自転車ファッションを考える33

そして私は、
棚の上にコトりとヘルメットを置いた。

官能的なライドから自宅へ戻り、
サングラスを流水に晒して、
上質なベルベットの肌触りを持つクロスでそれを拭き取りながら、
壁の時計を見上げた。

午前11時15分。

「エレブンフィフティーン、エイエム。」

なんとなく口にして、自嘲する。

ニキータとのランチの約束まで、
まだ1時間以上あるが、
大人は余裕を持って行動するものだ。

おもむろにジャージのジッパーを
開け放てば、
ウィンターエンブロケーション
の香りが汗の匂いを滲ませ、
脱衣所にフワリと広がる。

蛇口をひねると、
熱いシャワーがジャっと湯気を立てて
吹き出した。

だが、私は躊躇した。
エンブロケーションに熱湯は厳禁(注1)。
燃える様な痛みを伴う。

それを知ってなお、
エンブロケーションの塗り込まれた足先を熱湯に晒した。

「痛ぅっ…」

小さく呻きながら身体を流し、
シャワーを止め、

熱い湯のはった湯槽に、
ゆっくりと腰を下ろす。

「はあぁっ、痛ぅっ…」

眉間にシワをよせ、
今度ははっきり声にした。

だが、熱いのか、痛いのか、
それすら分からないまま、

この痛みも、
冬のライドの嗜みだと眉間のシワをそのままに、私は耐え、誰ともなく、
笑ってみせたのだった。




『ラもッつさん!こっちよ!』


お待たせ、ニキータ。
待ち合わせ場所に着き早々に移動する。

彼女が、パスタが美味い、
と言うその店は、

リノベーションしたビンテージマンションの一室、
クラシカルな装飾と白塗りにされたコンクリートの壁、
テラスの突き抜ける青空とのコントラストに、
私はシチリアの風を感じていた。

『今朝もまた自転車?』

重そうな付けまつ毛を瞬きながら、
紅くぽてりとした唇をのったり動かし、
少し呆れ調子で聞いてくる。

僅かな不満を感じさせない気遣いを
その笑顔に含ませてはいるが、

私は当たり前の様に、そうだよ、
と返す。

「ご注文は?」

ボートネックのカットソー、
腰下にソムリエエプロンをした、
若いウェイトレスが聞いてくる。

『ここは魚介系がね…』
とアドバイスするニキータを、
唇に人差し指を当てて遮り、私は、

『じゃあ…この、「大盛り岩塩パスタ〜オリーブオイルを添えて〜」(注2)をもらえるかな。』

そう注文し、
ウェイトレスのピタリとしたグレーのカットソーがそのボディラインを際立たせる事に目をやり、
やはり、
最も体の陰影が付きやすく、
隆起した筋肉を美しく見せるならグレーのインナーだと確信した。

RAPHAのメリノウールも、モンベルのジオラインもグレーがやはり、良い(注3)。

そういえば、今日も外気を遮断するアウター(注4)の内側で、汗を素早く発散させようと私のインナーウェアは良い仕事をしてくれた。
そうで無くては、汗が外気で急激に冷やされ、たまったものではない。


私の目線に気付くニキータが、
『今考えてる事、当てましょうか?』

ん?

『あの若い娘の事でしょ?ほんと女好きね』

いや、自転車の事だ。

しいて言うなら冬のウェアについて。
自転車乗りは、常に自然の脅威にさらされながら、
時に逆らい、時に手を取り合う様に駆け抜けるのだ。

その為に高機能なウェアは必須だが、
果たして機能だけを追い求める事は正解なのだろうか。


私はまた思い出す。

暗く低い雲の下、冷気を切り裂き走り出した午前五時。
山脈に差し掛かると、霧の様にまとわりつく雨は
大粒の雨に変わってサングラスのレンズを撫でては視界の端へ弾けた。

脚を止めればたちまち体温が下がる冷気。
激しく、熱い息が口元に雲霧を発生させ、はぁっ、はぁっ、と坂を登る。

やがて頂きが顔を出し、
ギアを一つ、上げてみる。
山岳賞でもとるのかい?

