2017関西CX#3マキノ戦
スタートグリッドに立つ。
前から7列目くらいか、
前方に50台、後方に20台ほど。
それなりに練習はしてきたつもりだ。
レースも半年ぶり。
緊張と寒さで
身体を揺すってスタートを待つ様子を
ヨッシャンは
背中のウサギが跳ねてるみたい、
と言って笑った。
間も無くピストルが鳴り、
自転車の群れが一斉にアスファルトの坂を登り始める。
今シーズンのシクロクロスが、
僕の中で今、スタートを切った。
走り慣れたはずのこのマキノステージ。
晴れればタイヤのよく転がるコースなのに、
今年は気温3度。
みぞれ混じりの冷たい雨が降り、
硬い路面はプリンプリンの極上の黒埿となった。
ただし、コースは例年と大きくは変わらず、アスファルトの登りストレートからスタート、山の上キャンプ場のキャンバーエリアと、
スキー場の斜面を利用して登り下りするエリア。
とにかく、キャンバーに差し掛かる辺りから、予定通り殆んどを担いで回った。
ヌルヌルした斜面をゾロゾロと皆で登っていると、
前の人が脚を滑らし落ちてくる。
かわしたモノの、
彼のペダルが踝にヒットした。
それでも寒さのせいかアドレナリンのせいか、
痛みを気にせず、チャンスとばかりに前へでる。
これだけ人か多いと、
他の人の落車が大きく順位に関わってくるもんで、このチャンスの後に起こった別の落車は眼前で二台絡んでラインを塞ぐ。
道を阻まれ、降車して交わしすぐ走り出すが、前の車両と一気に差が開き、先頭グループはずっと先。
追い付けないかな、と弱気になる所を横から抜かれ、我に返ったようにまた走り出す。
少し速度の乗るコーナーで、
内側から入ってきたライダーがハンドルを当ててくるが、上手く跳ね返し、
闘争心でニヤケてくる。
コーナーを、練習通りに曲がり、
少し前へ出る事が出来た。
自転車を操作する感じが、
また何かウキウキさせるのだ。
これは、楽しい。
下りのロングストレートの先、
思わず外に膨らみ、インからシングルギアの若者に抜かれた。
チネリだったか、なかなかカッコいいので、心中に彼を「スタイラー」と名付け後を追う。
ムキになる理由は多い方がいい。
同じシングルギア、スタイラーには負けないぞ、なんて小さな目標を捕捉するのだ。
二周目、アスファルトに戻ると、白いジャージを着たやたら元気な若者がとんでもないスピードで僕を抜いていく。きっとローディで、登りが得意なんだろう。
とにかく30番台前後か。
とはいえ抜きつ抜かれつを繰り返す。
登りのクランクが続くあたりで二人が連なっていたので後ろに着くと、
後ろの人が前の人を抜けずにイライラして何か叫んでいる。
いやいや、それは違うだろ、
と僕は思うから、
すでに疲労困憊だったけれど、
その気持ちひとつで
外側から二人を追い抜けた。
雨は強くなる。
登り勾配でバカスカ抜かれてしまったが、
次の下りでその数台をまとめて抜き返す事が出来た。
走ってたパックの先頭に出ると、
しばらく前が見えなくて気持ち良い。
3周目、アスファルトに戻ると、
また白いジャージのローディが元気に僕を抜いていった。
どこかで彼を抜いてたらしい。この得手不得手がハッキリと分かる感じが、
異種格闘技っぽさがあって楽しいと思う。
最後のシケイン、目の前でバイクを引っ掛けた人が真横になって通せんぼしてるので、
むしろコレはラッキー、左端から交わし、そこから比較的早目に乗車する。
ブリンブリンに滑る泥を、
皆が押すなか、自分だけ乗っていく作戦に出たがこれが失策、減速してしまい、
結果また抜かれてしまう。
徐々に操作が荒くなり、
コーナーで悪癖が出る。
後輪を滑らせてしまうが
それをペダルで抑えつけて曲げていく。
前のバイクに泥を喰らわせられながら坂を駆け下り、また一台抜き返す。
楽しいのだけれど、実際は般若みたいな形相になってて伝わらないだろうな。
そこからも抜きつ抜かれつ、
もうすぐゴールだ、
新しいジャージでもっと良い所見せたかったな…
まぁこんなもんかという気持ちと、
良かった、やっと終わりだ、等、
多くの感情が入り混じるゴールライン。
終わってすぐ、
震える僕にジャケットを着せてくれたヨッシャン、横にいたナカオさんが、
「よかったよ」と言ってくれる。
その言葉の真意に関わらず、
嬉しい言葉だ。
震える身体で、僕とヨッシャンは、
隣接してる温泉へ飛び込んだ。
つま先の感覚がジワジワもどる。
ヨッシャンが露天行こう、と言うが、
僕は鼻先まで湯槽に浸かって身体が温まるのを待っていた。
31位。パッとしない順位だなぁ…
とはいえ、気持ちは明るい。
もっと落ち込むかと思っていたが、
そうでもない。
よかったよ。
ナカオさんが言ってくれた言葉に
今日の僕の全てがある気がした。
ウチに帰って子供達を風呂に入れてると、息子が僕の踝の傷を見て、
どうしたの?と聞いてくるので前の人のペダルが当たってね…と話すと、
「その人謝ってくれた?」と言うので
あー、レースだからいいんだよと、と返す。すると、
「…じゃあ…ママに言う?」と深刻な顔で言ってくるので、
僕は笑いながら
違うんだよ、と息子の頭をクシャクシャ洗った。
地獄の様な夢の世界。
必死で走り、
そこで負ったかすり傷はその夢の世界にいた証の様に少し誇らしいもんだ。
非現実は常に自分と共にある。
そうである限り、
この多幸感に、
シクロクロスに飽きる事はない。
今年もシクロクロス、
チームKINFOLK-CX-JP、
楽しんで行きたいと思います!
2017関西CXマキノ C3
モッツ 31/65位
- 2017.11.25 Saturday
- Cyclocross
- 12:33
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- by もっつ