AWAZI PerfectRide 〜蒼い閃光編〜

平坦で快適な南海岸も、
この時間になるとまとわりつくような向かい風の
洗礼を受ける羽目になる。

去年、イクジ達と初めて淡路を廻った時も、
夕暮れにこの道で風に苦しめられたのではなかったか、

それも逆周りで。

要は、西から風が吹いてるのだろう。

実際、淡路島は地理的に西風を受けやすいらしく、
風車も全て西風を受けるべく設置されている。

なんにせよあの時は100kmぐらいでひいひい言ってたが、
走りきった後は爽快だった。
ファンライドってのはそんなもんで、

こんなに身体に負担がかかる程走るのは
身の程知らずの無謀な行為でしかない。

そんな事を考えながら、
きしみ出した膝を押し込む。


少し登りがあれば、
簡単にトレインは崩れる。

コンビニが見える度全員揃うまで待ち、
出発の繰り返し。
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しかし、休憩が多過ぎるのも疲れる。


やがて、
界面が群青から深淵の闇へと表情を変えて行く。

また坂だ。

シッティングで登りだしたが
速度が落ちる。

見かねて前田さんとソウ君が前に出て引こうと
してくれるので、
付いて行こうとダンシングで加速しようとしたが、
さらにガクンと速度が落ちて、二人は離れていく。

もう、ダンシングに使う筋肉も売り切れてるらしい。

サドルに座り、
ペダルを踏めば、ピストはペダルが脚を押し上げてくる。

相棒が、がんばれがんばれ、と、
俺の足の裏を押し上げてくれるようだった。

やがて、

空には星が浮かび、
海面、とゆうか、
ガードレールの向こうは一切の闇。

街灯もなく、
ノグライトの点滅を常灯に変えても、
その灯は頼りない。


ついに、闇の中を走る。


トレインは切れたブナマを除き、
4台編成。

登りの引きで限界を迎えた前田さんを救ったのは、
まさかのウエキュンだった。

さっと先頭に出て、
トレインを引く。

少し離れたソウ君と俺も続く。

まさかでも無いか、
彼はこの時の為に序盤をセーブしてたんだろう。

いやらしい奴だが、助かった。


暫く巡航してると、
突然先頭の速度がガタ落ちした。

危ない、と思うと、ウエキュンは対向車線側に
ふらりと出て、そのままコンビニへ。

『・・・意識やばかったっす、ハンガーノックってやつですかねぇ・・・』

と、コンビニで補給を摂りながらウエキュン。
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俺もオニギリとシュークリームと言うナゾの組み合わせの
補給食を買う。