自問して踏み込んだ先の山頂、
雨はやみ、
厚い雲の隙間から御光の様に朝日が降りてくる。

『おぉ…グローリー…』(注5)

独りごちて、

ウットリとした顔で私は、

ウェイトレスからパスタを受けとった。

その様子を見ていたニキータ、

激おこ。


ちがう。

自転車の事だ。

彼女は、伝票を持って立ち上がり去って行く(注6)。

テーブルに残された私は、
少しばかり岩塩が効きすぎたパスタを
口へ運ぶのだった。





(注1)ウィンターエンブロケーションは、濡らす前に塗布した箇所をシッカリ泡立てた石鹸で擦り取る様にしてからぬるま湯で流して、それから入浴する事をお勧めします。

(注2)自転車乗りは炭水化物とミネラル。すっかりアスリート気取りが気持ち良い。

(注3)ジオラインやプロチームの化繊インナーは比較的高強度短時間トレーニング向け、メリノウールは降りで身体が冷えやすいロングライドに適してるとの事。

(注4)raphaのハードシェルは相変わらず最強の防水性能ですがロングライドでは逆に暑く感じてるので新作のプロチームジャケットがとても気になってます。

(注5)御光って意味。

(注6)フられ際にご馳走になるのは男性的には最大の屈辱です。







SKRKINFOLK さぬきCXツアー2015

月曜の朝、
会社の車のハンドルを握る。
灰色の空の下、また同じ生活が
始まろうとしていた。
ルームミラーを調節しようとして
映り込んだ、光の無い自分の瞳。

ほんの2日前はそこに、
眠る息子とチャイルドシートに凭れる妻の姿が映って、その寝息の二重唱をBGMに、1年ぶりの高松自動車道を走っていたのに。

考えてみれば、
もうさぬきCXは四回目、『SKRKと行く、さぬきシクロクロスKINFOLKツアー』も3年目になるのか、と少しばかり感慨の念に浸る。

今年も素晴らしいツアーだった。

土曜日早朝に香川入り。
もう行きたい店は殆ど決まっていて、
まず『がもううどん』に到着。

並んでいると、SKRKのハイエースが駐車場に入ってきて、そこから既にジャージ姿のミウケン氏(以下敬称略)登場。

息子怯える(笑)。

がもうのうどんは、艶やかで、
軽い歯応えが後を引く。
箸で麺をプチプチと軽く切れるのに、
しっかりと腰があって、
2玉くらいツルっと食べてしまうのだ。

次に向かった山越うどんは対照的で、
フワッとしながらもボリューム感があり、食べ応えがある。

と、ここで嫁の腹パン宣言。
ええっ?!早過ぎるやろ!

会場のコースが設置完了するまでは自由に香川を観光する。

香川の鳥山作品に出てきそうな可愛らしいタケノコみたいな山を眺めながら、
田舎道を走るのも解放感あって良いが、
ちょっとコーヒー飲もうと市街地へ入れば、都会的でオシャレなお店が並ぶ。

