RAPHARIDEは2度来る 〜キツイ編〜

早朝、
玄関先でCXタイヤに換装作業してると、下からドドロン、
とディーゼルエンジンが重い息を吐いて目覚める音が聞こえた。

夜中まで遊んでウチの前に車を停め、
そのまま車内で眠っていたヨッシャンだ。
寝不足でもRAPHAのクラブライドに行くという。

腰の軽さと元気の良さに
呆れる程感心して、
さっさと自転車を積み込むと、

彼は70ランクルのアクセルを踏みこんだ。



集合は柏原駅。
大阪府中河内と言われる、
大阪府東部、奈良との境い目辺り。

ここから河川敷のサイクリングロードを走り、
特別なルートを辿って山々を越え、
戻ってくる。

昨日のファンライドから比べると参加者は倍近くの20人超え。
自己紹介もソコソコに走り出す。

この『特別なルート』、
と言うのがラファライドの醍醐味で、
信号は少なく、
アップダウンが激しくて、
何より道、景色が美しい。

走り応えのある、
素晴らしいコースコーディネィトを手掛けるのは先頭を走る、辻啓氏。

サイクルフォトグラファーでありながらグランツールの解説なども行う多才な氏は側で見ると、
そのしなやかに引き締まった身体が、
まるでヒョウやネコ科の動物を思わせた。

やっぱり速そうだな、
と走りながら思ってると、

『いつもどの辺りを走ってるんですか?』との氏の質問。

緊張気味に、

イ○ア(湾岸の練習街道)ばっかり走ってます!

と応えると、
『でた〜(笑)まぁ、中毒になりますよね、あそこは。でももっと(色んな所を)走りましょうよ!』

そう言うだけの事はある、
このコース。

細い脇道へ入って行くと、

緑の匂いが肺に入る。
古民家や田畑が陽の光に柔らかく照らし出され、
その間を通る、

恐らく
何年も整備されてないであろう道は、
荒れているというよりも
その景色と混然となって、
風情を増していた。

そこから幅員が狭く、
両脇の樹々が枝葉を寄せてトンネルとなり、光を遮られた路面はジメジメと湿る。

放置された山道、
ボロボロのクッキーの
表面の様なアスファルト。
苔が僅かな木漏れ日を受け、
碧く、美しく光る。

歓声をあげ、
子供の様にはしゃぐ自分を気恥ずかしく
思うが、

腐りかけた小枝が転がり、
敷き詰められた落ち葉が
タイヤを滑らし、

そして、
坂が、ぐっと立ち上がって来る。

もうダメだ、にやけが止まらん。

気が付くと脚は回り始め、
がっつく様に踏み込む。

とんだ急勾配、
さすがドSライドと言われるクラブライド。
でも、苦しいより楽しい。

こんな坂を何度も、
登ったり下ったり、

忘れてたような、
初めて知った様な興奮だ。



ライドは、
これだけの難易度高いコースをこれだけ多くの人数で走ったというのに、ほぼ全員無事に帰ってきた。
一番大事な事だし、
当たり前の様にやってのけるモトジさんの兄貴感。
やはりクラブライドはいつ来ても素晴らしいと思う。




