ君が
『ブナマさん、道大丈夫ですか?少し待ちましょう。』

そりゃそうか、この福良港あたりは迷いやすい。

ブナマの凄いところは、少し待てば、
必ず来る、って事だ。
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遅くても途中で投げないのは、本当に根性が要る。


福良港辺は住居も多く、立体的な町並みになっている。
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故に、やはり坂道も多い。
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峠はないが、もう本当に少しの登りも勘弁して欲しい。

やがて海岸線、西海岸ルートに出る。
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アキラさんは結局、先にゴールを目指す事になったので、
間に合えば岩屋のゴールで合流だ。


とにかく、次のコンビニまで。

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日は沈み始め、
淡路の空を赤く、
海を黒く染めてゆく。

風は、よりねっとり絡みつき、
やがて俺達の行く手を遮る壁となる。

5台編成のトレインは、
うねる向かい風の合間を抜けようと、

ただ必死でペダルを踏んだ。



続く




AWAZI PerfectRide 〜蒼い閃光編〜

平坦で快適な南海岸も、
この時間になるとまとわりつくような向かい風の
洗礼を受ける羽目になる。

去年、イクジ達と初めて淡路を廻った時も、
夕暮れにこの道で風に苦しめられたのではなかったか、

それも逆周りで。

要は、西から風が吹いてるのだろう。

実際、淡路島は地理的に西風を受けやすいらしく、
風車も全て西風を受けるべく設置されている。

なんにせよあの時は100kmぐらいでひいひい言ってたが、
走りきった後は爽快だった。
ファンライドってのはそんなもんで、

こんなに身体に負担がかかる程走るのは
身の程知らずの無謀な行為でしかない。

そんな事を考えながら、
きしみ出した膝を押し込む。


少し登りがあれば、
簡単にトレインは崩れる。

コンビニが見える度全員揃うまで待ち、
出発の繰り返し。
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しかし、休憩が多過ぎるのも疲れる。


やがて、
界面が群青から深淵の闇へと表情を変えて行く。

また坂だ。

シッティングで登りだしたが
速度が落ちる。

見かねて前田さんとソウ君が前に出て引こうと
してくれるので、
付いて行こうとダンシングで加速しようとしたが、
さらにガクンと速度が落ちて、二人は離れていく。

もう、ダンシングに使う筋肉も売り切れてるらしい。

サドルに座り、
ペダルを踏めば、ピストはペダルが脚を押し上げてくる。

相棒が、がんばれがんばれ、と、
俺の足の裏を押し上げてくれるようだった。

やがて、

空には星が浮かび、
海面、とゆうか、
ガードレールの向こうは一切の闇。

街灯もなく、
ノグライトの点滅を常灯に変えても、
その灯は頼りない。


ついに、闇の中を走る。


トレインは切れたブナマを除き、
4台編成。

登りの引きで限界を迎えた前田さんを救ったのは、
まさかのウエキュンだった。

さっと先頭に出て、
トレインを引く。

少し離れたソウ君と俺も続く。

まさかでも無いか、
彼はこの時の為に序盤をセーブしてたんだろう。

いやらしい奴だが、助かった。


暫く巡航してると、
突然先頭の速度がガタ落ちした。

危ない、と思うと、ウエキュンは対向車線側に
ふらりと出て、そのままコンビニへ。

『・・・意識やばかったっす、ハンガーノックってやつですかねぇ・・・』

と、コンビニで補給を摂りながらウエキュン。
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俺もオニギリとシュークリームと言うナゾの組み合わせの
補給食を買う。

後からコンビニに入ってきたソウ君は、
目の下にクマが出来ていて、
俺の顔みて愛想笑ったつもりだろうが、

彼の体躯も相まって、
ヒットマンが獲物を捉えてほくそ笑んでる様にしか
見えなかった。

こわい(笑)。

満身創痍でブナマを待つ。

ずいぶん待って、
アキラさんがフェリー乗り場に着いた連絡をもらった頃、

闇の中に光る点滅光。

ブナマだ。

彼は、
軽ギアで乗りたてのピストで、坂道は全部押しながらも、
それでも止まらず走ってきたのだろう。

コンビニについた彼は遅れを取った事を気にしてか、
少し休んでなんか食えって俺の言葉に、
「もういけますよ、行きましょう」と絶え絶えに返す。

まぁええからコレ食っとけ、と、
俺は手に持っていたシュークリームを彼に投げつけ、

それを見てソウ君が、ヨッシャンを思い出しますね、
と笑う。

『よし、ほんな行きましょかー!後もうちょっとで完走でっせー!』

とワザと声を張り上げおどけてみせた。

普通みんな、その心意気を買う場面なのだが、
ウエキュンだけは

「じゃぁモッツさん引いて下さいね…」

…なんて嫌なヤツなんだ、ウエキュン・


で、

ここからは最終ステージ。
ラスト12km程だ。


相変わらず街灯も無く、
後方から来る車のライトを手がかりに
道を確認するが、

正面から来る車のハイビームに完全に視界を奪われる。

なんどか側溝に落ちそうになり冷や汗をかき、
意識を取り戻す。


この闇の先をどれほど踏んだらゴールなんだろう、

闇の深さに、もう21時を回ってる様な錯覚を起こすが、
実はまだ19時を過ぎたくらいだ。

進まない事に苛立ち、

膝の痛みに耐え、

尻や股の痛みには気が付かないフリで、

全身の至る箇所の筋肉がこれ以上痙攣を起こさない様に
注意して。

もう、早くウチに帰りたい。

すぐにシャワーを浴びたい。



・・・いったい俺は何が楽しいんだろう。

考えるな、

今出来ることはただペダルを踏むだけ。

結局は、

今できることを今できない奴は、
ドコにもたどり着けないって事だ。


だから、それだけをヤル。

永遠の様な10kmをただ踏めばいい。


突如、

左の空に蒼い閃光。

淡路海峡大橋が、闇の中に浮かび上がる。
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いつもならテンション上がって最後の力が出る所だが
余力はまるでない。
ペースを崩さず、近づいた。