後からコンビニに入ってきたソウ君は、
目の下にクマが出来ていて、
俺の顔みて愛想笑ったつもりだろうが、

彼の体躯も相まって、
ヒットマンが獲物を捉えてほくそ笑んでる様にしか
見えなかった。

こわい(笑)。

満身創痍でブナマを待つ。

ずいぶん待って、
アキラさんがフェリー乗り場に着いた連絡をもらった頃、

闇の中に光る点滅光。

ブナマだ。

彼は、
軽ギアで乗りたてのピストで、坂道は全部押しながらも、
それでも止まらず走ってきたのだろう。

コンビニについた彼は遅れを取った事を気にしてか、
少し休んでなんか食えって俺の言葉に、
「もういけますよ、行きましょう」と絶え絶えに返す。

まぁええからコレ食っとけ、と、
俺は手に持っていたシュークリームを彼に投げつけ、

それを見てソウ君が、ヨッシャンを思い出しますね、
と笑う。

『よし、ほんな行きましょかー!後もうちょっとで完走でっせー!』

とワザと声を張り上げおどけてみせた。

普通みんな、その心意気を買う場面なのだが、
ウエキュンだけは

「じゃぁモッツさん引いて下さいね…」

…なんて嫌なヤツなんだ、ウエキュン・


で、

ここからは最終ステージ。
ラスト12km程だ。


相変わらず街灯も無く、
後方から来る車のライトを手がかりに
道を確認するが、

正面から来る車のハイビームに完全に視界を奪われる。

なんどか側溝に落ちそうになり冷や汗をかき、
意識を取り戻す。


この闇の先をどれほど踏んだらゴールなんだろう、

闇の深さに、もう21時を回ってる様な錯覚を起こすが、
実はまだ19時を過ぎたくらいだ。

進まない事に苛立ち、

膝の痛みに耐え、

尻や股の痛みには気が付かないフリで、

全身の至る箇所の筋肉がこれ以上痙攣を起こさない様に
注意して。

もう、早くウチに帰りたい。

すぐにシャワーを浴びたい。



・・・いったい俺は何が楽しいんだろう。

考えるな、

今出来ることはただペダルを踏むだけ。

結局は、

今できることを今できない奴は、
ドコにもたどり着けないって事だ。


だから、それだけをヤル。

永遠の様な10kmをただ踏めばいい。


突如、

左の空に蒼い閃光。

淡路海峡大橋が、闇の中に浮かび上がる。
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いつもならテンション上がって最後の力が出る所だが
余力はまるでない。
ペースを崩さず、近づいた。


道の駅淡路、19:20着。


売店は店を閉めていて、
何か食物を求めてた俺たちはドッと疲れ、

前田さんですら、
「商売ッけないなぁ!これじゃアカンで!」と
思わず毒づく。

しばし放心。

ソウ君がブナマが通り過ぎてしまわない様、
道沿いまで迎えに行き、

しばらくしてブナマを連れて戻ってきた。

ブナマは車輪止めに気づかず、
ぶつけてコケそうになる。

フラフラの体で、チャリを降りて真っ直ぐ
前田さんの所へ行き、

『今日は迷惑かけてスイマセンでした』
と頭を下げた。

いやいや、なにゆーてんねん!、

思わず、皆叫ぶ。

お前が一番頑張ったやろーに。

皆体力的には限界だ。
故か、
本当の意味で讃え合ってる様な気もした。


誰だって、他人の全てを認める事なんか出来ないが、

たった一つでも本気で賞賛し、感謝出来るなら、
その瞬間はわかり合ってると言っていいんじゃないだろうか。


「あれ?もっさん、アキラさんは?」

携帯見ると

『サーセン、お先しますm(_ _)m』

・・・もうフェリーの上っすね(笑)。

よし、
帰ろう。

残り2km、ゆっくり5人で喋りながら、笑いながら走る。

明石に着き、

ソウ君とウエキュンはサクッと帰り、
俺と前田さん、ブナマの3人はスタバでコーヒーを啜る。

後日、また打ち上げしましょう、
ではその時まで。



梅田駅から堀江へ一気に踏み込む。

晩飯もコンビニか、
と自分に苦笑しながら弁当とビール、
それも一番美味いビールを買う。


念願のシャワーの後のビール。

美味い、でも、眠い。

今は完走したって事実より、
無事に帰った事を思い、

眠気を押して残りのビールを流し込んだ。




続く







AWAZI PerfectRide 〜それぞれの道編〜

メーターを確認しなくても、
ここまでの距離は想像がつく。

恐らくまだ、100km超えていない。
80km前後、といったトコだろう。

到着するなり、
前田さんは『回復や〜』と足湯に。
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衛生上の問題で、足湯に躊躇するソウ君。
まぁ、気持ちは解る。

しかし俺は、とにかくブナマが気になる。
何度目かの連絡でようやく電話がつながり、
足湯で落ち合う事に。

アキラさんも無事合流し、

安心した俺はとにかく、足湯へ。

やや濁る湯。

ぬるっとした感触に、流石に躊躇するものの、
脚の疲労に加え無類の温泉好きの血が、
既に靴下を脱がせる。

前田さんと向かい合い、
ほーっ、と、
息を着く。

ヘモグロビンが酸素をたっぷり含んで、
ふくらはぎを駆け回る気がした。


間もなく、出発。
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ここで、160コースと、130コースに分かれる。

