緩やかな登り、
程よい降り坂が続く、
洲本市までの道。
快適に流す。
突然、
後方から前田さんの声。
『アキラさんが来てませーんっ!』
振り返り暫く待つものの、
アキラさんの影すら見えない。
携帯を見るとメッセージが。
「足つった。先に行って。」
・・・。
少し悩んだが、ここは先に行かないと、
日のあるウチに帰れなくなるかもしれない。
アキラさんとはここでとりあえず別れ、
6人でまた走り出す。
洲本市に入り、
コンビニへ。
ドリンクを買おうと、
背中のジップポケットから小銭を出そうとするが、
上手く取り出せず、レジの女の子を待たせる。
『・・ごめんな、たいがいキモいよな(笑)』
と言ったところで、「いいえ」と一言、作り笑顔。
もちろん目は笑ってない。
ほんま、レーパンにメット姿でコンビニ行ける様になったら
いよいよホンモノです(笑)。
テースケさんが、
ここでガッツリ食ってるのを見て、
一応流動食を口にした。
補食、補水のタイミングを全然解ってない
ピスト乗りな我々は、
学ぶべき事がいっぱい。
お腹が空いてからでは遅いらしいので、
ついでにカロリーメイトとか噛じりながら、
ここからは走った事のない道へ。
いよいよ峠か、と、
ちょっとビビりながらも浮き足立つ面々。
コンビニを出て、すぐ広く大きな登りに入る。
そういえば海が見えないが、この山を超えた辺りから見えるのだろうか。
それでも初夏の緑が美しい綺麗な道に、
ここは軽く自由走行。
車通りも少なくなってきて、ますますテンションが上がる。
前回の100kmでは早くに切れたヨッシャンも、
最近の週末練習が効いてか、全然余裕そう。
後輩のウエキュンは、
メガネ橋の螺旋坂をギア比3.9の重ギアで登るトレーニングを
しているので、この先の大坂を楽しみにしてるようだ。
降りに入ると長いトンネル。
中は涼しくて気持ちがいい。
そこからこう配が少し急になってスピードが乗る。
スキッドで減速をかけるが脚が回り過ぎて、
思うようにはいかない。
そこからは平坦な道が続き、
交差点に出る度に皆で
「左に曲がっときゃ大丈夫。」
と適当に走る。
ちょっと登りが見えたので、
あれが例の峠?
かと思うと、
先頭のテースケさんが『もう福良らしいで』
と看板を指す。
気が付けば、
南あわじ温泉郷で足湯。
・・・ちょっと早すぎるやろ・・・。
モンキーパークとか無かったし・・・。
・・・と思ってると、
グーグルマップを片手にウエキュンが、
「もうこんなトコなんすね」と。
・・・完全に峠をショートカットしてるやん・・・。
このままじゃ、160は当然無理、130kmもヤバイ。
まず、イベント企画した俺が全く道を調べずにいた事が間違い。
(海沿いに走ってりゃ行けると思ってた。)
皆に謝りつつ、ここから南あわじを逆周りしてまた28号線で戻る
って案も出したが、200km近くなるのでそれは却下。
大坂に行けずに拗ねるウエキュン。
何の為に来たんやと少し暗くなる面々。
ブログでの言い訳を考える俺…。
そこはフランク度No1のヨッシャン、
『とりあえず大鳴門橋へいってみましょうよ!』
と快活に言ってくれ、
目的が新たに見えて気を取り直す。
まぁ、ここを走れば130kmは行けそうか、
なんてお気楽な気分で民家の間を緩く抜け、
看板が指す方へ曲がると、急に坂道。
しかも急勾配で曲がりくねる峠道。
クールなソウ君も思わず「えっ、ちょっと待って、」
と声を漏らす。
先頭は当然テースケさん。
次に前田さん、ウエキュンと続いたので、
ウエキュンの背後から、
『トレーニングの成果試しといで、遠慮せんとガンガン前行きぃな!』
と、俺は息絶え絶えに叫んだが、
全然前に行く様子がない。
少しの加速も殺したくない俺は気づけばウエキュンに並び、
顔を覗くと必死の形相。
仕方なく抜こうとする俺に、彼は無理にニヤっと一言。
『・・・中々ヤルじゃないっすか。』
おいおい、口ほどにもねーな、オメーは(笑)。
さて、先頭の二人に追いつこうとするが、
コーナーの度に、登り坂の度に離されて行く。
テースケさんはやはり速い
(それでもロードの利を殺し、常にアウターギアで走ってくれてたそうです)。
しかし、
同じ固定の前田さんはそのテースケさんにピッタリ着いて行く。
前からなんとなく登り速いと思ってたけど、
本格的に前田さんのクライマー体質が立証された。
降りで距離を詰めてもすぐ離される。
道の駅手前の最後の大坂、すっかり空は晴れ、
強い日差しに顔から体から汗が落ちまくり、
下を向くとサングラスに汗溜まりが出来る。
汚れたレンズ、霞む視界の中、その先に
強烈な下り坂が待っていた。
脚が回る。回される。
2.8が軽すぎる。
速度計は50kmを超え始め、
スキッドを掛けると、
汗でヌルヌルのハンドルから手が滑り落ちそうになり、
慌てて握り直す。
冷や汗だかなんだか解らない汗がドッと吹き出し、
道の駅「うずしお」で既にメットも脱いでくつろぐ二人を見つけ、
実力差にやや凹む。
まぁとにかく、一休み。
そして、ここで500円玉を落とすヨッシャン(笑)…。
いやいや、サイクリング中の500円はデカイ。
しかし、
ここから見る景色はそこまでの苦を苦と思わせない
絶景。
さて、
まだ早いので、下ってから昼飯にする事に。
しかし、
強烈な登りも辛いが、
登ってきたあの坂全てが下りになる。
そっちの方が圧倒的に怖い。
ビビる心境を読み取られまいと
汚れの落ち切らないサングラスで表情を隠し、
俺たちは再び走り出した。
ゴールまで、後68kmの地点だった。
続く