道の駅淡路、19:20着。


売店は店を閉めていて、
何か食物を求めてた俺たちはドッと疲れ、

前田さんですら、
「商売ッけないなぁ!これじゃアカンで!」と
思わず毒づく。

しばし放心。

ソウ君がブナマが通り過ぎてしまわない様、
道沿いまで迎えに行き、

しばらくしてブナマを連れて戻ってきた。

ブナマは車輪止めに気づかず、
ぶつけてコケそうになる。

フラフラの体で、チャリを降りて真っ直ぐ
前田さんの所へ行き、

『今日は迷惑かけてスイマセンでした』
と頭を下げた。

いやいや、なにゆーてんねん!、

思わず、皆叫ぶ。

お前が一番頑張ったやろーに。

皆体力的には限界だ。
故か、
本当の意味で讃え合ってる様な気もした。


誰だって、他人の全てを認める事なんか出来ないが、

たった一つでも本気で賞賛し、感謝出来るなら、
その瞬間はわかり合ってると言っていいんじゃないだろうか。


「あれ?もっさん、アキラさんは?」

携帯見ると

『サーセン、お先しますm(_ _)m』

・・・もうフェリーの上っすね(笑)。

よし、
帰ろう。

残り2km、ゆっくり5人で喋りながら、笑いながら走る。

明石に着き、

ソウ君とウエキュンはサクッと帰り、
俺と前田さん、ブナマの3人はスタバでコーヒーを啜る。

後日、また打ち上げしましょう、
ではその時まで。



梅田駅から堀江へ一気に踏み込む。

晩飯もコンビニか、
と自分に苦笑しながら弁当とビール、
それも一番美味いビールを買う。


念願のシャワーの後のビール。

美味い、でも、眠い。

今は完走したって事実より、
無事に帰った事を思い、

眠気を押して残りのビールを流し込んだ。




続く







AWAZI PerfectRide 〜挑戦の果て編〜

淡路島を一周した日から、
丁度一週間が経とうとしていた日曜の朝。

宅配便のベルで目を覚ます。

突然実家から大量の魚、
生カレイが14匹箱詰されて送られてきた。

今夜は淡路の打ち上げで、
それまでにやる事も沢山あるのに。

カレイの処理に追われる。
まったく、まさかのカレイテロだ。




とにかく、
あの翌日は酷いもんで、

ペダルを踏むだけでも筋肉が悲鳴をあげ、
階段を降りようとすれば、膝が痛みで曲がらない。

身体はの披露は2、3日引きずり、
なぜか異常に腹が減る。

今日を迎え、ようやく普通に暮らせる
様になったくらいだ。




夕方。
ソウ君と待ち合わせ宴へと向かう。

会場は、もちろん『ジンボ』。

バックパックに生カレイをたっぷり入れて、
お店へのお土産に。

18時過ぎ。

のれんをくぐると、
前田夫妻が先に来ていた。
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ジンちゃんに無理言って早めに店開けてもらったのに、
遅れてスイマセン、
と、カレイを渡す。

そのウチ、ブナマがやってきて、
同時にヨッシャンが到着。

とりあえず、ここらで乾杯だ。
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もう、皆で淡路島に毒付きまくる。

なんだあの坂、
風車は普通てっぺんだろう、
なんで街灯ないねん、怖いやんけ!

と、笑いながら話す姿は
皆学生の頃にでも戻った様子で、

普段言葉数の少ないブナマも饒舌になる。

ウエキュンだけが今夜どうしても来れず、
「彼の頑張りに助けられた。一言伝えたかったなぁ」
と前田さんは残念そう。

そのうちアキラさんも飄々と登場。
「ブナマ君、絶対こっち(130kmコース)に着いてくると思ったのに」
と笑いながらアキラさん。

そうっすよ〜、とブナマが後悔して見せ、
夜の海岸線は、ホンマ怖すぎて泣くかと思いましたよ、
と続ける。
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誰もが、

お互いに限界まで頑張ったのを知ってる夜。


ジンちゃんがカレイを丸揚げにしてくれた。
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香ばしい油の匂いが店に充満する。

サクサクと魚をついばみながら、ビールが止まらない。

とにかく、二度と淡路(一周)なんか行くか、と

皆笑いながら酒を煽り、それを悔しそうに聞くヨッシャン。
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ジンちゃんが会話に巧いアイの手を入れて、
また盛り上がる。
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今になって、ようやく淡路島を完走したんだな、
と実感し、