『ヨシダさーん?!』
と、
寝そべり型の半身浴で寝落ちしそうになるヨッシャンに戯けて声を掛け、
彼はビクっ、と目を覚ます。

夏の終わり、
夕暮れの露天風呂は最高だ。

流石に睡眠不足でこのライドは効いたやろ〜(笑)、
なんて笑いながら、
自分も相当疲れてる事に気が付いた。


距離や勾配を考えれば、当たり前の疲労だけど、それを感じない程楽しかった、
って事か。

練習だけじゃ、
大好きな事が義務みたいになってしまう。

親父になっても
自分がキラキラ出来る事が大切で、
そうでないなら、
もうそれは趣味でもなんでもない。

とは言え、
練習無しじゃ楽しみきれないもんなぁ…

湯槽から上がり、

自分は運転で飲めないのに、
『ビール飲んでくでしょ?』と誘ってくれるヨッシャンは優しい。

フレッシュジュースとビールで乾杯して、満足気に、
でも最後に登りきれなかった坂を思い出し、天井を仰いで思う。


ー やっぱ練習足らんわ…−


















RaphaRideは2度くる〜緩い編〜

サングラスのレンズに
ぼとりと落ちた汗が視界を歪める。

拭いもせず、
ひたすらペダルを踏み、
坂を駆け上がる。

太ももが悲鳴をあげ、
呼吸器は絞りとられる様に痛い。

いつもの、
湾岸に掛かる橋を駆ける練習だ。
確実に強くなれると信じ、
後少しだ、
この坂を登れば今よりもっと、。

自分に言い聞かせ、
声にならない声をあげ、
登りきり、
酸欠の頭で空を仰ぎ、思う。


ー この練習、飽きた。ー



金曜の夜。ホルモン屋『岩崎塾』。
薄く焦げ目のついたホルモンが柔らかく口の中で弾け、甘い脂が溢れ出し、
それをビールで流しこむ。

チャンヌが甲斐甲斐しく肉を焼いてくれて、それを優しい眼差しで見守るデイブ。ナイトーさんの店に集まった四人で
金網を囲み、大人のゲス話とチャリ話に花を咲かせる。
やはり焼肉は
楽しい仲間と食うのが美味い。

ナイトーさん、明日の朝練はファンライド的なのどーすか…?
とゆう提案に、
ナイトーさんもイイすね、じゃあ、
毎週土曜日(水曜も)やってるraphaライドに参加させてもらおう、って事に。

チャンヌもおいでよ、と誘うと、
何着ていけば良いか解らんと言うので、
ファンライドやし、動き易いカッコでいいんじゃない?

と、

翌朝。
結局チャンヌはその後朝まで踊り明かして来れず、
ナイトーさんと2人でraphaへ。

少し早く到着すると、
次々にサイクリストが集まってきて…
あれ?

なんかチームSKYのジャージばっかり…
10名強。
その後普通のジャージの人も数名来てたけど、まるでチームSKYのライドみたいや。
後で聞くと、
常連さんで示し合わせて来たそうな。

いやー、チャンヌ、危なかった、
来てたら絶対浮いてたな…,

女性のライダー(美人)も独りで参加
されてて、カッコいいすね、
と話かけると、パンク修理も勉強中で、
乗って半年の初心者とか言ってるかと思えば、聞けば150km走破とか、
箕面の勝尾寺登ってるとか、
かなり乗ってる様子。

さて、河川敷を目指し市街地をしばらく走る。

このグループライド感、
久しぶりでワクワクする。
二日酔いにはちょうど良い。

集団の比較的前に位置する
俺とナイトーさん。

先の女性は最後尾の方すね、
…行きますか?

いやいや、何いってんすかー。
…でも美人でしたね。

…行きますか?

いやいや…

とかやりながら、河川敷に入る。
夏の終わりを告げる様な、
スカッとした空の青。

緑とのコントラストが気持ち良く、

最後尾から写真を撮る。

下心があると思われると恥ずかしいので、
さりげに少し前を走ってると、
あまりの景色の良さ、
ルートのセレクトの妙に、
振り返ると誰も居らず…

しまった(ホンマの最後尾にはスタッフがいます)、
と思ったけど、
なんか戻るのもアレなんで、
前に進んでナイトーさんとまた合流。

モッツさん?
あの女性はどうしたんですか?

いや、それが気付いたら居なくって…

えっ!助けに行かなかったんですか?!

…いや、だって…

ええい、あんたは男じゃない!
俺が行く!

と、くるっとターンしてナイトーさん、
数メーターバックしたかと思うと、
またすぐターンして戻ってきた。

えっw、行かないんですか?