アキラさんは、
『コレで前回と合わせたら160km。もう全部知ってる(笑)』
と、
福良をショートカットする130kmコースを選択。

ウエキュンは、鳴門門はパスって事で、
155kmコース。

たかだか5kmの違いと思うかも知れないが、
一度この5kmを走ったら、わざわざもう一度走ろうなんて
普通は思わない、そんな5kmだ。

ブナマも当然、そのショートカットコースへ。
いや、彼は十分過ぎる程頑張った。
むしろピスト乗りたてで130kmでも相当キツイはずだ。

『ほんま、下り坂では死ぬかと思いましたよ』

そんな彼の言葉に罪悪感混じりに笑いながら、
それぞれの道へ。

残る3人は、もちろん160km。

パーフェクトライドだ。


ちりめんロードと名付けられた海岸沿いの道を走る。

香ばしいちりめんの匂いを馳走に、
いまなら白ごはん2杯はイケルな、

なんて思いながらいよいよ、最後の登山、
鳴門門へ。

平坦な漁村の道から、一気に山道へ。
織り込み済みだ、
と強がっても脚が思うようには進まない。

だが、

前田さんが俺を抜き、ソウ君が続く。

いくら引っ張るのがシンドいったって、
ちょっと悔しい。

前回の余裕はテースケさんあっての余裕だったと、
感謝したり、自分の浅はかさに後悔しながら
二人を追う。


小径車で前方を苦しそうに走る、
茶髪にピンクジャージの女子をソウ君が事も無げに抜く。

ほほー、ソウ君、意外と紳士じゃないなぁ、

紳士な俺は抜きザマに、

『頑張ってくださいね!』

と声をかけ、ちらと横顔を覗くと、

オカンくらいの歳の女性が
息絶え絶えに、なんなら軽く睨んでる。


・・・。

笑顔をで一つ頷いて見せ、
すぐに正面を向きなおす。

坂道は苦しい。


前方の二人はガンガン俺とのきょりを空けるが、

福良方面と鳴門門の分岐点に止まってるのが見えた。

ぜーぜー言いながら、俺はどうしました?
と尋ねると、

「・・・鳴門門、いくの?」

と前田さん。
俺は、

そうっす、行って帰らないと、160にならないんですよ!

と叫ぶ。

鳴門門に行っても、結局この分岐点まで帰って来なければいけない。
いわば、ただの寄り道なのだ。

「やっぱ行くんやー」

とほほ、と二人、走り出す。
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あの前田さんでも泣き言を漏らす程、
すでに俺たちは疲労困憊だった。

鳴門門までは強烈な下り。
って事は・・・

とにかく南端、鳴門門に到着。
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写真だけ撮り、
すぐ出発。もう観光なんか意味がない。

分岐点までひいひい上がると、
なんとウエキュンとブナマが二人で
坂を押して歩いていた。

結局合流。

ここから福良港までは強烈な高速コーナーと下りが続く。


脚が回らない。

ピストで下ると脚が回されるというが、
クランクの回転にもう、脚がついていかない。

そうなるとどうなるか、というと、

チェーンが、ガッチャンガッチャン音を立て始め、
「まわせ、まわせ」とせがむのだ。

もう、いつチェーンが外れてもおかしくない。

速度計はすでに50kmを超えている。

高速コーナー、ブレーキを握りしめるが、効かない。

ステム横に着けた補助レバーみたいなレバーでは、
上手く握れるわけもない。

下って、大きく左に曲がり、すぐに大きな登り。

歪んだランプみたいなもんだ、

下りで速度を落としたら、次の登りが登れない。

クランクに脚を引っ張られるように、それでも回し、
膨らみながらコーナーを抜け、
登り頂上付近まで上がる。

楽しむ余裕はない。

そこからの下りは、握力の勝負だった。

下りきった時には肩も腕もパンパン。
今日、使ってない筋肉はあるんだろうか。

先へ行こうとするとソウ君が
『ブナマさん、道大丈夫ですか?少し待ちましょう。』

そりゃそうか、この福良港あたりは迷いやすい。

ブナマの凄いところは、少し待てば、
必ず来る、って事だ。
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遅くても途中で投げないのは、本当に根性が要る。


福良港辺は住居も多く、立体的な町並みになっている。
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故に、やはり坂道も多い。
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峠はないが、もう本当に少しの登りも勘弁して欲しい。

やがて海岸線、西海岸ルートに出る。
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アキラさんは結局、先にゴールを目指す事になったので、
間に合えば岩屋のゴールで合流だ。