一休みして、会場に試走に行くと、
皆集まっている。

今回は、群馬からtkey率いるCC.jp、大阪はMOVEMENT一団。
総勢20名弱の団体を、
オグさんがオーガナイズしてくれた。

コースを一周してみると、
やはり楽しい。
ので、もう一周してると、
『みんな待ってんねんで!』と嫁に怒られ、途中で切り上げる。

スンマセン、と次の行き先を聞くと、
やはり『一鶴』。
骨付き鶏の本場、本店。が、
大人数向けの店舗もある様で、
そちらに向うと、なんとでっかい御座敷。

そこで改めて自己紹介などしつつ、
tkey君達と久々の再会を祝う。

しかし、まだ皆カタい感じだ。

山腹にある温泉に着くと、
温泉初体験の息子が意気揚々と脱衣所に飛び込み、裸の男達を見てビックリして、一瞬で踵を返してトテトテ逃げ出したのには笑ってしまった。

入泉すると、皆揃っていて、
お湯の中で話をすると、なんだか
気持ちの距離が縮まる気がする。

鼻先まで顔を湯船に沈め、
スーっと息子に寄ってくるミウケン。
さしずめ、侍というより忍者か。

怯える息子(笑)。

しかし、風呂を上がった頃には息子もスッカリ懐き出し、マリオ君に向けられた携帯カメラにポーズ決めたりとご機嫌だ。

キャンプ場に着き、ログハウスに
入れば、
湯上りで体も心もホクホクとして、
宴の準備は万端だった。

『一本、持って来てますから!』

とミウケンが言っていたブラックニッカのボトルは既に半分以上無くなっていて、

これだけの自転車好きが集まれば、
当然自転車の話を…

まったくしなかった。

ただ巧妙なオグさんの語り口に皆が聞き入り、ミウケンの荒ぶる笑いに盛り上がる。

知性に裏付けられた端整な顔立ちのオグさん、野性味に溢れ、顔をクシャクシャにして笑うミウケン。
相反していて、
でも複雑なパズルのピースがパチリとハマる様に息の合う2人を、
俺はいつのまにか大好きになっていた。
息子もミウケンが大好きになった様だ。

こうして楽しい夜は更けて行き、

翌朝。

午前4時に会社に起こされてPCで遠隔業務してたヨッシャンが、コーヒーを淹れてくれて、

降り出した雨の中、キャンプ場を後にして、会場へ向う。

コースは濡れてしまったが、
雨は止んでくれた様だ。
そしてミウケンがハイエースの荷台で寝ていた。

やはり二日酔いか…(笑)。

軽く試走して、やはり芝やダートはスリッピーになってるな、と確認するも、
特に対策もない。

正直、得意なタイプのコースだし、
今日のC3はなんと20人。
もしかして表彰台、上手くいけば昇格もあるかもしれない…

そんな淡い期待を載せ、
2列目スタート。

ヨッシャンは先頭真ん中。

係員がミウケンの名を呼ぶ度、
俺はヨッシャンと苦笑いしていた。

ジュニアも混走で、
スタート。
勢いある若者に狙ってたラインを奪われ、その上、前でヨッシャンがフロントタイヤを滑らせてコケそうになる!

スローパンクっ?!
思う間もなく、コーナーのアウトに弾かれてしまった。

またスタートをミスった。
でも焦らず、転けずに持ち直したヨッシャンと楽しそうにアスファルトの坂を登る。


そしてあの、長い階段。

今回は乗って行くが、周りを見ると担いで走った方が速そうで、小さく舌打ちして、すぐランに切り替える。

我ながらこの辺の判断が甘い。
とはいえ、数台抜いて、

ここからは下り。
ダートの九十九折、
大好きなセクション。

前にあと6、7台程か?

折り返しの登りで一台パス、
芝の後半で更に一台抜いたトコで、
当日入りした662ボス、田口さんから
『モッツ、今のいいよー!』
とお褒め頂き調子に乗る。

が、SS殺しのアスファルト、300mストレートがくる。

でも大丈夫だ、ケイデンス120回転を保てば30km/hは稼げる。が、
なんや、脚が回らん!
向い風か!

そんな事にすら気がつかなかった。

でもそれなら条件は同じかそれ以上だ。
案の上、一台落ちてきたので抜く。

その直後。

『右からいきまーす!』

若い声。高校生のジャージ。
堺でガッツ見せてた彼の子か!

この猛風の中、重いギアで抜いて行く。
これは利用させてもらうか、と
後ろに着こうにも、速度差があり過ぎて着けず、離されていく。

一周して、5位。

中々順位が入れ替わらない。
必死で追うと、662の熱い声援…?

『モッツ〜、あかんわ〜、前の奴らピチピチ(の若者)やわ〜w』

どんな応援やねん!w
まぁ、確かに高校生や大学生相手に分が悪いか。

いやいや、40前のオッさん、ナメんなよ!