またこのメンバーで何かしたいと思ってしまう。
正直、もう淡路島はコリゴリだけど(笑)。



こんな挑戦に意味があるのか。

いや、

意味なんて、やった後に、
やった奴が考えればいい。

こんな夜を迎える度、

心からそう思えるんだ。









長い一日 前篇

私は、その男の写真を三葉、見たことがある。

一葉は、その男の「美脚コンテスト」だろうか、

誇らしげな姿。
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スネ毛は剃られている様だ。


第二葉は、
和気藹々とした名立たるカルチャーライダーの輪に巧く入っていけずに
水(粉モノ)を飲む姿。

そして最後の一葉は、
顔に無数のハンペンを貼り付けた哀れな姿。

この全てが、この時系列で、
たった1日の間に起こった事実を表しているという。

私はこれまで、こんな不思議な男の顔を見た事が、

やはり、いちども無かった。



●「第一の手記」

恥の多い1日を送ってしまいました。


朝も3時半、世間では早朝と言うより夜中と言うべきでしょうか。
自分達は目覚め、コーヒーを啜ります。
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カルチャーな装いの「motz-fixedチーム」は、
熊取町から兵庫は三木市へ、
時間にして1時間40分の旅へ出かけます。

リュドラガールを出る頃には4時、
グリーンピア三木で行われるロードレースエンデューロの受付は
05時40分終了。

調度すぎて、多分間に合いません。


ここで間に合わないと、
いきなり人間ではなくなります。

「モッツさん、言わなくても飛ばせる様になったじゃないですか・・・」
と助手席のヨッシャンに煽られつつ、

なんとか10分前に会場到着。

起きて、コーヒー以外の何も口にしないまま、
一周9キロのコースを試走。

完全なるパニアグアで、
昇りと下りしかないコースを走ります。
いや、パンと水でも在ればガブついていたでしょう。

この日、自分は、
カッコイイラグドフレームのkinfolkをヨッシャンから借りていて、
いやはや、ロードバイクてのは速いもんですな、
と感激したものです。

ちなみにソウ君はシクロも走った相棒、ビアンキピスタを多段化。
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このフレーム、実は130エンドと言う事実。

とはいえ、フロントはシングルで、
この勾配のあるコースはいかにも厳しそうであります。

自分達は、「100分チーム戦」にエントリー。

要は、

100分以内に9kmのコースを何周走れるか、
というレースですが、
独りで100分走る人の多い中、
自分達は3人で100分走るというチキンぶり。

でもイイのです、表彰台さえ狙えれば・・・。


チームでエントリーしてるのは、8組。

ほぼ3分の一の確立で表彰台です。

レースは始まりました。
朝の6時15分スタートとか、

自転車乗りは気が狂ってると思われても
仕方ない時間帯に、いったいなんなんでしょうか、
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この台数は・・。

登って登って、
ひいひい言って、そこから長い下り。
スピードが乗ります。

当然、右コーナーもガンガンに攻めれます。

チーム「motz-fixed(仮)」は、
1人二周ノルマなのに、
下りで追いついても、
登りで簡単にプロトン(集団)に抜き返されます。

でも、こっちもロードのkinfolk、
ギアが掴めないままでも、
とにかく必死で走ります。


そのころ、ピットではこんな会話が。

チームによっては1周交代もあったようで、


彼氏「ただいまー」

彼女「じゃ、次私ね、サドル合わせて♪」

彼氏「はい、ヘルメット。」

とか、

自転車一台で交代でスニーカーで乗ったりと、
ゆる〜くバトンのチップを受け渡ししてる
のを見てたヨッシャンとソウ君。

「・・・モッツさん、絶対

『おらっ、バトン!全力は尽くした、後は任せたぜ!』

ってテンションで帰ってきますよね・・・」

「そん時は、ヨッシャンなだめといてくださいねw」

そしてやって来た、モッツ。


スネに巻きつけたバトンに手をかけ、「ソウ君!」

「早く!」

もちろん、

ソウ君は半笑いで受け取ります。

ヨッシャンから状況を伝えられ・・・
「えっ、そうなの?」

でも、色んな意味で順位落としたくないし、二人とも頑張って!
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ソウ君は第2プロトンから抜け出してバトン!

アンカー、ヨッシャンがエアアタックで走る!
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で、どうにか順位を守ってゴール。
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「確か、岩屋で待ち合わせ9時10分すよ。」

ヨッシャンの言う待ち合わせは、
この後、淡路島一周するという話。

そのアワイチに参加してくれる皆との待ち合わせだ。

ここから淡路は岩屋まで一時間強。
表彰式出てたら微妙やナ、って言いながら、
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・・・せっかくやしね(笑)。

で、この写真をヨッシャン、速攻インスタに。
「モッツさんおめでとうございます」
ってコメント付けやがったので、負けずにスグ「こらっ!」って
コメントしたら、

「余計なコメントは削除っすね・・・w」

って消しやがった(笑)。

おいー!