とにかく、次のコンビニまで。

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日は沈み始め、
淡路の空を赤く、
海を黒く染めてゆく。

風は、よりねっとり絡みつき、
やがて俺達の行く手を遮る壁となる。

5台編成のトレインは、
うねる向かい風の合間を抜けようと、

ただ必死でペダルを踏んだ。



続く




AWAZI PerfectRide 〜天空の風車編〜

南海岸線を走破し、
一息つきたい所だが、福良の街まで先を急ぐ。

ここで交差点。
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携帯で調べるアキラさんが、
「左はグネグネだからきっとキツいね、直進の方がまだマシかなぁ。」

しかも、
どっちから行っても最終的には合流する、そんな分かれ道。

あぁ、じゃぁ斜度の低そうな方から行きましょうよ。

誰が言うでもなく、そんな雰囲気だ。

いや、まて、なんかコレやばい。
160kmコースが楽そうな方のワケないやん!

『皆、ちょっと待って、調べさせて!』

すぐ携帯で確認すると、正解は…

『皆さんスイマセン、左っす…』


皆ほぼ無言で左折。
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別に俺が悪い訳じゃないが、
なんか申し訳ない気分になる。

キャンプ場の前まではスムーズに進んだが、
その先に突如、山。

足元の農道は、真っ直ぐ山まで伸び、
山頂へ向かってるようだ。

『・・・マジでか・・・』

絶句する胸中にこぼす。

意を決したかの様に、前田さんが進む。
引いてもらうつもりで駆け出したが、
無駄に脚を消費しただけで、

結局取り残される。

脇の痙攣は収まった様なので、
ハンドルを引いてみるが中々進まない。

刹那、背後から
『もっつさん、早く行ってくださいよ、抜きますよ』

おーおー、抜け抜け。

ここまで脚を貯め続けてたウエキュンが
グネグネと小さく車体をうねらせながら俺とソウ君を
抜いて行った。

斜度は水仙郷程ではないのだろうが、
長く続く峠道と、気が付けば眼科に広がる絶景に、

またしてもこんな高度まで上がって来てしまったのか、と
下りを想像し、軽い絶望を感じる。
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山中に突如現れる『ホテルニューアワジプラザ淡路島』。

って事は頂上か、
と一安心して、ホテルを周回する様に道なりに走ると、
さらに登りになって、

巨大な風車が現れる。
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考えてみれば、この風車が「巨大」なんじゃなくて、
今俺たちが風車に近寄り過ぎてる、って事か、と気がつき、

