チェーン洗浄

ヨッシャン、明日どうする?、


と前触れもなくメッセージを送ったのに、

「六甲コーヒーコースで。」

と、気持ち良い返事が返ってくる。


それを受け、

少し上がったテンションを利用して、

チェーンの洗浄でもしちゃうか、と。


個人差はあると思うけど、

僕の場合は150〜200km毎に洗浄。二回に1度はそのまま洗車という感じ。


今回はとりあえず、ドライブトレインだけ、綺麗にしておく。


使うのは、

パークツールCM5.2と、

ディグリーザー。水に洗剤、

グランジブラシと、

チェーンオイル。

あとはボロ布のウエス。


チラシを敷いて、

さて、やるか。

まずクリーナー本体の蓋を外し、

チェーンを挟み込んでから、

蓋を金属製のクリップで、

パチコン、パチコン、と留める。


本体は樹脂製だけど、

実際持つとシッカリとした作りで

剛性感もあり精度も高いと感じる。


ロード乗りでまだコレを使ってない人には、一刻も早い購入を勧めたいくらいだ。


ディグリーザーをラインまでなみなみと注ぎ、

後はペダルを反時計回りに40回転。

コレだけでも随分キレイになるんだけれど、

ディグリーザーを紙に吸わせて廃棄して、

次は中性洗剤入りの水をクリーナーに注入。40回転。

最後は、真水に入れ替え、

また40回転。


ウエスで拭き上げれば、チェーンはピカピカになる。


次は後輪を外し、

カセットの清掃。


と言っても、ウエスの端と端をピンと張り、

それをギア板とギア板の間に入れて、左右に擦り取る。

バラすよりも手軽だし、それなりにキレイになってくれるので、日常の清掃には

コレで十分だろう。


後はグランジブラシなる三方向から挟めるブラシにディグリーザーを吹き、チェーンリングをガシガシと汚れを擦って、

ウエスで磨く。


フレームに飛び散ったディグリーザーの汚れなどを拭き取って、

車輪をハメこむ。


チェーンを掛けたら、

お気に入りのチェーンオイルを注油し、


余分な油を拭いて出来上がり。


慣れれば30分くらいの作業だろうか。

ピカピカに輝くチェーンを見下ろしながら、グローブを外し、

僕はボトルに入れたアイスコーヒーを啜った。




翌朝、

予定通り走り出す。


変速がパチッ、パチッと気持ち良い。


登りで引き離したハズのヨッシャンに、下りで追い抜かれる。


彼もずいぶんカンが戻ってきたようで、

競う様にして僕らは六甲の山を下り、

麓のコーヒースタンドに入る。


無機質な内装の奥にある

有機的で物々しい焙煎機が、

ロースターでもあるタオカコーヒーの雰囲気を一層良くしてる様に思えた。


「モッツさん今日誕生日でしょ?」


そう言って、

ヨッシャンが奢ってくれたコーヒーを口にする。


これは美味い。


シングルオリジンのライトローストは、

ライドの後にピッタリな爽やかさで、

思わず二杯も飲んでしまった。


そうこうしてると、

今時見ない車高の低いファミリアが、

ボォンと音を立ててテラス席の前を曲がっていく。


奥に車を止め、

歩きながらやって来たのは、

山を走って来た帰りというコッシーだった。


自転車の話になると僕らは完全にオタクで、ついつい身体が冷えるまで話に花を咲かせてしまう。


「モッツさんのロード、持ってみて良いですか…あれ?ヘッドガタ出てますよ?」


えっ?!マジで?!そういえば全然締め直しもしてないわ…


日常整備は疎かにしちゃいけないな、

チェーン洗ってばっかじゃなくて。


いつまで経ってもビギナーぽさが抜けないもんだと自嘲して、

僕らはコーヒースタンドを後にした。






讃えあい、チギリあい。

待ち合わせ場所に向かう朝、

途中、

パンでも齧ってから向かおうと、

コンビニの前でクロワッサンを頬張ってると、


背後から、

ヒュッと、シルバーのTonic、

テースケさんが現れて開口一発、


「…何やってんの」


あっ、おはようございます…


「こんなトコでモグモグして(笑)」


…いや朝飯を…


と、

なんだか気恥ずかしい感じで朝の挨拶を終え、

今日のライドは始まった。




例のごとく、


僕は週末ぎりぎりに声をかけてしまう。


あくまで、まぁお暇であれば、

と言うスタンスなのだけれど、


岡さんが速そうな人達に声を掛けてくれて、テースケさんがコースを案内してくれて、今回もなんだか申し訳ないくらい最高のライドになってしまった。


ナイトーさんにグループチャットで「またテースケさんに案内してもらうつもりでしょ?」と笑われて、全く返す言葉もない。


そのナイトーさんが今回参加出来なくて、テースケさんも少し残念そうにしながらも、道中に岡さんヤギさん、そしてRideinthewoodsのオカモト君と合流し箕面の山を目指す。


