2018関西CX#7 希望ヶ丘戦


レースの翌日は雨だった。


僕は小さな怪獣二匹、

五歳男児と二歳に満たない娘を連れ、

雨足が弱まった頃、

昨日のレースに現れなかったナイトーさんの店、FLAGへ向かう。


ナイトーさんは

希望ヶ丘戦は走れなかったけれど、

しっかりと皆んなのリザルトはチェックしてる様子で、

「モッツさん、最近乗れてるのに、順位悪かったねー。」と。


いやいや、言い訳ではないけれど。

希望ヶ丘はシングルトラックが無くなり、パワーと度胸、といった感じのコースになってて、

大きな登りが二本、それに対しての下りが二本。


登りでパワー負けして、

下りで度胸負けした感じですよ…。


事実、36番手スタートで、32位。

一旦すぐに20位まで順位を上げたけれど、

とにかく登りでだんだんパックに離されて、

3周目辺りでは2本目の登りが抜かれるポイントになってしまう。


そして抜きつ抜かれつ最終周。

砂利の危険な高速コーナー手前で、背後から一台、

せわしないプレッシャー。


でも高速コーナー手前まで逃げ切れば、

ラインは内側のバンク面しかあり得ない。

その手前まで抑え込む。


ここまで抑え込めば。と、

脚を止めた瞬間、

アウトから前へ出る、KUALIS。

チタンハンドメイドの有名フレーム。

まさか、さらに突っ込んでくるなんて。


ギリギリで僕の前へ出て、バンクのラインに乗せるKUALIS。

僕は動揺して、二つ目のコーナーのラインを外しそうになりモタつく。


大きく3秒も間を開けて、

逃げ切られてしまった。


言ってみりゃ、ブレーキング勝負に

負けた。完敗だ。


ソウ君はと言うと、

「年末年始乗れなくて、メチャクチャシンドかった…」と。自転車はサドルの上で過ごした時間=実力、といった話があるけど、乗らなかった時間はどう過ごしても差し引かれていくのも事実。