流石にこの先の降りを疑わなかったが、風車の前を過ぎると、
コーナーの向こうにはまた登り・・。

ソウ君と二人、「風車なんか頂上にあるモンやろーっ!!」と
叫びながらとにかく踏む。

すると、突然ソウ君が止まり、前輪の調子を見てる。

パンクか?と近寄ると、
『いや、サイコンが全く動かなくなって…』

まぁ、とにかく下ってから見よう、と再びサドルに跨り、
ヨイショ、とペダルを踏むと、

俺のサイコンも止まってる。

どうやら、風車の磁力が影響してるらしい。

関心しながら登りきり、下り。

なんとかDって漫画に出てきそうなつづら折のコーナーが続く。

ソウ君は下りが速く、いよいよ着いて行けなくなる。
そうはさせまいとペダルを回すとツッコミ過ぎて対向車線に膨らみ
肝を冷やす。

回転し続けるペダルが、
コーナー中に擦る心配をしながら車体を寝かせ、
何とか曲がりきり、ひいひい言いながら、

ようやく街が見えてきた。

ポロピン、と携帯の呼び出し音。
『俺の足じゃキツいんで逆から周りマース』
登り早々で折り返したとアキラさんからのメール。

ブナマもいっしょですか?
と返すが返答なし。

・・・って事は、

今、この山をブナマ独りで登ってるって事か・・・。

申し訳ない気持ちもあるが、

それより、
「固定初心者のブナマ」が独りであの坂を下るという不安が、

彼を連れて来た事自体を後悔させた。

程なくして、
ようやく福良。

例によって、ジョイポート南淡路で休憩をする。

前回、
ここで130kmコースになってる事に気がついたワケだが、
たかだか30kmが、こんな苦行だとは。


港側に自転車を置くと、
前より西日を強く感じた。

ブナマは、まだ来ない。


続く

のりだおれ 2012

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今年もアユム君たちの手により行われました、


エキスパートクラスでも十分スゲーっ!と感激しましたが、

エリートクラスの練習走行が始まると、
まずスピードが違うし、高さも違う。

もうこの時点で期待感高まります。
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決勝トーナメントの雰囲気は、
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楽しそうに走るライダーの表情に反してピリっとした空気感で、

でっかい車輪で宙を舞ったり、
固定ならではの特殊な動きに、

ピストやFIXEDをよく知らない人達も
思わず足を止めて見入ってました。
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去年もそうでしたが、
北海道から九州まで、全国の名立たるライダーが集まる
イベントを出来るアユム君たちの行動力と実力には、
本当に刺激を受けます。

そして何より、
商業的でなく、
好きでヤってる人達が集まって本当に楽しんでる感じは、

観てるだけでもヤッパリ面白いし楽しい。

こんなインディペンデントなイベントが、
もっと沢山増えたらなぁ、と

思うばかりです。








AWAZI PerfectRide 〜南淡路攻略編〜


『さ、ほな行きましょか。』

とサドルに跨る。
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休憩も昼食もとったし、

何より、
後は鳴門門をやっつけるだけだと言う思いが、
出発の足を軽くした。

そこからはほぼ直線と言って良い海岸線。

起伏はないが、コンクリートの地肌の様な路面と、
劣化したアスファルトで激しく振動し、
それに加えて延々と緩やかな向かい風。
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これが全く楽しくなく、
地味に体力を削っていた。

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ここはトレインを崩さずやり過ごす。
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とにかく、ピスト初心者のブナマがしっかり着いて来てるのが
すごい。
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しばらく同じ様な景色に飽きてきて、
むしろ少しなごみ始めた頃、
上り勾配になってくる。

まぁ、少しくらいの丘は覚悟していた、ところが。

また、

突如としてその勾配はグンと背を立てて、
その雰囲気は丘と言うより山に近い。

後、峠は鳴門門だけと思ってた気持ちは、
簡単に裏切られた。

既にアキラさんブナマ、ウエキュンの三人は降車して押し歩き出す。

俺含む残りの三人は、降りない。


先頭の俺を、またしてもホイホイっと、
抜き去る前田さん。

とてもついて行けない。
後ろからユックリ抜きかけてくるソウ君と並んだ。

彼は、小さく蛇行しながら走る事で、
なんとか登っている。

俺もそれを見習い、蛇行。

速度計を見ると、時速6km。

案の定、押し歩いてるウエキュンに追いつかれ、
彼は抜き様に「押した方が速いっすよ。」と言い放っていった。


速いとか楽とかじゃない、
もし、ここで妙なやり残しを作れば、また淡路に来なければ行けない。

『・・・冗談じゃない』

俺は、下ハンをガッチリ握り直し、うねうねと車体をうねらせながら登る。
押し歩く奴らを抜き、

ぼたぼたと落ちる汗を拭く事も叶わずに、
ペダルを踏む、と言うより、ハンドルを引く。

突然、
大円筋(背中の脇の裏の筋肉)がピキッと音を立てた気がした。
次の瞬間、それが激痛に変わる。
ハンドルを握る手を緩めそうになるが、あと少しで下りかもしれない、

そう信じ、引いて、引いて、

時にはソウ君と声を掛け合いながら登る。
何の打ち合わせもしてないが、
きっとソウ君も俺と同じ様なルールで今回走ってるんだろう。

「絶対完走」、だと。

まもなく下りが見え、
その高度に気がつく。

水仙郷より延々と急な登りが続いた。
足も背中ももう限界だ。

足を持っていかれない程度に、
坂を下る。

ピストでの下りは気を緩める事が出来ず、
緊張の連続だが、
それでもまだ下りがマシと思える程、ヒドイ峠だった。

下りきった交差点で一旦皆を待つ。
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『おいおい、こんな峠あるなんて聞いてないで〜』