山の麓でアヤちゃんと合流して、

今日は、6名でのライド。


人数が多いだけでもソワソワわくわくするのは何でだろうか。

コレも自転車の醍醐味。


と、

車の入れない山道に入って行く。


談笑しながら登るけど、

数日前の嵐で路面に折れた枝葉が散乱し、下りも路面状況は変わらず、オカモト君がサイドカットのパンク。


サイドカットは修理用のパッチが無い場合、テレカや御札をチューブとタイヤの間に挟む、と言う応急処置を聞くけど、


そのタイミングで補給の羊羹を食べていたヤギさんが、コレは?

と羊羹の包装ビニールを差し出す。


確かに丁度良さそう…。


ヤギさんの機転でパンク修理完了。

何となく、自転車屋さんが同行してるって安心感あるなー、と、

オカモト君の修理を手伝うヤギさんの佇まいを見て思う。


そのヤギさんのダッシュ力を、

テースケさんが「マグナム」と評した事を発端に、しばし下ネタで一同ゲラゲラ笑いながら開けた県道を走り出す。

男性的にはマグナムと言えばカッコいい方を彷彿せざるを得ないワケで。


笑い声も一息ついて、


しばし静寂の後、

ズッ、

と岡さんが前に出てふっとその尻がサドルから浮く。


ちぎり合いの合図だ。


ハンドルを握り返した時にはもう遅い。


テースケさんと岡さんがドンっと

加速する様は、

まさにリッターバイクのそれだ。


が、なぜか岡さんが伸びない。

愛車のTonicCXをバラしてる為、

無銘のカーボンCX(タイヤもブロック)で参加してるせいか、

脚力をフレームが吸収してる様に見えた。

(ちなみにいつものTonicもCXだけど僕は普通にブッち切られる。)