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まぁ、でも・・・

勝ちは勝ち(笑)。

景品の粉モノをもらい、
一路淡路へ。

今回のアワイチは豪華メンバー。

大阪からはTKCのテースケさん、アキラさん、
京都からオグさん、ミウケンさん、
で、我々。

このメンツならしょーもないギャグも対応可、
で、ピリッとしつつもガッツリ勉強させてもらえる
ハイペースでポヤンとしたなライドになりそう。

が、

この時はまだ気が付いていませんでした。

淡路島に向けて車を走らせる、
自分が相当調子付いている事に・・・。

長い一日 後篇


第二の手記


自転車乗りとして、
ほんとうに恥ずべき事だと思います。

もう、その車を避けられるはずもなく、
左前頭部からフロントガラスに
ただ突っ込むだけでした。

飛散したガラスは散弾銃の様に
自分の顔面を叩き、

気が付くと自分は救急車の担架に
ガチガチに縛り付けられていました。

後になって考えてみればその朝は、

レース結果に浮かれてみたり、
時間ばかり気にしてみたり、
かと思えばどこか疲れを残しているような、

どうにもいつもの自分と違うような気がしなくもなかったのでした。



ヨッシャンとソウ君と三人、
待ち合わせ時間ぎりぎりで淡路島に入り、
皆と合流しました。

久しぶりに会うオグさんに、
いやぁ、しばらくのウチにずいぶん良い太ももになりましたね、
というと、
オグさんは、はにかんだ様子でそれでも嬉しそうに笑いました。

自転車乗りを褒めるなら、
何よりも脚を褒めるべきなのだと、
その時気が付いたのです。

そして、レースについては
皆まだ
インスタの情報しかない状況だったので、
ガッツポースなどして、
道化してみせては皆を笑わせたりしたものでした。

さぁさぁ、では早速、行きましょうと、
おきまりの写真撮影も忘れて出発を急かした自分は
やはり何か焦っていたような、そんな気もするのです。

そんな風でしたので、
当然先頭を自分が走ります。

正直、このメンバーなら遠慮どころか、
遅くて不満が出るのではないかと、
せっせと走りました。

洲本市に近づく頃、
後ろにいたミウケンさんが
『モッツさん、牽きますね〜!』
と言ってくれて、安心したものです。

いやいや、
いつ(先頭を)変わってもらってもいいですよ、と返すと、

すっ、と自分の横を抜けて
前に付いてくれましたので、

風よけの効果で、少し楽が出来るかと
思いきや、ペースアップ。

むしろ着いていくのに必死で、
でも前を走ってもらってるので
申し訳ないという事で、
一所懸命にペダルを回しました。

やがて、
隊列も少しバラけてきたので小休止。
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話題は南あわじ市の峠道、水仙郷の事でした。
ストラバのセグメントも沢山ある難所が、
もうすぐだ、
といった話に皆興奮気味に話し、

自分達はまた走り出します。
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しばらく行くと、それほどでもない坂で
突然、後ろにいたオグさんとミウケンさん、テースケさんの三人が、
横をびゅう、と駆け抜けて行きます。

その光景はまるで、
海外のロードレースでも観てる様な、
格好の良いものでした。

いつか自分もあんな風に走れるかしら、
と思いながら、追いかけましたが、

曲がった先で三人が止まっているのが
見えました。

一方通行の信号待ちでした。

どうやら、
アキラさんの『先に行って』サインを、
『ここからアタッーク!』サインに見間違えた様で、
それを皆で笑っていると、

信号機の前にいたガードマン(女性)が
何やら話しかけてきて、

テースケさんが紳士的な対応で、
僕たちは大阪から来たのですよ、
等とやっていると、

オグさんが唐突に

『楽しいですか?』

と、彼女に質問を返したのです。

1日中、ここで旗を振ってる彼女に、
この質問はとてもセンシティブだと思いました。

押し黙る彼女に手を振って、
自分達はまた走り出します。

やがて、
見覚えのある一本木のコーナー、

あの水仙郷に近付いてきたのです。

皆、口々にきたきた、嫌だと、
キャイキャイはしゃぎながら、
坂に入って数秒で全員黙り、
黙々とペダルを回すのでした。

その光景に吹き出すことも出来ない程
坂はきつく、
それでも恐ろしいスピードで登る先頭に、
なんとか着いていこうとしましたところ、

ふとディレイラアの異音に気が付き
脚を止めました。

しばらくしてヨッシャンがやってきて、
見てくれたのですが、
『とりあえず行けるけど無理しない方がよい』
といい自分に付き合ってくれましたが、

どうか、先に行って皆に自分が遅れて来る事を伝えて下さい、

そういって独り、のんびり進んでました。

峠を登ればやはり下り坂。

地図を見れば、
獲物に飛び掛かる前の蛇の様にうねった
コーナーが続きます。

その最後のヘアピンだったでしょうか?