皆口々に毒づいて、それでも笑う。

予想外だった事も含めて、本当に苦しかった。

押し歩いた連中も皆ぐったり。特にSPDで登山した
アキラさんは、常にアキレス腱がストレッチ状態だったとか・・。

そりゃ、彼も壊れます。
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流石に鳴門門も不安になる疲労具合。
しかし距離計を見ると、

走行距離75km。

なんと、まだ80kmにも届いていなかった。
傾きだした秋の日差しに初めて不安を感じたのはこの時だ。

ボトルの水を口に含んで吐き出して、
今度はガブガブ流し込む。

旅は、
ようやく折り返し地点に差し掛かったところだった。


続く

QNTZ- OX Shirt

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QNTZ- OX Shirt  (GRAY×WHITE)
¥6.300
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QNTZ- OX Shirt (WHITE×SID BLUE)
¥6.300

ワンポイントのオックスフォードのシャツが着たい一心で、
作ってみました。
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そもそも、オックスフォードと言う素材は、
通気性を重視した素材でどちらかと言えば春夏に適した素材ですが、

ラルフローレンやブルックスブラザーズといった、
オックスフォードシャツの代名詞的なブランドのおかげか、
オールシーズンで一般的な素材になった感があります。

とにかく、通気性に加えしっかりとした厚みと、
洗いざらしでデニムに合わせてざっくり着れる素材感が、
自転車乗りがちょっとシャレて出かけるには最適な気がします。

今回はグレーと白の二色展開で、
とにかく合わせ易いグレーがオススメですが、
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デニムに綺麗に合わせられるシドブルーの刺繍が入った
白も間違い無い感じです。
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自転車ももちろんですが、
オックスフォードシャツに風を孕んでステアする、
スケーターはカッコイイなぁ、と思います。

販売を開始します。











AWAZI PerfectRide 〜スキッド編〜

スキッドで坂を下るのは、
言ってみればピストの醍醐味。

しかし、つづら折りのコースとなれば
加減速を繰り返す事になるので、

程よく減速と言うワケにはいかない。

下りは上空から見るとこんな感じ。
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Aからスタートし、B辺りで海面に近づく。

待ってるフリも飽きたので、
「そろそろ行こうか」

とソウ君を促し、
走り出す。

前半、真っ直ぐスキッドして、
減速の感じを掴む。

切り返しを思えは、
最低でもコーナーの入口で30km前後まで速度を落とす。
気を許すと、
メータはーあっとゆうまに40kmぐらいすぐ超える勾配だ。

コーナーが迫る。

左右に後輪を振って、タイミングよくコーナーに入り、
旋回中は脚を回す。

リズムだと思った。

『みーぎ、ひーだり、はい、せんかーい』

と言った感じに右足で止め、クランクを半回転させ左足で止め、
そしてコーナーは回す。


しかし、
段々と傾斜はキツくなり、
コーナーの間隔も狭くなって、

『みぎっ!ひだりっ!曲がるっ!』

挙句には、

『みっ!ひだっ!まがっ、うわっ!』

スピードに着いて行けずに
直線を出来るだけ膝で止め様になると、

必然的に遅くなる。

登りで抜いたローディーにあっけなく抜かれる。

それでもスキッドを続けるが、
後半に行くほど傾斜がキツく、

手を抜いてスキップスキッドすると、
後輪が上がりすぎて前転しそうになり、
なんだか分からない汗がドッと吹き出した。

やがて、
この峠の最終コーナー。

真上からその全貌を見渡せるレイアウトで、
それはまるでサーキットの様な美しい複合ヘアピンカーブ
になっていた。

『・・・うっそ、もう無理無理。』

とは言え、出口は見えてるので、
そこからは坂に任せて
ノーブレーキでコーナーを駆け抜けた。



海面が顔を出し、
一気に平坦な道路に戻る。

安心した途端、脚がヤバイ。
後で聞いた話だが、
前田さんもここで脚をツッたらしい。

そこからまもなく、
恐怖の峠を抜けた俺には、
思わず毒づきたくなる様なフザけた看板が見えてくる。
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その下に、既にゆっくりしてる前田さん。