自分は、と言うと、

年末は十二分に乗った。

体調も回復し万全。

自転車も消耗品を全て交換して、

絶好調。


そして、32位。

出し切ったかと言うと、

出し切った。


誰にも誇れない順位で悔しいのに、

出し切った爽快感や、

緊張感の中で、

思うより操作出来た楽しさ。

それを合わせた充足感。


表面上はガッカリしてみせても、

内面は満足してる、という妙な感覚が

レースを走る本当のモチベーションなのかも知れない。


そしてヨッシャンは、

BMX日本代表のシモちゃんを

ライバルと呼び、

実際、シクロクロスでは良い勝負。

先行するヨッシャンに少し遅れてシモちゃんが追い縋る。

3周目、ヨッシャンがチェーンを落としてしまい、

その隙にシモちゃんは前へ出る。

あぁ、勝敗決したな、と思って観てたけれど、さらにそこからヨッシャンはシモちゃんを抜き返したらしい。


この日、KINFOLKチームで一番良いレースをしたのは間違いなくヨッシャンだろう。


そういえば、シモちゃんはヨッシャンと出会うずっと前から僕は知り合いで、

そう考えると、なんだか不思議な気分になるし、自転車の繋がりってのは本当に面白い。


そして、

KINFOLKはそういうブランドだと思う。僕は、

今年、それをカタチに出来ないかな、と

帰りのFIATパンダの狭い車内で2人に話すと、

「いいね、面白そう。」と、

ヨッシャンとソウ君も乗り気だ。

もし、全国にいるKINFOLKオーナーと走る機会を作れたら、

それはまたきっと特別な出会いを連れて来てくれる事は間違いない。



…まぁそんなワケで、

レースは全力だったんですけどね(笑)。とナイトーさんに説明して、

これ以上お邪魔するのも申し訳ないので、とりあえずFLAGを出ると、雨足は強くなる。


横の高架下で雨宿りしてると、

結局ナイトーさんが傘を持って来てくれてしまって、

なんだか申し訳ない気分になる。


やがて雨が上がり、

息子が「傘、返しに行く?」と言うけど、いや、また店に寄る理由になる。

だから、

また近いウチに父さんが返しに行くよ。


大人には、何かと理由が必要だ。

だとしたら、

今年は積極的に

自分達から理由を作りたいと思う。


そんな事を想像するだけで、

僕は子供の様に、

無性にワクワクしてしまうのだ。






Festive500 2017



DAY0

Festive500 に挑戦する事は難しくない。STRAVAでワンクリックすればそれでいいのだから。

だが完走するとなると話は簡単ではない。


そもそもこのFestive500は、

師走をホリデーシーズンと呼び、

その期間をダラダラと過ごせる余裕がある人達をライドへと喚起する為の物で、


心待ちにしていたRaphaのSALE、

開始と同時にサイトにアクセスした時には狙ってたアイテムのサイズが無く

「…ブルジョアジーらめが…‼!」と拳を握りしめている我々の様な連中には、

正直縁遠い物なのかも知れない。


だからこそのアタックだ。

見せてやるサ、

労働者階級の意地ってヤツをよ…


0/500km


DAY1

走り出して間も無く

ガーミンの液晶に水滴がポツリ。 

もしこれが雨だとしたら、 天気予報通りという事で何の問題もないのだけれど、 それでも、この水滴は何か別の、 例えば汗や水蒸気みたいなモノであればと祈ってしまうのがサイクリストだろう。

1日目のアタックは舞洲アリーナの周回路。休日の夕方に妻に作ってもらった数時間。

とりあえず、平坦路で距離を稼ぐ作戦だ。

到着する頃には予定通りの土砂降り。

とはいえ初日から雨…、


まぁ、…おあつらえ向きか。


そう独り言ちて本降りの中を走りだす。

Rapha オーバーシューズ が1時間程であれば全く浸水がなく、凍えそうな爪先を護ってくれた。


54/500km。


DAY2

年末を迎える最後の月曜。

今日乗らなければ挑戦は終わる。

仕事で疲れた身体に鞭打って、

通勤路にいつものIKEA周回路を加え距離を稼いだ。

まだ暖かく、クラシックウィンドジャケットが調子良い。


105/500km。


DAY3

ロードバイクに乗っていれば誰とでも分かり会えるなんて思っていない。

部下に割とレース志向のローディ(カーボンのコルナゴでアソスに身を包む様な)がいるのだけれど、特にそんな話もしないし、立場的に僕から絡むのもどうかという事で、一緒に走る事など無いと思っていた。

そんな折、帰宅前のロッカーで冬場は裏起毛のRaphaサーマルクラシックビブが快適だと説明しながら、

こんなイベントに挑戦してて、今日は河川敷から帰るつもりだと話すと、

なんと、彼も付き合ってくれるという。


夜の河川敷は、まさに一寸先は闇。

あっ、危ねーっ!そこ人!人影!

