トレイルカッター
今日はよろしくお願いします、
と、テースケさんの車に自転車を積む。
『あ、そーや、シングルやもんな…
あの坂…無理かも知らんで』
…えっ…
思い出した様にそう言って、
テースケさんはドシッ、とイイ音で
ディフェンダーのドアを閉めた。
ウチでサムギョプサルを食おう、
って事でブタ肉焼いてると、
あれよあれよと皆来てくれて、
プチシクロ新年会みたいになった前日の夜。
明日トレールのCX練行くけど、行く?
と誘ってもらって、
ちょうど最近、自分にMTB乗ってる人の様な技術が少しでもあれば、
と思ってたので(妻の顔色を伺い)
二つ返事で同行させてもらう事に。
芦屋に到着し、
メンバーは、
ローカルで今回主催の田口さん。
こないだC2に昇格したアラヤのジャージ、オカさん。
同じくC2のオクムラさん、
そしてC1のテースケさん…。
ここに、
シングルでC3のアチキですか…。
借りてきた猫見たいに、
隅の方で皆の様子を見守りつつ、出発。
山まで舗装路をそこそこの強度で
走るけど、久々のグループライドはやっぱり楽しい。
オカさんがクールな雰囲気で
ドリフのネタ連発して、
あー、あったねー、
あれ今ならヤバいよなー、とか、
まぁ、同世代ネタで盛り上がり、ちょっと気持ちも打ち解けつつ、
アスファルトのヒルクライム。
結構な強度だがなんとか着いていく。
しんどいなー、て時に
眼下にバッと街の景色が広がると、
嬉しくなって頑張れたりする。
さて、
いよいよトレール。
登山に向かうオバちゃんに、
あんたそれロードバイクちゃうの!
パンクするで!
って言われて、詳しいな、
と笑いながら走るが、
その笑みもすぐ凍る。
岩だらけでどこ走ったらイイの…
思ってるウチに後輪が乗り上げて空転、
勢いで前転しそうになる。
皆の走りに必死でせっせと着いていき、
ムリそうなら担いで、山の中へ向かうと、
小川の上に架かる橋、
グラベルの登り、
その先にエメラルドグリーンに光る池が幻想的で、
非日常な景色にすっかり楽しくなってしまう。
金髪の美人が水浴びしてそうやな!
とオッサン五人でわはは、と笑いながら、
山道を登り出す。
登りは意外と乗れるとこが多く、
キツイとこや階段は担いで、
担いでは乗って、
ずいぶん登ったなあ、
と思った辺りで下り。
やっと下りかぁ〜、と下を見たら
今まで担いで登った様な坂や階段。
え、ちょっと…
思う横をサッと降り始めるオカさん、
続いてテースケさんがもう、
坂を落ちてってるんじゃないかと思うスピードで降って見えなくなる。
いやいや、これ着いてったら
アカンやつやろ、
と最初は担いで降りるが、
いやこのままじゃ
アカンやつやろ、
と自分を鼓舞し、乗ってく。
〜あ〜だだだだだ!
頭が上下に揺れまくって前が見えない。
前ブレーキでツンのめって足を着く。
と横から
『自転車はブレーキかけたら不安定になる、進んでる時が1番安定するから』
とテースケさん。
また下りで、
あだだだだっ、とココで理解する。
直線で踏んでコーナーで減速、じゃなくて逆か!
直線で減速、コーナーはレバーを離す。
リアブレーキちょい当てでスピード調整して…って、
でも頭揺れ過ぎて路面が全然見えん!怖い!
『ペダルが遊んでますね、しっかり踏んで、ニーグリップですよー。』
と、さっきからシンガリを務めてくれてるオクムラさんが後ろから。
踏む?膝に力を入れてグッ、とペダルを抑え膝を締める感じか。
今度はオカさんが
『怖くても下ハン握ってみて下さい、安定するから。』
怖くて途中で握り変えられないので、
1度止まって下ハンで再スタート。
あ、あれ?