そんなちぎり合いの中、

一行は全員が初めて通る、という山間の登り坂へ入って行く。


狭い幅員、苔むすアスファルト。

樹々の葉の隙間を降りてくる陽光。


気がつくと先行していた。


タイヤの転がる音と、自分の息遣いしか

聞こえてこない。


空が近づいて、気持ちよくてニヤニヤしてくる。


でも、

思ったより坂は長く、

だんだん辛くなってきたが、

何となく脚を緩めるのは

申し訳ない気がした。


何に対して、と言うと、

なんだろう、山に、坂に、だろうか。


とにかく不思議な感覚だ。

頂上で皆と合流すると、

速かったよ、と褒められ有頂天。


良い気分で下りに入ると、

またこちら側の斜面の景色も美しく、

林がパッと開けた瞬間、

山腹の田園風景。

青い稲が跳ね返す陽光に、


皆口々に、わぁ!、気持ちいー!と感嘆の声を上げてしまう。


そう、綺麗なんじゃなく、気持ち良い。


景色を、見る、のでなく、全身で感じる事が出来るのは、

コレもまた自転車の醍醐味か。


復路に入り、

ここと言う登りで、

ヤギさんが仕掛けてきた。


弾丸の様に飛び出すアタックに、

テースケさんと共に反応し、

後を追う。


テースケさんが少し緩めた、

気がした。


今が踏み時だと判断し、

一気に行く。


いやらしい闘争心が、

心中でイヒヒと笑い、

その声が聞こえぬ様、ヤギさんを抜く。


だからこそ、

ここで油断して抜き返されるのはいかにもカッコ悪い。


僕は犬が餌を待つように、

ハッハハッハと息を切らしながら、

頂きに向かい必死でペダルを踏んだ。


よし、大丈夫だろう、と左後ろを振り返えった瞬間、


シルバーのフレームが、右脇を抜ける。

そのテースケさんの横顔は、少し笑ってる様にも見えた。


しまった。


と思うまでもなく、下りは速すぎる。


オカモト君が後を追い、二人は瞬く間に見えなくなる。

オカモト君はC3でしのぎを削りあったとは思えない速さだ。


直後、

アヤちゃんにも抜かれる。


下りはセンス。


体力差が出にくい下りで、

あっと言うまにCL1のアヤちゃんに千切られる。


女性らしい雰囲気で、

ロングヘアの美しい彼女が、

グレーチングをホイっとバニーホップしてスッと走り去って行く。


なるほど、男女共に人気ありそうなタイプだ…。



もたもた下っていると、

岡さんから「外足の加重が出来てないかも」と指摘を受け、

えっ、意識してたんだけど、

と心中言い訳しながら岡さんのお手本を見せられて、


あ。


と、なる。


出来てるツモリと出来てるのでは雲泥の差で、恥ずかしいやら嬉しいやら。


「後は目線ですね。参考になればいいですが。」


むしろ勉強にしかならないのに、

こう言うスマートさに本当に憧れてしまう。


そんなこんなで午前中に

サクっとライドを終え、

解散。


午後から僕は

横浜在住の姉夫婦の来阪に備えて

段取りしてたのだけど、

晩飯はせっかくなので

お好み焼きの出前をとった。


そして、

合わせるワインは「OKO-WINE」。

お好み焼き用に開発されただけあって、

酸味を抑えつつソースの風味を引き出す。


しいて言うなら、


縁日で、偶然好きな子の浴衣姿を見てしまったかの様な、キュンとした切なさ。

そして、心に残る重さ。


これは美味い(笑)。


最高のライドの後の、

充実した時間。


きっと共に走った6人が6人、

最初に唇に触れたアルコールは、

同じ様に最高だったんじゃないか。


それは酔いの回る頭の中で、

勝手に確信へと変わるのだ。





山岳の週末

会社のロッカーを出ると、

外はまだ明るい。

仕事も想定外に早く終わったとはいえ、

日の長さに夏がジワリと近づいてると感じる。


明日は休み。

家人も帰りが遅いというし、


少し遠回りして帰る事にした。


サイクリングロードを独り走るだけで、

仕事のモヤモヤから遠ざかる気がして、


峠道に入ると、そんな気なかったのに、

時折見下ろせる夕暮れの街が綺麗で、

気が付くと喉がヒューヒュー言うほど踏み込んでしまった。


帰宅してログを確認すると、

峠で自己新記録。シャワー浴びて、

スグにワインを買いに出る。


喉ごしの良い白ワインが飲みたくて、

Jacob's creekのソービニョンブラン

を選んだ。


繊細な味わいは、惣菜に、

例えば高野豆腐や椎茸の煮物等、

出汁の風味をぐっと引き立てる反面、

濃い味付けの物とやると

すぐ味がボケてしまうのだけど、


とはいえ、

和風出汁に柑橘の爽やかな香りはいかにも気持ち良く、

初夏の夕暮れを想起させた。



その翌朝、

五時起きで神戸を目指し、

またペダルを回す。


久しぶりにヨッシャンと六甲を走ろう、

と言う事になったのだけれど、


ヨッシャンは数ヶ月まともに自転車に乗れてなくて、コンポを総入れ替えしたロードバイクも、

ようやくシェイクダウン出来る、といった感じ。


SRAMの無線電動シフターに、

ROTORの楕円チェーンリングと、

ずいぶん物々しい仕様になったヨッシャンのKINFOLK。


オーソドックスな彼のスチールフレームに最新コンポは見慣れないカッコ良さがある。


早々に峠に入り、

楕円チェーンリングを気持ち良さそうに踏んで、


ない。


さすがにシンドそうで、

やはり自転車ってのは乗ってないとすぐキツくなってしまう。ハイエンドバイクでもエントリーグレードでも、それは変わらないんだろう。


とはいえ、


共に走る。

最近そこそこ乗ってる自分は勝手に先行してはまた戻って、彼と並走。


世間話しをしながら、

はあはあ言ってペダルを踏む。


山頂の展望台に着き、

ヨッシャンが「モッツさん下りもまあまあ慣れてきましたね」と言ってくれて、下りは苦手意識があったので嬉しかった。


「今日はスッキリ遠くまで見えるなー!」と、パノラマを満喫。

峠から見える景色は、毎回、

同じ様で違う。


もちろん実際に違うのだろうけど、


そこまで到達する過程と、

誰と登るかで、見え方は変わる。


どうする?コーヒーでも飲んで帰る?


そこからコーヒースタンドまでの距離は20km。

結構あるな、と少し考えてしまったが、

とりあえず再び走り出す。


もう脚もずいぶん疲れてきたな、

と思うと、

「あと何キロっすか…?」

ヨッシャンも絶え絶えに聞いてくる。


何言ってんの、まだ2キロくらいしか走ってないよ、と笑うとヨッシャン、


「よし、やーめた。」


と笑って、次の分岐点で爽やかに帰って行った。


彼らしい割り切りの良さに苦笑して、

またな、と別れる。


誰かと走るってのは、

やっぱり楽しいモンだ。

そこにはログには残らない楽しさと、

充実がある。



誰かと走る、誰と走るのか。



それはとても重要で、

たぶん、


自己新記録なんかよりも、

大切な事なので、


今夜もまた、

何か美味いワインを

探してしまうのだろう。






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