といった風に互いに声を掛けながら走る。

やっぱ夜の河川敷はダメだな(笑)とそこで別れ、僕は昔暮してた街を経由して帰路につく。

10年振りに通る街並みは、

あの頃と同じ様で、少しづつ時代に合わせて変わっていた。


彼は、今時の30代というか、あまり他人に深く踏み込むタイプではないと思っていたが、

僕と彼との関係もきっと、

そんな風に時を経て変わって行くのかも知れない。


159/500km。


DAY4

水曜は堺浜に、いわゆる実業団系の

本当に速い連中が集まってくる。


周回道に入れば間も無く、

背後からゴウッと10数台の高速プロトン(集団)が来る。


一旦追い越され、すぐに踏み込んで最後尾に着いたはいいけど今日は冬の向かい風がハンパない。

だからだろう、ローテーションが早く15秒くらいで交代してる様子で、気付くと次は僕にも先頭に立つ場面が。

勝手に混じらせて貰ってるので頑張りますよ!と心拍を一気に190まで持ち込んだが、


10秒も持たずに先頭交代…


ありゃ〜、まぁこんなもんか…

その後はズルズル失速し、プロトンは見えなくなった。

勝手に混じってるとはいえ、

スリリングで刺激的な体験。

こんな短時間高強度な練習にも、

Raphaコアロングスリーブジャージは裏起毛で暖かく、それでいて決して蒸れたり汗が冷える事のない、

価格からは考えられない快適性を提供してくれる。


232/500km


DAY5

12月28日、まさに師走、仕事の遅くなったこの日は、友人の経営するビストロ、リュドラガールまでライド。


ずいぶん遅くの到着になるので、

事前に到着時間を連絡したはいいけど、

それでも急がないと。


年末夜中の旧国道は車通りは少なく、自転車道が設置されてる区間もあり、案外快適だ。


何より「誰かに会いに行く」と思うと、

自然と足が回るもので、

目的はモチベーションに直結していると感じる。


店に着き、おどけて

あの〜、もうオーダーストップでしょうかぁ…?と入って行くと

「なにゆーてんねん!こんな遅くに来やがって!(笑)」と恭子姉さんの元気の良い声に迎えられ、

もーっ、と言わんばかりにソウ君と二人、え?そんなにモッツ甘やかしていいの?と掛け合いながら、豪勢なもてなしを受ける。分厚くフカフカのキッシュと、

ドイツパンの上にプルーンの甘煮を載せた最高の晩飯を炭酸水で頂く(デザート付き)。


文句無く美味い、いや、酒があればもっと美味かったはずだ。

時間が全然足りなくて、話したい事が沢山あったのに話せなかった事の数を数えながら復路に着く。次はきっと電車で500km走破の報告にでも行こう。


長く凍える国道沿いでも、

Raphaハードシェルジャケットが冷えから僕を護ってくれた。


307.4/500km


DAY6

明朝。日の出より早く家を出る。

今夜は妻が飲みに行くと言うので早めに帰らなければならない。

距離を少しでも稼ぐなら、朝しかない。


コースはいつものIKEA周回。平坦路でとにかく距離を稼ぎ出す。

仕事は佳境を迎え、走行距離も残すところ133kmと追い込んだ。

気の緩んだ僕は、

つい練習後水も飲まずにワインを口にして、一本空けて寝てしまう。

この時はまさか内臓が弱ってるなんて思いもしなかった。


それにしてもプロチームビブ2は素晴らしい完成度で、冬も短時間高強度の練習であれば、決して薄すぎるとは思わない。本当にオールシーズン活躍するビブだ。


369/500km


DAY7

完全に体調を崩す。

胃をやられたようで、朝食のゲップが止まらないだけでなく、

ふわふわと体に力が入らず、

昼食も摂れなかった。


弊社も最終営業日で、

さっさと仕事を終わらせて嵐山まで往復する予定が、

まさかの残業をくらう。


日も暮れ出すし、時間もない。


それでも、今日は100km、

行くしかない。


冬の夕暮れ、河川敷。

どうしようもなく冷たい向かい風が指の感覚を奪った。

途中、グローブを外しては何度も手揉みする。

体調が悪くて踏めないのか、

寒くて踏めないのか。

嵐山までは残り10kmというところで諦めてUターンする。


やがて日が沈み、

ヘッドライトの弱い光を頼りにビクビクしながら前へ、前へ。

ジャケットの中の汗が冷え始めるが、

Raphaブルベロングスリーブジャージは湿った汗を外へ積極的に追い出してくれているようで、体感温度は常に快適だった様に思う。


ようやくウチに着いた頃には、

体調が最悪で、

殆ど晩御飯も食べる事が出来ず、

僕は娘を湯たんぽみたいに抱きしめて、

泥のように寝床に倒れこんだ。


ずいぶんキツいライドだったのに、

瞼の裏に残る河川敷の夕陽が、

それでも美しかったと思えるくらいには、僕は自転車バカなのかも知れない。

479/500km


DAY8

明け方。気分が悪く、

日の出前に目を覚ます。

大晦日という事で流石に仕事は休みだけれど、午後には家族で実家へ帰省する予定だ。

…STRAVAやインスタに友人から応援のメッセージが着いてる。


体調は回復の様子は無い。

でも、残すところ21km。時間にして1時間かからないくらいだ。


起き上がれば吐きそうだけれど、ジャージに身を包めば何となく行けそうな気になるだろう。


ガーミンをセットし、


最後の扉を開ける。


数回ペダルを回して感じる違和感。

たった20kmの地獄みたいなライド。


遠い。

いつものインターバルのコースでも足が止まる。


身体が全く回復してない。

僕は自転車を甘くみていたと今頃悟る。


跨り、走り出し、瞬時に訪れる全能感。

達成した途端に包み込む幸福感に、

稚拙にもハシャぎ、

僕は忘れていたのだ。

その代償に、容赦なく削りとる、

自転車は、時間と、その生命力を。


あまりにも自制心が無さすぎたのか、計画性が無さすぎたのか。

食事も適当に抜いたり、

しっかり睡眠を摂らずに飲んだり、

僕はナメていたとしか言いようがない。


あと3キロ。

その距離がもし、

帰路に含まれていなければ、僕はゴールを諦めていたかもしれない。



無事メーターが予定距離に到達してすぐ僕はコンビニのカウンターでホットココアを頼んだ。

胃がヤられてる時はココアが一番だ。


ズビっと一口飲んで、ほうっ、

と息をつく。

胃がほんの少し落ち着いて、

窓から暗雲の空を見上げる。


…とりあえず、500km達成か。



祝杯もあげれる体調じゃないけど、

これがまぁ、今一番の祝杯だろうか。


やりきった、やり終えた、

という感覚は、きっと後からジワジワくるもんだ。


Raphaが今年も与えてくれた、挑戦するチャンスに応えられた事を感謝しながら、


ゴクリと飲み干したココアが、

弱った胃にやたらと染み込んだ。


504/500km


2017Festive500 達成


追記


誰と祝うわけでもないライドの成功を、500kmノートラブルで当たり前みたいに走り抜けた鉄の相棒、

KINFOLKに捧げ、このライドを終えたいと思う。










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