自分は車と衝突しました。





第三の手記

事故は、
どちらかが完璧であれば起こらない。

といいます。

もちろん、完璧になどなれませんが、
何事もなくすむ方法はあったと思うと、
チャリ乗り、失格。
いや、ブロガー、失格かもしれないと、

情ない気持ちで病院に
運ばれました。

入院していけという医者に無理を
言って、その足で警察署へ行きました。

事情聴取を終え、
署を出ると、前にある足湯に、
皆が集まってくれていて、
おお、大丈夫か、
ケガの程は、そうか、
大したことなくて何よりと、

口々に心配してくれて、
オグさんに至っては、
ネットに上げたりしないんで、記念撮影させて下さい、
なんて笑わせてくれたりしました。


その後、皆は岩屋へ、
自分はヨッシャンと二人、
壊れたKINFOLKを取りにいきました。

申し訳ない気持ちでいっぱいで、
本当にすまなかった、と切り出すと、

『モッツさんが無事で何よりですよ。ケガして、
もう一緒に遊びに行けなくなる方が嫌ですよ。』

この日の淡路島の夕焼けは、
やたらと自分の目に染み込んだのでした


事故の相手さんと挨拶をして、
しばらくすると
岩屋から車でソウ君が拾いに来てくれました。

もう日は暮れ、帰りの高速道路は暗く、
家で待つ家族の事を思い、
また申し訳ない気持ちになっていました。

携帯を見ていたソウ君が、
突然叫びました。

『あぁっ!オグさん、さっそくインスタに上げてるやん!』

自分達はそれを見て、
驚きながらもうふふ、

と笑いました。

そして、

強い眠気と焦燥感の中、
少しだけ明るさを取り戻した自分達は、
また車を走らせるのでした。




あとがき

反省してます。

KINFOLK 箕面ライド

箕面行きの電車はいかにも観光向けで、
軽く走りに行くだけの輪行が、
小旅行な気分にさせてくれる。

駅に着き、
改札を出てすぐ、
ぐあっと臨む山々。
トレイルランの集団や、
ロード乗り達。

ヨッシャン、中々いい選択やで。

少し肌寒いが風は少ない。
気持ち良いライドになるだろう。

自転車を組んで二人を待つ。
ギア比は2.62。ロード用のタイヤで、
舗装路仕様にしたKINFOLK。

程なく、ヨッシャンとソウ君が到着。
二人はCXのスリックタイヤ仕様で挑む。

コースは、ラファライドのデータを
ガーミンにインストールして来たものの、ガーミンでは矢印しか表示されないので、

まぁ、間違いながらのんびり行こうや、
と出発。


いきなり、急勾配の登りでスタート。
でもグループライドの出発は、
いつも自分達が特別な何かにでもなったような、妙な昂揚感に包まれる。

その勢いでグイグイ登る。
当然だけど登ればそれなりに
標高を獲得して、
街の景色が一望出来る場所なら、
自分の力で
その絶景を捉えた様な感覚になる。
それもヒルクライムの
魅力の一つだろう。

そして登れば当然、降り。

降りはよく、
登りのご褒美とか言われるが、
それなりの標高があればかなり怖い。
登りでジットリ滲んだ汗は冷え、
体温の低下とビビる気持ちで震えがくる。

自分はムダにブレーキを掛けてしまうが、
降りのヨッシャンは、速い。

登りは日頃のトレーニングの成果が
妙実に現れるが、
降りはまさに度胸とセンス、
と言えるだろう。

そんな感じで登り降りを繰り返し、
ふとヨッシャンが止まる。

「ちょっと道逸れたぽいですねー」

うん、じゃあコッチ?行ってみる?

と適当に山中に進む道へ行くと、
アスファルトが途切れ、
林道になってる。

二人はCXタイヤなのでそのまま進むし、まぁ、ロードタイヤとはいえ、
俺のもCXマシン、と続いて林道に入る。

気持ち良く走れる道は直ぐ途切れ、
途中から登山道に。
担いで上がって、
降りも担いで歩いたが、
ヨッシャンはちょいちょい
乗っては降りて、て感じで楽しそう。
俺もCXタイヤでくりゃ良かった。

そんな寄り道もあって然り。

本道に戻ってきて、
また走り出す。

箕面の、特にこのコースは
楽しい。

登ったと思えばすぐに降り、が続く。
山頂が見える度に振り返り、
そう君に「KOMやでKOM!」
と無邪気にスプリントを促す。

そうこうしてるウチに、
もう二時間も走りっぱなしだと気が付いて、
飯屋を探す。

そば屋の看板に期待して坂を登ると廃屋が…。
きっと昔はそば屋だったんだろうねぇ…

切なげになだらかな坂を降ると、
「卵かけご飯の店」の看板!

絶対ここやろ!
なだれ込む様に入り定食を頼む。

卵は食べ放題て事で
「卵1日1個はウソって説、あるよな」
「それ、イカガのトイレに書いてあったやつでしょ?w」
「よー憶えてるなw」
とやりながら、
やたら硬いカラを割り、
器に黄身が二つ、
ぶるんぶるんと滑り込む。

そいつを箸でカチャカチャ混ぜて、
ご飯にぶっ掛け、卵かけご飯用醤油を
少し垂らして、

ずるずるかきこむ。

あ、甘い!

卵、あまっ!

しっかりとしたコクと甘さが
フワリと口内に広がり、
飯粒と合間って流れ込む。

ご飯も食べ放題やったら、
絶対デブんなるな、これ。

山中でこんなグルメに遭遇して
テンションも上がる3人。

後、小一時間ほどか。
なだらかな下り、
延々走ると、左脇に登り道。

ヨッシャン、まさか、
ここ左?

