春の朝
悪夢から目を覚ます。
内容はよく覚えていないけれど、
朦朧とした映像の断片に、不快な寝汗がそれを悪夢だと教えていた。
隣にある娘の寝顔にホッとしながら、
僕は仕度を急ぐ。
昨夜のうちに用意したジャージに寝ぼけながら着替え、
家を出ると肌寒い。
ジレを取りに戻って、再出発。
五分の遅刻だ。
日曜の早朝、幹線道路はガラ空きで、
待ち合わせ場所にナイトーさんが寒そうにして待っている。
シクロクロスシーズンが終わってから忙しさにかまけて練習らしい事を全然やってない。
慣らし程度にナイトーさんにトレーニングライドに付き合ってもらう事にしたというのに、遅刻して申し訳ない。
練習場所の周回道路に向かう間、
練習内容を確認。お互い牽制しながら、
「…どうします?」
「モッツさん、3セットとかやるんですか?やるなら後ろ着いて行きますけど…。」
「あ、いや、じゃあ10分走を一。」
「…三本?。」
「一本で。」
「一本で 笑。」
と頷きあって、練習開始。
今日は軽めのギアで回す。
カセットのチェーン位置を覗き込んで確認してから、じゃ、行きますよ、
と加速する。
KINFOLKは、僕の練習不足なムッチリボディも、とりあえず40kmぐらいまでは難なく加速させてくれる。
後はそれを維持出来るか、という話で、
ナイトーさんの影をぶっちぎるつもりで走るけれど、
結局二周目後半、前に出られてしまう。
悔し紛れに最後抜かし返すのが、
なんだか子供が意地になってるようで、恥ずかしくなって少し笑えた。
「まぁ、このまま練習はサクっと切り上げて、橋を渡って、渡船に乗って遠回りしましょう」
と、ナイトーさんの提案。
お互いそれなりの子煩悩っぷりで、
遅くとも9時までには帰って子供の相手をしたい所。
世間話をしながら渡船に向かい、
「モッツさん、車買うならどんなのかいます〜?」
「まぁ、僕はきっとショーもない車買いますよ、すぐ壊れそうな旧車とか笑。でも最新型の車もやっぱ楽チンですけど」なんて、やもすれば中学生みたいな話題が、同い年、似た境遇の彼とは心地が良い。
渡船に乗るとナイトーさんが、
「この渡船からなみはや大橋のコース、コッシーのデートコースだったんですよね…」と言うので、
なぜここでその話を///
と思いながら(笑)船はすぐに到着、
また走り出す。
肌寒い。
少し速度を上げて体温を上げる。
此花区辺りはいかにも住宅街という感じだけれど、幹線道路の信号は繋がり良く、案外気持ちよくスピードが乗った。
近所に着き、ナイトーさんとは、御子息に言い渡されたという8時帰宅を少し回ったものの十分早い帰宅だろうと、
早々に別れ、
僕は朝飯を食べに、
いつものLEADCOFFEEへ向かう。
身体が冷える。
でもraphaのインシュレーテッドジレは、
店内で羽織るには最高の暖かさで、
ゆっくりラテとトーストを頂いた。
このカフェはいかにもコーヒースタンドといった具合に、常連さんがひっきり無しにやって来てはコーヒーを飲んで、店員さんと軽く雑談して引き上げて行く。
その中にガチっぽいロードバイクのお兄さんも来ていて、どうやらシルベストの店員さんらしく、なるほどな、と。
そんなプロに僕のバイクを洒落ていると褒めてもらい、いい気分になって店を出ようとすると、
入れ違いで僕と同じマンションの家族が入ってきた。
その家族の長男(小1)が、なんとこのカフェでオリジナルキャラを中心とした個展をやっていて、
僕はその長男と少しジャレて、
親御さんと挨拶して、またサドルに跨る。
春の風は冷たく、
それでも、
朝日は光の粒子となって冷えた空気をキラキラと映し出しているように見えた。
いい朝だ。
起き抜けの悪夢が何だったのか、
もう思い出す事もない。
僕はただ、ナイトーさん同様に、
帰りを待っているであろう家族の元へ。
これから訪れる春の休日に胸をふくらませて、
ただ、ペダルを踏み込んだ。
- 2018.04.05 Thursday
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- by もっつ