なんかブレーキめっちゃ効くし、
安定してるし、怖くない…
『ヒジでもっと吸収して!』
と、またテースケさん。
気が付いたらラインを探す余裕くらいは
出来ていた。
スピード感は体感的に落ちてると思ったが、
その先で待つ田口さんに追いつくと、
『モッツさん、少しづつ速くなってきたね』
と言ってくれて喜びながら、
なるほど、と思う。
丁寧に走るのが速さへの近道なのかも
知れない。
まぁ、しかしそんな簡単に速く
走れるワケがなく、
その後の崖のキワとか、
キャンバー、あ、ロープ伝ってく
トコもあったなぁ…。
『これ、マリオやったら上から落ちてくるヤツやな!』
てオカさんの80sネタにまたワハハ、と走り出す。
担いで登るのも困難な崖の先、
頂上の絶景。
駆け下りれば水面が凍る大きな池。
CX車での乗車率の高さといい、
田口さん提案のコースを皆絶賛。
反面、
走行僅か30kmで標高1000mゲットの
トンがったコース。
苦しいと言うか、ハードコア。
テースケさん曰く、ドSなコースとか。
軽い休憩の後、
担いでも登り難い程の坂を登り、
何があるか分からない山道を
ハイスピードで降り出す。
オカさんが後輪で蹴っ飛ばした
丸太棒がクルっと回る。
その脇を抜けて、
岩と岩のタイヤ一本分の隙間に
前輪を入れ、後輪で削る。
後ろからオクムラさんが、
『ナイスリカバリー!』
とか、いいね、とか声掛けてくれて
嬉しい。
人がギリギリ歩けるくらいの崖っぷち。
緊張でついラインを外しぎみだけど、
フカフカの腐葉土がグリップして気持ち良い。
実際怖い。
でも同じくらい楽しい。
その狭間に興奮があると知る。
『このトレイル、ヨダレ出るやろー!』
と言うテースケさんの言葉はイイエテミョウで、
ほんま、めっちゃ面白い。
何より巧い人達に教わる事で、
出来なかった事が少しづつでも出来る
様になるのは快感だ。
で、
なんとかヨイヨイと坂を下ってると、
途中、田口さんのご友人が落ちた、
というコーナーで止まる。
みんな、コレはヤバい、しかも落ちて
無傷とかホンマ奇跡、みたいに言ってたのだが、
そんなに急なコーナーでもない?…
で、ふと気がついてゾッとする。
今、俺がヨイヨイ降りてきたこの坂を、
曲がりきれない速度で降りてきた、って事か…。
MTBの人達、ホンマヤバいな…。
そこからまた走り出す。
ガタガタと下りながら目に飛び込む景色は、
シダ植物が木漏れ日を受け、
蒼く光るその横を川が流れてた様な…
幻想的過ぎて、
めっちゃ綺麗っっ、スねっ、
あっあっ、
ヤバい!
とか半笑いで叫びながら走る。
ようやく
アスファルトに帰ってくると、
少しホッとした。
無傷で戻ってこれた…。
そこから下りのワインディングが
結構な急勾配なのに、
もう、
感覚狂ってるのか全然怖くない。
で、
芦屋の住宅街をCX走りして、
ガッツリ3時間走ったシメはラーメン。
ラーメンを食うなんて、
体重気にしだしてから殆ど無かったなぁ
と呟くと、
『頑張ったご褒美やで』
と田口さん。
正直、今回自分以外は皆MTBの人達で、
マジで足引っ張って申し訳ないと思ってたので、
そんな事気にもしてない風な
皆の雰囲気に救われ、
感謝してラーメンを啜る。
くーっ、美味い!
ニンニクが胃の中に染み渡る。
帰りの車の中で、
疲れそっちのけでテースケさんに興奮気味に
お礼とも感想ともつかない言葉を並べながら、
あらためて、シクロクロスやって良かった、と思う。
ロードバイクやMTB、
そこに精通した人達とこんな風に遊べるなんて思わなかった。
街の中へ帰って来て、
まるで夢から覚めたような気分。
自然の中を駆け抜けるのは、
それほどまでに幻想的で魅惑的だと思い知った。
- 2014.01.30 Thursday
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- by もっつ