ガーミンは登りを示してる様で、
ここでクライマックスか、と
少しワクワクしてくる。

登り、頂上かと思えばまた登り。

軽ギアでクルクル廻して登るのが
最近の流行りらしいけど、
勾配次第ではソコソコ重めのギアで踏んだ方が進む気がするし、
そもそもギアは途中で変えれない俺。

グイグイ上がる感じが楽しくて、
ここは先行。

途中、トレックのジャージの人を抜くが、下りに入り抜かされる。

速いが危なげないので、
着いて行く。

こーゆーのはマナー違反なのかな?
でも挨拶するにも速くて前に出れないしな。

足が回りきってきた、
多分速度50kmは出てるだろう。

ちょっとしんどい、
と思うタイミングでソウ君が前に出て、
引いてくれる。

T字路の分岐でトレックとは別れたが、
いい感じで走れて楽しかった。

そこからは最初の登りを降ってゴール。
ヨッシャンが、コーナーミラーで集合写真を撮ろう、と言うけど、
俺はめんどくさいし、
この降りも楽しい。

「まぁ思い出に残しましょうよ」
って、事でしゃーなしで撮る。

眼前には大阪の街が拡がっていた。


…まぁ、記念写真も悪くないな。


無事降りきって、ヨッシャンが
「コーヒーでも飲みたいっすね」

いいねー。

駅前のパン屋でホイップクリームがたっぷり詰まった、チョコレートがけの菓子パンを、
淹れたての浅煎りコーヒーでやる。

あー…、美味い。

渇き凍える身体に、暖かく沁み渡る。

少し雑談して、
思いの他疲れてる事に気が付く。

走行66km、
獲得標高2391m。

3時間くらいだけど、
結構頑張ったなー、と笑う。

こうゆうライド企画は久しぶりだ。

IKEAや舞州の練習も楽しいけど、
やっぱりグループライドには
自転車の魅力が詰まってる。



ヨッシャンが、

楽しかった、
ちゃんと皆無事に帰れたし。

と呟いて、本当にそうだな、
とあらためて思った。



日々の練習

仕事あがりでも、
日の沈む前の夕暮れでも、

家族が寝静まった夜、もしくは、
誰よりも早く家を出る朝。

ジャージに袖を通し、
クリートを嵌める。


真っ直ぐ向かうのは、

千本松大橋。

両端が二段螺旋状である事から、
通称「メガネ橋」と呼ばれている。

全力で駆け上がり、

当てブレーキもほぼ使わずに
駆け下りる。

通行車両に気をつけ、
路面状況を注視しながら、

度々「嫌な予感」にキモを冷やし、
それを振り払う様に、

タイミングよく青信号に飛び込む。


その先に、いつもの練習場所がある。

ホットドッグを並列に並べた様な、
8の字を描くコース。

海に面したこの場所は、
縦横無尽に風が舞い、

ド平坦の筈が、時にとてつもない坂でも
登ってるかのような、
強力な向かい風になったりする。

以前、テースケさんに教えてもらった練習法で、
その毎回の内容をログとメモに残す。


今日は、あの日の記録を超える。


練習に行く度に手を替え品を替え、
以前の自分を越えようと試みるが、

そう上手くはいかない。

時には強風が、雨が、
交通状況だってある。

ナイトーさんが言っていた。

「他の交通車両にイライラする程、
自分をコントロール出来なくなる状況はダメだ」

自分を乗りこなし、
自転車を乗りこなそうとする。


心拍は190を超えた。

ペダルは重く、

誰も見ていないこの場所で

独り、はあはあと。

もうこのセットで終わろうか。

自問して、

いや、あと1セットやろ、やらんと。


苦しいのは間違いない。

なのに何が楽しいのか。

まだ幼い子を持つ自分には、
楽しいロングライドもそうそう出来ない。

その代わりのつもりで、近場で走ってみても、

代わりじゃないと気が付く。

やはり自転車は楽しい。

日々の何某を忘却の果てへ。

無心にペダルを廻し、風を切り、

最後のコーヒーを楽しむ。


携帯でログを眺めつつ、
とんでもないナルシストだと自嘲する。


社会の序列でも、
電車に乗っても、
スーパーに買い物に行っても、

謙虚に生きる事を余儀なくされた大人だ。

自分を好きになれる瞬間が必要だ。


自分を愛せなければ人は愛せない、と、
何かで読んだような気もする。

そうかもしれないな、と

ライトを点ける。

今日も十分頑張ったと思えば、

早く帰ってチビ助を抱きしめたい、
そんな衝動に駆られて、

家路を急いだ。















ぶどう坂攻略

ふと時間が空いた、土曜の午後。

ざっと3時間。

どこへ行くか。
時間も惜しくトイレで悩むが、
タイヤが緊急用のシクロタイヤのまま、
ギア比は3.0だったと思い出す。

じゃあ平地練?
いや、むしろ、ヒルクライムとか?
近場に山があるなら行ってみるのも
面白い。

片道20km無いなら
1時間掛からないくらいやな、

ひとりごち、
ジャージのジッパーをグッと上げて
走りだす。

市街地の国道ともなれば、
度々信号に捕まるので、

その間に地図を確認しながら行けば、
迷う事なく『ぶどう坂』に着いた。

標高差290m
距離3.8km 、平均斜度7.4%  
最高斜度は12.3%と、

決して緩くはないが、
なんとかこのギア比でも乗って行けるかどうか、って感じだろう。

関西サイクリストの間ではソコソコ有名な峠らしく、
スタート地点には数台のロードバイクが
止まっている。

見えたかどうかくらいに
彼らに会釈して、

スタート。

せっかくなので、
自分ルールを設定した。

まず絶対登頂。
で、足着いたらスタートに戻る。
次に、身体を振らない、
車体を振らない。

まぁ、こんなもんか。

ノッけからけっこうキツイな、
と思ってたら、そのまま緩くもならず
段々キツくなる。

スピードはあっとゆうまに落ちるが、
否応ナシに視界に飛び込んでくる絶景。

おおっ、もう街があんなに低い所に。

コレばっかりは毎度ワクワクさせてくれる。

坂も半ばを過ぎると僅かな平坦路が現れるが、
そこは休まず踏んでタイムを稼ぐ。

とにかく登坂が遅い。
速度が乗らないと、
やはり面白くない。

そんな気分にビンタを喰らわす、
急勾配がそこから連続する。

ペダルを踏み込むだけで精一杯。

今足着いたらもう降るしかなさそう、
あ、着いたらどーせやり直しやわ。

それは勘弁願いたいと、
クリートが抜けない事を祈ってペダルを
引き上げる。

あー、チャリ振りたいっ、けど、

とガマンした結果、
ハンドルを引いたパワーが腰にきて、
痛くなってくる。

それよりも、
さっきから二の腕がビキビキいってる。

歩く方が速いんじゃないか?