折り返しで、少しずつ前の2人が見えてきたか?でも、

もう最終ラップに入る。
少し距離が足りない気がした。

5位とかないし、表彰台に、
やっぱり乗りたい。

階段を登り始め前を見ると、
4位のライダーが階段を登り終えようとしていた。

間に合うか?

九十九折に入る。

結構離れてる、無理か? 、
でも、
レースだから何が起こるか分からないし、
諦めちゃだめだ…、くっ…、神サマ…



違う。


祈るな。


自分で行くんだ。

そうじゃなければ勝てるモノも勝てない。
ダート最後の下りストレート、
加速、ノーブレーキで行ってみるか!
心拍が上がる。
軽く下唇を噛んで、外脚のペダルを踏み込む。

曲がれた、

その先に、4位を捉えた!
突然、彼が『うおぉえぇぇぇ』と嗚咽。

えっ、

大丈夫か、と抜き様声をかけようとした瞬間、また『うっ、おぉぇえぇ』と嗚咽したのでビックリして素通りした。
か、神の仕業か…


後、一台。チラチラ折り返しに影が見える。イケるか?もう考えるな!

3位と30秒近くあった差は13秒程まで詰まっていた。

が、無常にもレースは終わる。


まだ走れたのに。

田口さんに、
『今日はモッツ勝てる条件揃ってたのに。なんで合わせてこーへんの。まぁ、レースメイクも良くなかったけど。』
と怒られ、少しでも期待して貰えてたと思うと申し訳ないし、
田口さんはホンマに優しい人やな、
と思う。

一生懸命、パーパー!と叫んでくれてた息子が寄ってきた。

ゴメンな、と、ぽんと頭に手を置くと、
何の事か分からんといった感じ脚にグルグルまとわりついてくる。

気持ちを切り替え、
会場のケータリングのウドンを息子と食う。
やはり美味い。

さぬきシクロクロスは、
洒落たイタリアンやマフィン、
コーヒーなどない。

そう、
うどんと、骨付き鶏肉。
この和風感と、グルメも納得の味。
ぜひとも国内は勿論、
海外の選手に体験して頂きたい。

さて、一通り観戦を楽しみ、
最後はやはりC2で盛り上がる。

スタート地点に行くと、
C1のオッチーさん。今日は最初4位で駆け抜けてきて大興奮で応援も盛り上がった。でも惜しくもメカトラでリタイア。それをサラッと語る感じもカッコいい。

見所は、やはり662のメンツ、コッシーとオグさんのSS対決。先日昇格したCRCのフトシ君。昨夜ミウケンさんに絡まれまくった(笑)movementの高橋君。そして、群馬から遠征のCC.jp。

この中の誰かが表彰台に立てば大興奮だし、そうで無くても、レース中のレースに興奮する。

霙混じりになった過酷なレース。
高橋君と662オクちゃんのデッドヒート。高橋君は惜しくも表彰台を取り逃がして4位。オクちゃんも6位と一発残留を決める熱い走りだった。

SS対決は中盤まで後方に位置していたオグさんが、コッシーをオーバーテイクし、雪辱を果たす。

CC.jpのtkey君はさすがの安定感ある走り。が、前半でパンク。
ピットでタイヤを入れ替えるが、
集団に届かない。でも、
最後まで諦めない走りに胸を打たれる。

それにしても、彼はなんというか、
雰囲気が良い。心地よい存在感がある。

帰りの車で『tkey君て、彼、なんか良いね』てな事を嫁が言ってたが、
確かにその通りだと思う。

職種も年齢もバラバラの人達が、
ただ自転車という共通点だけで繋がるのは無理がある。

それでも、今回のさぬきツアー始め、
CXを通じて共有出来たグルーブの様な感じ。

言葉にできない不文律の中で自分達は集まってる様な錯覚を覚えながら、

また、

ハンドルを握る。


そして、
ルームミラーが後方を映すその前に、
射し込む朝日に目を細め、
夢の様な週末を思いながら、

今日のアクセルを踏んだ。






(写真提供 マリオ君、movementの皆さん、ありがとうございます!)






