朝は、予定より30分早く目覚めた。
まるで遠足を心待ちにする少年の様だが、昨日の酒はしっかり残っていて、
少し気だるい。
が、折り込み済みで、
既にジャージのポケットに荷物も詰めてあり、
ヒゲ剃ったら羽織って旅立つだけだ。
130km走ると決めていた。
ストラバのチャレンジに乗っかて
とりあえず130kmを設定しただけで、
別段、走ったからとて何もない。
(希望者には完走記念ジャージを買う権利が与えられます)
おあつらえ向きに、
raphaのライドが河内長野で行われるので、
ライドのコースが50km、ウチから片道30km強、自走で参加すればちょっと足りないくらいだし、raphaのショップ辺りまでコーヒー飲みに行けば達成出来るだろうか。
荷物はiPhone、
最低限のパンク修理セットに、
補給食のパン。
後はカギとお金とカード。
これで十分だろう。
もう我慢出来ないといった様子で
休日の、朝日の中を走り出す。
まだ幹線道路の車は少なく、
歩道にも部活に向かう学生と、
早起きなおじいちゃんが時折居るぐらいだ。
タイヤの転がる音が気持ちいい。
ガーミンが右だ、南だと案内する。
消費カロリーを気にしつつ、
多めの補給を心掛け、
raphaライドの登坂に備える。
半ばを過ぎた頃、
自転車を乗せた車が横切る。
あの人達もライドに参加だったりするんだろうか。
ポケットからパンを一つ取り出し、
モシャモシャと頬張っては、
脚に負担をかけない様、走る。
信号待ちで、さっきの車に追いつき、
横を抜けようとするとマドが開き、
中からサングラスの男が二人、
携帯でパシャパシャ(笑)。
えっ、誰???
それがraphaのモトジさんとヒロくんだったと、後で知る。
集合場所にちょっと早く着いてしまった。
知らないサイクリスト達ばかりで、
軽く挨拶するも気まずく、
とりあえず
ロッテリアで独りハンバーガーを食って休憩。
腹パンで店を出れば、
KINFOLKの2人も到着していた。
『鍋谷峠』。
標高667m、某プロチームの練習コースになってる事でも有名で、
勾配は平均7.3%、
最大勾配は10%を超える。
加えて、『蔵王峠』。
こちらも標高561m。
平均勾配5.6%が、
ダラダラと続く峠道。
この二つがセットになってる。
グループライドとしてはハードな、
それでも、
景色を楽しむとすれば最高に気持ち良く、お洒落というか、
まさに『粋』と言う言葉の似合う、
raphaらしいライドだ。
先発グループを引率するヒロくんに、
KINFOLKチーム、参加者の方々が続く。ざっと20名?もっとか?
少し速めのいいペースで飄々と牽く
ヒロくんの後ろに着いて、
ギョっとした。
ヒロくん、
こんなサイボーグみたいな脚してたっけ…。
普段あんなカジュアルやのに、
脱いだら凄い系のギャップやな…、
と後方でソウ君とヒソヒソ話しながら、
峠に入る。
『この橋からKOMの計測ありますよー。』
とヒロ君がおどけた調子で言うので、
コレはイかなノリ悪いヤツやな、
と思って、スプリントスタート。
前半の緩めの傾斜に騙されない。
ここで一気に加速をつけて登りきる!