スピード計に視線を落とすと、
4km/h。

えっ、遅っ!

と思った瞬間、

3.5km/hに落ちた。

もうこれなんか意味あるんか、
その問いに意識が応えるより早く、

ゴールの変電所らしき物が見え、
勾配は落ち着いてきた。

一応、その先まで上がったが、
ここがゴールぽい。

もうゴール?という思いとは裏腹に、
口からは小さく、ヤッタ、と声が
漏れた。

汗をぬぐい、

ふーっ、と息をつく。

タイムは遅いが、とにかく目標は
達成できた。

下りは思ったよりスピードが出る上、
コーナーも相当タイト。
これは頻繁に来たら上手くなりそうだが、

コーッとブレーキ音を立てながら、
なるほど、
やはりカンチブレーキは全然効かないんだな、と思い知る。


休憩も取らずさっさと帰路につく途中、
ムーブメントに寄ると、
タカハシ君が『チョット見せてもらってイイですか?』とチャチャッとドライブトレインをバラし、BBの様子を見てくれた。
指で軽くベアリングを撫で、
『問題ないです、イイですね。』
と。

クリスキングの耐久性と、
自分のやった仕事の経過を気にする彼の気質に感激しながら、店を後にする。

17時。

玄関の向こうから、息子のはしゃぐ声。

日の落ちきらない夕暮れの散歩に
息子を誘い出し、

酒屋へ向かう。

次は軽ギア設定で、
またぶどう坂へ行こう。
でも、そこまでの道がなぁ〜。
ブレーキも効かんしなぁ…

なんて考えながら、
浮庭橋の上で息子を遊ばせ、
立ち止まる息子にどうしたい?と訊ねる。

どうしたい?

一瞬、
その問いかけが自分に帰ってきた様で、少し狼狽した。


両手を上げて、ダッコしろ、と
いう息子を片手で抱き上げ、

ま、とりあえず、
ワイン買いに行こうか。

そう語りかけ、酒屋へと急いだ。






130kmライド 〜rapha鍋谷ライドに自走で参加しただけ〜




朝は、予定より30分早く目覚めた。



まるで遠足を心待ちにする少年の様だが、昨日の酒はしっかり残っていて、

少し気だるい。



が、折り込み済みで、

既にジャージのポケットに荷物も詰めてあり、

ヒゲ剃ったら羽織って旅立つだけだ。





130km走ると決めていた。





ストラバのチャレンジに乗っかて

とりあえず130kmを設定しただけで、

別段、走ったからとて何もない。

(希望者には完走記念ジャージを買う権利が与えられます)



おあつらえ向きに、

raphaのライドが河内長野で行われるので、

ライドのコースが50km、ウチから片道30km強、自走で参加すればちょっと足りないくらいだし、raphaのショップ辺りまでコーヒー飲みに行けば達成出来るだろうか。



荷物はiPhone、

最低限のパンク修理セットに、

補給食のパン。

後はカギとお金とカード。



これで十分だろう。



もう我慢出来ないといった様子で

休日の、朝日の中を走り出す。



まだ幹線道路の車は少なく、

歩道にも部活に向かう学生と、

早起きなおじいちゃんが時折居るぐらいだ。



タイヤの転がる音が気持ちいい。

ガーミンが右だ、南だと案内する。

消費カロリーを気にしつつ、

多めの補給を心掛け、

raphaライドの登坂に備える。



半ばを過ぎた頃、

自転車を乗せた車が横切る。



あの人達もライドに参加だったりするんだろうか。



ポケットからパンを一つ取り出し、

モシャモシャと頬張っては、

脚に負担をかけない様、走る。



信号待ちで、さっきの車に追いつき、

横を抜けようとするとマドが開き、



中からサングラスの男が二人、

携帯でパシャパシャ(笑)。



えっ、誰???



それがraphaのモトジさんとヒロくんだったと、後で知る。



集合場所にちょっと早く着いてしまった。

知らないサイクリスト達ばかりで、

軽く挨拶するも気まずく、



とりあえず

ロッテリアで独りハンバーガーを食って休憩。



腹パンで店を出れば、

KINFOLKの2人も到着していた。







『鍋谷峠』。



標高667m、某プロチームの練習コースになってる事でも有名で、

勾配は平均7.3%、

最大勾配は10%を超える。



加えて、『蔵王峠』。

こちらも標高561m。

平均勾配5.6%が、

ダラダラと続く峠道。



この二つがセットになってる。

グループライドとしてはハードな、

それでも、

景色を楽しむとすれば最高に気持ち良く、お洒落というか、



まさに『粋』と言う言葉の似合う、

raphaらしいライドだ。



先発グループを引率するヒロくんに、

KINFOLKチーム、参加者の方々が続く。ざっと20名?もっとか?



少し速めのいいペースで飄々と牽く

ヒロくんの後ろに着いて、

ギョっとした。



ヒロくん、

こんなサイボーグみたいな脚してたっけ…。



普段あんなカジュアルやのに、

脱いだら凄い系のギャップやな…、

と後方でソウ君とヒソヒソ話しながら、

峠に入る。



『この橋からKOMの計測ありますよー。』



とヒロ君がおどけた調子で言うので、

コレはイかなノリ悪いヤツやな、

と思って、スプリントスタート。



前半の緩めの傾斜に騙されない。

ここで一気に加速をつけて登りきる!