三人で悲壮な顔を見合わせて、
とりあえずドリンクを飲む。

奮発してビタミンウォーターを飲む。


・・・うまい。

そのうち残りの3人も悲壮感たっぷりで到着。

『12時前ですし、ここでメシしますか。』

「荒波定食」や、「地ダコ天定食」
などの看板が地元グルメっぽくてたまらん。

ヨッシャン来てたら大はしゃぎやったんちゃうかなぁ、

なんて思いながら、
定食をチマチマ食うのもメンドくさく感じる我々は、
「淡路カレー」を頂く。
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淡路の糖度の高い玉葱をルーに溶け込まし、
その割にしっかり辛い。

そこに、
玉ねぎブロックのフライと、
地蛸のフライが乗る。

最初にして最大の難関を超えた自分達には
相応の幸せとばかりにカレーをがっつく。

さぁ、

残りは鳴門門の峠だけやな、と、
でも実際、峠はもういいよ、
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なんて笑いながら話していた。


この時はまだ。



続く。




AWAZI PerfectRide 〜水仙郷登坂編〜

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幾つかのアップダウンを抜け、

海抜0mと言ってもいいほど、
海面が近い海岸沿いを走る。
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平坦で風が気持ちがよい。

そこから段々山側へ、少しずつ登りになり、
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ほどなく、 三叉路に着く。  
左はやや緩やかな登り。 右へ行けば、壁の様な登坂。  
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『間違えないよう、ちょっと調べましょう。』  

出来れば左であって欲しいと願いながら 携帯を触る。 

間髪いれずにアキラさんが、 

『あー、右で正解みたい(笑)』

 …右か…。 

 まぁ、覚悟はしていた。

なに、ナゾのパラダイスって。

まぁ、とにかく登る。

坂に差し掛かるなりコレは無理だと思いダンシング、
いわゆる立ちこぎで登り始める。

すぐに背後で、
「(自転車を)押して行きマース!」
と声が聞こえた。

ウエキュン、アキラさん、ブナマの三人は、
ここから押して歩き、

先頭は登りの速い前田さん、
で、
ソウ君、俺、と続く。

想像以上の斜度に、必死でハンドルを引いて
ペダルを踏み込む。

ふと前を見ると、ソウ君も苦しそうだ。

とにかく、脚を止めない。
一度止めてしまえば、
とてもそこから踏める気がしないからだ。

下ハンを強く握り引いて、それを取っ掛かりに
ペダルを前に踏み込む、そんな感じだ。

先頭の前田さんは、ホイホイと先に駆け上がり、
コーナーを2つ程曲がった頃には、
完全に見失っていた。
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ソウ君と二人、
『あの人、坂どんだけ速いねん!』
と軽く毒づいては、

コーナーを曲がる度に現れる上り坂に
軽い絶望を覚える。

幾つ目かのコーナーを曲がると
登坂が少しマシになり、

前にローディーが3人、軽ギヤで登ってるのが見えた。
『前田さん、抜いてったんやろうなぁ(笑)』

と、俺とソウ君もローディーを抜きにかかる。

この坂で、
こんな重ギア踏んでるバカは多分俺達ぐらいだろう。
右脇を抜いていく。

自分の馬鹿さ加減が面白くなって、苦しいが、少し笑えた。

海抜0から、この高さまで来たんやな、
R1006052.jpg
頂上付近で脚を止めた。

『ソウ君、後ろの連中、少し待ってみいへん?』

と言い訳して、脚を休める。

ここからは下り、普通なら休む必要の無いポイントだ。

だけど、出来る限り回復したいのは、


麓まで、ブレーキを使わずに降りたいと思ってたからだ。


つづら折のこの峠道を、
俺は「スキッド」だけで下りたい、

そう思っていた。








AWAZI PerfectRide 〜東海岸編〜

 東回りでこの道を走るのは
もう三回目。
R1006008.jpg
それでも岩屋から洲本市内までの35km程の道は、
何度走っても掛け値なしに気持ちがイイ。

巡航速度30k前後を保ちながら
一気に駆け抜け、洲本市に入る。
先頭は俺が引き、最後尾はウエキュンの編成。

最高の気候とロケーションで調子に乗る俺のペースは、
まだピストに乗りたてのブナマには少々酷かと思ったが、
意外にもしっかり着いてきていた。

逆にウエキュンが
「ま、マイペースで行きますんで気にせず先行ってください。」
と、シンドそう。

おいおいダラシないなぁ、と鼻で笑い、
最初の休憩ポイント、洲本のコンビニへ。
R1006021.jpg
ここで補給食を少し買い込み、
ヨウカンを噛じりながら
もう一度地図を確認する。