関西CX2015最終戦 桂川戦

自転車を三台、ラックに括り付けた早朝。
コンビニで朝飯でも買おう、と寄った天王寺アポロビル下のコンビニ。

ホスト風の男前の店員がレジを打ち、
俺がカードを出すと、

『はいー、クレジっつカード、ピー(裏声)』
えっ?
我が耳を疑った。

今、この人、ぴーって自分で言った…?

次にヨッシャンがWAONカードで支払いを済まそうとすると、

『はいWAONカード、わぉんっ!(裏声)』

えぇっ!?

『良い旅をー!』
と言われて店を出たKINFOLKチームは顔を見合わせ、

『あの店員、口で効果音言ってたよな…?!いったいなんなんや…』

大阪観光に来た人が最初に入ったコンビニがあそこだったら絶対関西人勘違いされるなぁー、とゲラゲラ笑いながら、
3人は灰色の低い雲の下へ、
車を滑り込ませた。


ー 関西CX2015〜桂川戦 ー


平らなグランドと、立体的なキャンバー区間に二分されたお馴染みのコース。
昨年程ではないにせよ、
潅水した河川敷。
ぬたぬたは覚悟していたが会場について見ればなんと、
雪化粧された真っ白く清潔感のある
景色に。

自転車に泥が乗るのを避け、試走せず、
田口さんと四人でコースを歩いて回って、ラインを確認。
どこが正解ルートとも思えない難しいコースだ。

とにかく、関西CXは今日で最終戦。

残留切符を後1枚欲しいミウケンさんとヤギさんは、今日は本気で行くだろうし、ヨッシャンもあわよくば一発残留を決めたいだろう。
辻兄さん、ナイトーさんの『俺と同い年組』も今日は参戦。
そして、前回背中も見えなかったルーキー、グレ君と、今回はスタート位置も近い。

彼はロードに乗ったら異次元の速さと周りからも聞いてるし、
少し小柄で細く、圧縮パックしたブロイラーの様な、艶やかでハリのある太腿筋。

似た様な体型の人をよく見るが、
大概速い。

勝機があるだろうか。

いや、そんなもん、レースなんて何が起こるか分からん。

ピストルに合わせ、スタートを切る、
が、クリートが入らない!

やっぱりSPDは雪にめっぽう弱い。

強くペダルを蹴ってクリートの雪を落とし、カチン、
とハマった頃には第1コーナーに入っていた。

スタートをミスって中盤ほどまで順位を落としたが、
まだ間に合う。

砂、グイグイ踏んで前にグレ君!
まだ抜いてるのか?先行くで!

前に出て、前方に、
SKRKのジャージ。

森君だ。

彼はいつも、
BMWのオートバイに自転車をマウントして会場に来るという、真のスタイラー。
長身でモデル顔負けのルックスも合間って、薔薇のジャージが良く似合う。

そんな彼がずいぶん前にいる、多分3位くらいか?

あそこまで後10台程か。
まだ行ける。

ほいほいステップを跨ぎ、
キャンバー区間。

ドロドロの崖っぷち一本橋。
一列に並んで走ると、前の方で誰か躓いた!
ここは、崖の下まで駆け下りて…

ってフカフカの泥?!、そこを
たぷたぷ走って必死で抜け出すと、
少し順位が上がる。
ここで、5位。

口に入った泥をプッと吐き出し、
上出来、と自分を誉める。

そこを間髪入れずにグレ君が前に出てきた。
二周目、ホームストレートで先行を許す。が、砂の第1コーナー。
進入で彼のブレーキが鳴く!
が、こっちはノーブレーキで進入して、
前へ出る。

ここら辺の経験値はまだコッチに分があるか?
だが引き離せない。

キャンバー区間では皆
『すぐ後ろグレ君!』
『モッツー!うしろー!』と、
志村か!
と突っ込む間もなく激しい追走劇。

熱い声援、オッチーさんの声。
いつもホントに有難いが、
今日はそれに加えて御子息の『もっつ〜、がんばれ〜』って可愛い声も聞こえて嬉しくなる。

おかげで3周目手前まではグレ君を前に出さずに、
ヌタヌタのホームストレート前、
彼は降りて自転車を押し走り出す。

グレ君、
ここは踏んだ方が脚残せるで!