なんてレベルの坂でなく、

急勾配になってからが、延々と続く。



もうサドルに腰を降ろす場所もないなぁ、とダンシング続けてると、

後続が数台追い付いてきた。



ペダルを押し込む様に回すが進まず、

ハンドルを左右に降る手のひらは、

グローブの中で赤く擦り切れてるのが分かる。



しかし、まるで古道の様に怪しく輝く路肩の景色と空気に、

折れそうな心は何度も持ち直す。



気が付くと、

ソウ君が後ろに追い付いてきた。

あの距離を詰めるとは、

流石、永遠のライバル…

とか思うまもなく、



ジリジリ離されて、彼の登頂を

100m程先に確認して、

自分も登りきる。



頂上で他の参加者の人達を待ち、

思いの外遅れてる最後尾を確認する為に

モトジさんがスーッと躊躇無く

この坂を降りて行く。



なんて粋なんだ…。



てか、やっぱraphaの人達はレベルが違うなあ、と思い知る。



さて、下りはブラインドコーナーも多いので、マイペースで行きましょう、



と走り出すが、人のペースに着いて行こうとした瞬間、思い出した様に恐怖がよぎり、それが死神の手となり両肩を摑む。



あかん、曲がらん。



楽しいはずのワインディングが、

ただの恐ろしいジェットコースターになった。



麓まで下りると、ヨッシャンが、



『ガチガチで曲がれてない感じですね。もっとカッコつけて曲がったらイイんすよw』



なんて言うもんだから可笑しくなって、

急に肩の力が抜け、

なるほど、思う様に曲がり始めた。



二つ目の峠に差し掛かる頃には

本当に楽しくて仕方なく、

『この先は登り傾向で真っ直ぐなんで先に行きた人はどうぞ』

て案内と同じくして駆け上がり始める。



少し勾配が緩んだので

下ハンに持ち替え、



ペダルを回す。



息が弾む。



苦しいはずなのに、口もとが緩む。



俺はいつの間に、こんな、

ドMになってたんだろうと自嘲して、



グイグイ登る。



そして突然開ける絶景。

最高だ、と思う。



気が付くと独りになっていて、

山頂付近で先頭の集団を待ち合流するも、

後続グループとは合流出来ないまま、

下山する事になった。



先頭はraphaのスタッフの方が牽いてくれて安心。その後ろに10台弱のトレインを形成する。



路面がやたらと悪い下りでパンクする人も居たけど(後続含め数名パンクした)、

非日常を感じる山道に、

もう恐怖も疲れも忘れていた。



山を出て大きな一般道に入れば、

トレインは加速。

流石にしっかりスリップに入らないと

このギア比でトレインに着いてくのは結構キツイ。



あっとゆうまに50kmのコースを走り終わっていた。



駅で皆と合流し、

raphaライドは解散。



緻密に計算されたコースは信号も交通量も少なく、

何より古道を散策してるような景色に酔いしれる、本当に素晴らしいライドだった。



しっかり苦しいし。



その後、

KINFOLKの三人は王将で

ギョーザ&炒飯とゆう

質素で高カロリーな飯を食うが、

まだ後50km近く走るので問題無い。



車で来てたヨッシャンに

『乗って行きましょうよ』

と誘われるが、

こんなに沢山自転車乗れる日は中々無いので、自走で行くわ、と断わり、

ムーブメントでとりあえず落ち合う約束をする。



途中、幹線道路のアンダーパス。

車の流れが止まる。



まだまだ元気だ、限界まで回してみよう。



ケイデンス計をチラ見すると、

150、155、



160を超えて、さすがに維持が辛くなった頃、地上に上がる。



このままウチに着けば、120kmか、

少し足らんし、

ヨッシャンも

渋滞で少し遅くなるだろうと、

坂を見付けては登ってみたり、

道の駅に寄ってはすぐ出て来たりと、



余裕かましてるウチに右膝に異変。



なんか痛いなー、



と思ったらどんどん痛みが増して、

ペダルが踏めない程の激痛に。



膝のどこをマッサージしても

一向に収まらず、

まさかと思って太ももの裏をトップチューブにゴリゴリ擦り付けると、

マシになった。





ハムストリングだ。





サドルが高いのか、

アンクリンクしてたのか、いや、

アンダーパスで調子んのったアレか…(−_−;)。



大阪市に差し掛かった頃にはママチャリ並みに速度が落ち、

膝を庇ってムーブメントに到着。



遅くなってゴメン、膝やってもうたわ…。





その後、ウチの近所にBIOTOPてなんか洒落たコーヒー飲めるトコ出来たし、

そこでまた落ち合おか、



と、ノロノロ走り出す。



少し休んで回復したけど、

130kmまで後10km。

でももうウチに着くので、

ヨッシャンが来るまで近所をグルグル…



2km程で、アカン、もうお膝が限界…



ついにガーミンのストップボタンを押し、

ライド終了。



コーヒーを飲みながらヨッシャンに、

raphaライドがバラけたのは、

モッツさんが独りでガツガツ走るからですよ!グループライドなんやから

回り見ないと…。



と言われ、あ。と、反省。



すいませんでした。



後からストラバにアップロードした

ログを見たら、127km走った事になってる…



後3kmかよ!

チョットこのジャージ欲しかったのに!



…。まぁ、調子こいたバツやなぁ。



それにしても、

堪能できた。



独りで走っても、複数で走っても、

自転車は素晴らしい。



日焼けに滲みるシャワーの痛みが、

充実した1日を物語っていた。





走行距離127km
獲得標高1646m
消費カロリー3078kcal

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