いや、俺が行ってもなあ…

と照れ笑いする、
中2感丸出しの我々。

そうこうしてる内に、
女性とスタッフの方が追い付いて、
なんでも途中で携帯を落としてたとか。
無事で何より。

淀川の河川敷に入ると、
スプリントポイントがある、との事。

どうしようかなー、と迷ってると、
後輪がフワフワしてきた。

スローパンクだ。

修理で皆を止めるのもアレだし、
まぁ何とかraphaまで着いたらパッチでも貼っとくか、

と思ってると休憩。
ナイトーさんが
今のウチに新品のチューブにした方がイイですよ、
と手持ちのチューブをくれたので、
交換開始。

クイックを抜き車輪を外す。

タイヤレバー咬ませて、
魚さばくみたいに
リムから片側のタイヤビードを外し、
チューブを抜く。

タイヤの内側を撫で、異物が刺さってないか確認し、新しいチューブを挿入。
この時軽く空気を入れとくとやり易いし、中でチューブが捻れたりしにくい。

チューブがリムに収まったら空気を抜いて、ビードをリムの中に落とす。
人によって様々だけど、
自分はバルブの反対から入れる。
最後にレバーを使わず手で無理矢理落として、バチん、と入れば最終チェック。

リムとタイヤの間にチューブが噛んでないか、タイヤを摘みながらクルッと一周。最後にバルブをカシュカシュ上下させて、動けばOK。
ここで動かない、動きが渋い時は、
結構な確率でチューブが噛んでるので、
やり直した方がよい。

と、まぁ、
パンク修理講座を軽く展開して(笑)、
また走りだす。

スプリントポイントはパンクで無理だったけど、
今回は最後にグラベル(未舗装路)があるらしいので、そこを楽しみに走る。

とはいえ着いてみれば川の土手。
まぁなんでもいい。
未舗装路はやっぱテンション上がる!

前日の雨でデッカい水溜りが沢山あり、
右へ左へ除けながら、
速度は40km超えて、しまった、こりゃ間に合わん、とホップして避けようとしてミスり、後輪が水飛沫を立てる。