なんてレベルの坂でなく、
急勾配になってからが、延々と続く。
もうサドルに腰を降ろす場所もないなぁ、とダンシング続けてると、
後続が数台追い付いてきた。
ペダルを押し込む様に回すが進まず、
ハンドルを左右に降る手のひらは、
グローブの中で赤く擦り切れてるのが分かる。
しかし、まるで古道の様に怪しく輝く路肩の景色と空気に、
折れそうな心は何度も持ち直す。
気が付くと、
ソウ君が後ろに追い付いてきた。
あの距離を詰めるとは、
流石、永遠のライバル…
とか思うまもなく、
ジリジリ離されて、彼の登頂を
100m程先に確認して、
自分も登りきる。
頂上で他の参加者の人達を待ち、
思いの外遅れてる最後尾を確認する為に
モトジさんがスーッと躊躇無く
この坂を降りて行く。
なんて粋なんだ…。
てか、やっぱraphaの人達はレベルが違うなあ、と思い知る。
さて、下りはブラインドコーナーも多いので、マイペースで行きましょう、
と走り出すが、人のペースに着いて行こうとした瞬間、思い出した様に恐怖がよぎり、それが死神の手となり両肩を摑む。
あかん、曲がらん。
楽しいはずのワインディングが、
ただの恐ろしいジェットコースターになった。
麓まで下りると、ヨッシャンが、
『ガチガチで曲がれてない感じですね。もっとカッコつけて曲がったらイイんすよw』
なんて言うもんだから可笑しくなって、
急に肩の力が抜け、
なるほど、思う様に曲がり始めた。
二つ目の峠に差し掛かる頃には
本当に楽しくて仕方なく、
『この先は登り傾向で真っ直ぐなんで先に行きた人はどうぞ』
て案内と同じくして駆け上がり始める。
少し勾配が緩んだので
下ハンに持ち替え、
ペダルを回す。
息が弾む。
苦しいはずなのに、口もとが緩む。
俺はいつの間に、こんな、
ドMになってたんだろうと自嘲して、
グイグイ登る。
そして突然開ける絶景。
最高だ、と思う。
気が付くと独りになっていて、
山頂付近で先頭の集団を待ち合流するも、
後続グループとは合流出来ないまま、
下山する事になった。
先頭はraphaのスタッフの方が牽いてくれて安心。その後ろに10台弱のトレインを形成する。
路面がやたらと悪い下りでパンクする人も居たけど(後続含め数名パンクした)、
非日常を感じる山道に、
もう恐怖も疲れも忘れていた。
山を出て大きな一般道に入れば、
トレインは加速。
流石にしっかりスリップに入らないと
このギア比でトレインに着いてくのは結構キツイ。
あっとゆうまに50kmのコースを走り終わっていた。
駅で皆と合流し、
raphaライドは解散。
緻密に計算されたコースは信号も交通量も少なく、
何より古道を散策してるような景色に酔いしれる、本当に素晴らしいライドだった。
しっかり苦しいし。
その後、
KINFOLKの三人は王将で
ギョーザ&炒飯とゆう
質素で高カロリーな飯を食うが、
まだ後50km近く走るので問題無い。
車で来てたヨッシャンに
『乗って行きましょうよ』
と誘われるが、
こんなに沢山自転車乗れる日は中々無いので、自走で行くわ、と断わり、
ムーブメントでとりあえず落ち合う約束をする。
途中、幹線道路のアンダーパス。
車の流れが止まる。
まだまだ元気だ、限界まで回してみよう。
ケイデンス計をチラ見すると、
150、155、
160を超えて、さすがに維持が辛くなった頃、地上に上がる。
このままウチに着けば、120kmか、
少し足らんし、
ヨッシャンも
渋滞で少し遅くなるだろうと、
坂を見付けては登ってみたり、
道の駅に寄ってはすぐ出て来たりと、
余裕かましてるウチに右膝に異変。
なんか痛いなー、
と思ったらどんどん痛みが増して、
ペダルが踏めない程の激痛に。
膝のどこをマッサージしても
一向に収まらず、
まさかと思って太ももの裏をトップチューブにゴリゴリ擦り付けると、
マシになった。
ハムストリングだ。
サドルが高いのか、
アンクリンクしてたのか、いや、
アンダーパスで調子んのったアレか…(−_−;)。
大阪市に差し掛かった頃にはママチャリ並みに速度が落ち、
膝を庇ってムーブメントに到着。
遅くなってゴメン、膝やってもうたわ…。
その後、ウチの近所にBIOTOPてなんか洒落たコーヒー飲めるトコ出来たし、
そこでまた落ち合おか、
と、ノロノロ走り出す。
少し休んで回復したけど、
130kmまで後10km。
でももうウチに着くので、
ヨッシャンが来るまで近所をグルグル…
2km程で、アカン、もうお膝が限界…
ついにガーミンのストップボタンを押し、
ライド終了。
コーヒーを飲みながらヨッシャンに、
raphaライドがバラけたのは、
モッツさんが独りでガツガツ走るからですよ!グループライドなんやから
回り見ないと…。
と言われ、あ。と、反省。
すいませんでした。
後からストラバにアップロードした
ログを見たら、127km走った事になってる…
後3kmかよ!
チョットこのジャージ欲しかったのに!
…。まぁ、調子こいたバツやなぁ。
それにしても、
堪能できた。
独りで走っても、複数で走っても、
自転車は素晴らしい。
日焼けに滲みるシャワーの痛みが、
充実した1日を物語っていた。
走行距離127km
獲得標高1646m
消費カロリー3078kcal