淡路島一周は、正確には155km。
そこに「道の駅うずしお」の往復を含むと、
160km前後になるって話だ。

とにかく、今回は重箱の隅をツツク様に、
きっちりと大回りして、後悔は残さない。

走り出してすぐ、
洲本温泉のゲートをくぐる。
R1006023.jpg
ここからは未体験ゾーン、前回の「やり残しの30km」だ。

アップダウンの数が増え、
道幅もグッと狭くなってくる。

片側通行規制でちょっと待たされたりするが、
精神的にも時間的にもまだ余裕がある。
R1006027.jpg
ここからは交通量も一気に減る。

そろそろ南あわじを走った人が皆口々に言う、
「モンキーパークの坂」
とやらが迫ってる筈なので、

見えてくる坂に一喜一憂しながら、
これがその坂?あれかな?

と、不安よりも少し楽しみな感じでいた。

この時はまだ。


最大傾斜12%、
全長6.7kmに及ぶ、

「立川水仙郷」の大坂を、

その目にするまでは。





AWAZI PerfectRide 〜旅立ち編〜


『無理にオモシロくしなくていいのに(笑)』

と、

意地悪く笑うアキラさんから
フェリーのチケットを受け取る。 

なんとかフェリー出港には間に合ったが、 
さすがに遅刻はバツが悪い。 

乗船すると、
秋晴れの空を真っ二つに割る明石海峡大橋が 
美しく、多少気が晴れてくる。  
R1005984.jpg
8:40、岩屋到着。 

そそくさと着替え、 皆、思い思いにセッティングを始める。  

アキラさんの赤いMAKINOは相変わらず重装備のハイテク仕様だが、 
今回はなんと、オシャレなカゴ付き! そこにバンドルバッグを搭載。 
R1005998.jpg
サドルにはボトルを二本装備し、
さしずめツアラーピストとでも言った感じだ。  ギア比2.9。

対して、
紺のMAKINOはウエキュン。 
R1006019.jpg
ロードハンドルにブラケットレバーを装備した
ガチの公道練習用ピスト仕様に、ドリンクホルダー。
前回の反省を踏まえ、ペットボトルにワンタッチキャップを
装備するそうな。
今回はキッチリ固定。ギア比は2.87。

前田さんのMAEDAはギア比2.82。
R1005995.jpg
相変わらずのNJSな仕様。

ソウ君のLOWBIKEは
登坂を意識してギア比をやや下げの2.81。

初参加のブナマ君のマシンは、
友人から譲り受けたSUBROSA。
R1005990.jpg
突貫でツーリング仕様に。
純正は36cの激太タイヤを28cのランドナーへ変更。
クランプ式のホルダーで、ボトルも装備しかなり本格的。
ギア比は軽めの2.625。まぁ、悪いギア比でもないが巡航は辛いかも。

俺のNAGASAWAはギア比2.77、
リアタイヤを25cから28cへ太く。
R1005992.jpg
スキッドの制動力を稼ぐ為の28cと、
慣れたギア比に変更した。

今回はこの、固定6台でライド。

TKC代表のテースケさんが残念ながら予定が合わず
今回は不参加で、

正直、
色んな意味で不安だったりする。


この感じだと、とりあえず俺が引っ張る感じやわな・・。


ロッカーに荷を詰め、
あご紐を締め直したら、ロータリーをゆっくり走り出す。

多々、不安はある。

でもそんなもんだろう、挑戦する時なんて。


いつになく晴れた淡路の青と緑のコントラストに飛び込む。
背中を押す風と興奮に、
気が付けば夢中で走り出していた。




続く

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