と自論を誇示すべくコッチは乗ったまま、ヘアピンを曲がる。

グレ君乗車、
でもコッチは既に加速体制に入ってる。

はず…



あれ?
なんや進まん!グレ君が遠のく。

速い!

なんやあの加速…。

ついて行こうとして、一気に消耗を感じる。
一本橋でしくじり、足を着こうとしたら
後ろから来てたバイクの前三角に足を入れるというミラクル(笑)。

これにはギャラリーも大ウケで、
さすがに照れ笑いながらも走るが、

どんどん抜かされ
17位?

落ち過ぎやろ!

ガス欠か?
いやいや、
まだまだ追い付けるやろ!

何台か交わして、
競輪選手みたいな足の人を追走、

ついにはゴール手前のヌタヌタで追い抜く!
よっしゃ、最後、ストレート。
ここで皆の
『最後、下ハーン!』
って応援に、『応っ!』と
下ハン握って走ると軽くスタック。

先の競輪選手が追い抜いてくる!

しまった、下ハンなんて握るんじゃなかっ…

って、この人も下ハン握ってるやん!

まさかの下ハン勝負。
負け、負けるかー!


あかん…

抜かれて、
14位、か…。


ゴールラインの先に、
ぐったりしたグレ君を見つけた。
なんと5位。

健闘を讃えあい、
やはり彼は速かった。
そんで楽しかったし、
また走りたいと思った。


その後続々とゴール、
ミウケンさんとヤギさんもチケットをゲット。無事残留を決めた。

ヤギさんがチケットを取れた背景には、数々の友情劇があったそうで、
人徳も一つの力だと思った。

KINFOLKチームで洗車に行くと長蛇の列。その辺りに洗車場の水が溜まって、
泥水の川が出来てる。

『…ガンジススタイルでいきます?』
とヨッシャン。

せやな、と、
水溜りの水でこんもり乗った泥を削ぎ落しながらレース結果を一頻り悔しがったら、

さっさと着替えて、フードコートへ。
ここ桂川の出店数は相当なもんで、
長蛇の列になるエスキーナにフラれても、森林食堂や、筋煮カレー屋さん。
どこも人気なので売切れる前にあちこち回って、ブチョーコーヒーでマフィンとコーヒーを手に、
最後、C2観戦。

ハングリーで、実力の拮抗したこのカテゴリー、しかも役者揃いとあって、やはり最高に面白いし盛り上がる。

個人的にはオグさんとコッシーのSS対決が毎回熱い。

オグさーん!と声援を送ると、
『こ…。』えっ?

『コーヒー飲みたい…』

…辛そうな顔したオグさんは元気そうだ。

それを追うコッシー、
が、少し距離がある。

これはこのまま決まるかなー?
と思わせたが、
オグさんがピットイン、
一瞬のモタつきを見逃さず、
コッシー、一気に前へでる!

鬼の追走でオグさんが追うが、
コッシーはそのまま逃げ切って、
レース中のレースを勝ちとった。

いやー、

面白かった。

観る度に、自分があの中で走ったらどうなるだろう、と考える様になってきた。


次のシーズンこそは。

チームオーナーであるヨッシャンも、
色々面白い事考えてるみたいだし、

シーズンの終焉に淋しさよりも、
きっとやってくる来シーズンの楽しさに期待して、

自分の中の2014〜2015関西CXに、
幕が下りた。




(巨匠、マリオ君、堀君、写真ありがとうございます)




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