うおお、楽しい…。

さて、
グラベル部分が終わり、
ナイトーさんは仕事で離脱。

ナイトーさんのチューブのお陰でグラベルを思いっきり楽しめた。

raphaに戻ると、
500円でコロッケサンドと
ドリンクのセットが頂ける。

安いので、
てっきりパンも油吸ってべちゃべちゃのよくある出来合いのコロッケパンを想像してたけど、
目の前のコンロでパンを軽く炙って

千切りキャベツと
サクサクのコロッケをオン。

走った後にコレは堪らん。
マスタードをかけて、がっつく。

さて、とウチに向かってまた走りだす。

明日のraphaライドは南大阪。
今日の様に楽しく走る、ってだけじゃないらしい。

パンクし易いタイヤをCXタイヤに履き替えとくか、
なんて考えながらシャワーを出て、

扇風機の前で、
崩れる落ちる様に昼寝していた。


続く















クラガリ・アタック

もはや、壁。

大阪で最もキツいと言われるその峠は、
国道でありながら通過するだけでも
困難な傾斜と幅員、平均斜度20%、
最大斜度は実に37%に達する。

大阪から奈良へほぼ真っ直ぐ伸びる道は、急坂にならざるを得ないらしい。

最小ギア比1.69では
当然乗って行けない。
しかも、押して上がった所で、
この危険な坂を下らなければ…。

…いったい何しに来たんや…

汗だくで自転車を押しながら、
ここに来た事を、
俺は後悔していた。




夏らしいぶ厚い雲の隙間から、
雨上がりを知らせる朝日が降り注ぐ休日。

ウチを出て、
KINFOLKカスタムにボトルを突き刺し、東へ進む。

30分も踏めば、少しづつ登りに、
気が付けば坂の街に入っていた。

ストラバによると、
高架をくぐった辺りからが、
悪名高い『暗峠』。
皮肉って『酷道308号線』、
なんて言う人もいるらしい。

住宅街を抜けてスタート。
KINFOLKが搭載してる最小ギアは23t。
フロントは39tで、
クライム向きでない事くらいは分かる。

でもシングルで葡萄坂は登れたんやし、
と過信して、
とりあえず行けるトコまで2枚程ギアを残して登り出す。

クロスバイクで
異様に軽いギアを
クルクル回してる人を追い越す。

ふっふー。
へんな優越感に浸る。

足を着かずに登りきっただけでも
人に自慢出来る程の坂だと聞く。

なんだ、余裕じゃないか。
ギアもまだ2枚も残ってるし。

ガンガン踏んで、ぐんぐん進む。
坂を登るのはいつも楽しい。

…はずだった。

市街地を抜けた瞬間、坂はぐいっ、
と勾配を上げ始める。

慌てて下手くそにギアを落とす。

ギギ、ガチガチんっ、と嫌な音を立てて
ギアはなんとかローギアへ。

2枚残しの間1枚使ってへんやん!
と、自分に突っ込む間もなく、
ハンドルにしがみつく。

ドロップポジションでペダルを踏みこんで、んほ、んほ、んほ、と廻してると、
なんと正面から車が。

幅員が車1台分しかない上この急斜面。
おおっ、ヤバい。
とりあえず路肩に避けるしかないが、
車線変更も辛い。

一応、国道なので交通量がそこそこあるって、ホンマやな…。

落ちた速度を取り戻そうと、
ブラケットをプルプル引っ張りながら、
ハンドルを抉る様に登る。

右に左に前輪を揺らしながら
コンクリートの路面にトラクションを掛け…

うお、今度は、
20cmくらい幅のある深い排水溝が斜めに道をカットしてる。

前タイヤがそこにスコン、
と嵌るイメージが脳裏を過って、

思わず足を着く。

…しまった…。

もう、とても乗車出来る斜度じゃない。

ロード用シューズでは、
滑って歩けそうにない程の、

振り返ると、転げ落ちそうな坂。

帰りにココを下ると思うとゾッとした。

サングラスのミラーに寄ってくる
羽虫を払いながら、
押して歩く。

また車が降りてくる。
道のキワまで避けてギリギリかわす。

また一段とキツい坂。
靴が滑り、立ち止まる。

もういい。
足も着いてもたし、
もう良い記録なんか絶対出んやろし、
登ったとこで危険な下りが待ってるだけ。
意味も無くハイリスクだ。


舐めていた。

反省と気恥ずかしさ、
期待に勢い付けて裏切られたショックで、もうお家に帰りたい。

登山に来たわけじゃない、
走りに来たんやし。
軽いギア設定でまた出直すか?

色々と考えて、

考えながらも気が付けば足は、
山頂へ向かい歩き出していた。

賢く考えれば無意味かも知れないが、
気持ちが納得出来ないなら、
行くしかない。

意味や理由なんて、
登ったヤツが、
登った後に考えればいい。

しばらくして、
僅かに勾配が緩んだ。

そうや、
乗れるトコは乗って行けばいい。
当たり前の事を忘れていた。

踏み出すと、やはり気持ちが良い。

そして、噂の最大勾配37%とやらの、
S字カーブ。直線基調の暗峠だが、
ココだけは勾配キツすぎて
蛇行させるしかなかったんだろう。

もう、ここは素直に押して歩く。

そこを越えれば、
山頂まではずっと乗って行ける感じで、
がんがん踏む。

幅員は狭いが、
空気の美味い、
ヒルクライムな感じに、
今更楽しくなって来た。

頂上付近は石畳の道。

やっぱ国道には見えんな、
と外連味を感じる石畳に苦笑して、

ようやく、
山頂の峠茶屋に着く。
フラフラと自転車を立て掛けてると、
『寄っていかれるなら、自転車、
中にどうぞ』と案内され、

あー、こってりとミルクが掛かった、
抹茶のカキ氷食おう、なんて言ったっけ…と、
メニューを見ると、

ミルク金時、抹茶金時、抹茶ミルク…

『ご注意は?』

と聞かれ、なぜか

抹茶金時。

と言ってしまい、
当然思ってたのと違う、
抹茶シロップに金時が乗っかったモンが出てきた。

…まぁいい。

酸欠気味の頭で、とりあえず匙をシャクっと差し込んで、かっ込んで、
お決まりの頭痛に顔をしかめる。

ー う、美味い ー

もはやミルクなど必要ない。
氷が良いのかなんなのか、
絶句する美味さだ。

さらさら溶け残りを飲み干して、
山の水もガブガブ飲んで、生き返る。

自問するまでもなく、
登って良かった。

トレーニングとして意味は無いかも知れないけど、
自転車には、
それ以上の感動や、
そこへ導くワクワクとした興奮が、
必ずある。


それを改めて教えられ気がした。






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