さぬきシクロの旅 観光後編


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肺の調子が多少マシになった頃に、

ヨッシャンと二人でうどんをもらいに行く事に。

「さぬきシクロ」ってだけに、
参加賞でうどんを頂け、
さらにうどん接待所に骨付き鳥屋も併設していて、
そこの割引券ももらえる。
こういうケータリング的なの、イベントっぽくてイイです。

レース後に食ううどんは、昨日食ったうどんとは
また違う意味で格別、意外とつるっと食べてしまった。

地鶏は、
ヨッシャンがお気に入りの香川のお勧め店があるそうなので、
ここでは我慢して、
C1レースを観戦。

「・・・すげー、あの階段を乗ったまま走りきってる・・・」

いったいどうやって登るんだろうか。
フィジカルも違うだろうけど、
自転車のスキルがまるで違う。

気が付けば、
数年前はあんなに違和感があった
ピッチピチのサイクリングジャージや、メット、
ロードのスタイルが、
普通を通り越して今やカッコよく映っていた。

本格的に腹も減ってきたので、
自転車を片付け、例のお勧め地鶏骨付き鳥『一鶴』本店へ。
(大阪にも数店舗あるらしいので鳥好きの方は是非。)

柔らかくボリュームのある「ひな鳥」と、
歯ごたえがあって、
ギュッと締まった肉に旨みが染み込んだ「親鳥」を
食べ比べ、ビールで流し込む。
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さて、やはり疲れを抜ききるには甘い物も食いたいので、
またしてもぐるナビ検索。

フルーツ屋がやってるデザート屋へ行く事に。
ゴールデンタワーのふもとにある「PONPON」は大人気で、
小一時間待たされる。

その間に横のフルーツ屋に行くが、
美味そうで、珍しいフルーツも沢山。
ヨッシャンは文旦(でっかい八朔みたいなの)を買って、

その後デザート屋で彼が頼んだのは
文旦パフェ(笑)。
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確かに疲れが取れそうかも・・。


日も暮れはじめ、

前田さんは大阪へ向けてハンドルを切る。

起きてなきゃ申し訳ないと思いながらも、
瞼の重さに逆らえない。

薄暗い夕暮れの高速、

車内にはオーディオの音と誰かの寝息。

浅い眠りの中で旅を振り返り、
その幸福感に酔う。

気の置けない仲間と気の置けない旅、
そこに自分達のレースなんか入れば、
一体感は圧倒的なんだろう・・。

車の減速に気付き目を開けると、
淡路島のサービスエリア。
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スタバでコーヒーを飲みながら、
ヨッシャンとレース中の話をする。

俺達は、きっと同じ事を何度も言って、
同じトコで何度も笑って、悔しがって、

二言目には「次こそは、次こそは」って、
そしてまた笑っている。


シクロクロスをやってよかった。

その向こうに何か目的がある訳じゃないけど、

もし何か手に入るのだとしたら、

それはもう既に、ココにあるんじゃないだろうか。

そう思える程の充実感と幸福感、
それを共有できる仲間。


何も特別な話じゃない。


自転車が紡ぎ続ける幸福は、
きっと誰にでもあるはずだ。






















さぬきシクロの旅 レース編その2

額をつたう汗が、
ステムの上で弾けた。

追いかけていたチェレステは
アスファルトの向こうへ消え、

今まさに、
背後からきていたMTBにも
追い抜かれた。

ギアが軽すぎる。

そう思うより早く、
背後から同じジャージの二人組がトレイン
(複数台連なり空気抵抗を減らす走法)を組んで
俺を抜かし始める。

考えてる場合じゃない、
そのトレインにタダ乗りし、
ちぎられないように必死で回す。

トレインは先のMTBを追い越した。

俺はハムスターみたくクルクル回し
ながら、それほど順位を落とさず
二週目に入る。


坂を登りきりガバッと体を起こし、
大きく息を吸い込む。
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ヤバい、いきなり足を使い過ぎたかも
知れない。軽い酸欠だ。

まだ四周もあるのに、
ムキになりすぎたんじゃないのか?
小さな後悔を抱いて階段を駆け上がる。

下りのワインディング、
うっかり突っ込み過ぎ開いたインを
後ろのMTB に刺された。

その時やっと気が付いたのは、

ギア比や車体の差が最も出にくいのは、
ここのダウンヒルだけだって事だ。

そこで抜かれる。
テクニックの無さを改めて呪う。

…言い訳ばっかりして、
何をやってるんだ、俺は。

ひとりごちて、ここでは重すぎるギアを
踏み込んで坂を登る。

二週目のアスファルトでは、
バスバスと抜かれ、

三周目。

長い階段を登りきった俺の目は
酸欠でかすみ、

下りのワインディングで判断力を欠いて
オーバースピードでコーナーに突っ込んでしまった。

ヤバい、崖から落ちる!

反射的に後ブレーキも握りしめる。

するとリアに加重がかかり、
後輪は10円玉が弧を書いて転がる様に
コーナーを曲がった。

…リアブレーキ、役にたったで、ヒトシ。

心中に礼を呟き、閃きに気力を取り戻す。
何か掴めた気がした。

芝生のコーナーでは前田夫妻(妻)が
行く先々に現れては応援してくれるので、
苦笑しながら走る。
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やはり応援はありがたい。

四周目を走る頃には階段を登る足は重く、
もう走ってるとは言えなかった。

『シングル〜、もっとしっかり自転車を体にくっつけていけー!』

どこかのチームの人だろうか、
技術的な応援は、「あきらめるな」、
と言う言葉の様に聞こえた。

ワインディングを抜けた頃には、
もう前後に気配を感じなかった。
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もしかして、

…最下位か?


五周目は走らせてもらえないかもな、

そんな弱気が脳裏を過る。

もしここで終了しても誰も責めはしないだろうし、
得意の言い訳だってある。

でもその後、俺は自分を許すまでに
どれ程時間がかかるだろうか。

冗談じゃない、

ゾッとして、疲弊する脚に鞭打つ。
まだ走りきっちゃいないだろう、俺は。

なんとか最終回に間にあわせた。

上がらない脚を気力で引き上げ階段を登る。
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頂上の砂利でコケそうになり、
慌ててサブローザにしがみつくと、
前に混走していた女子グループのライダーが、
同じ様にふらふらとダウンヒルに向かおとしていた。

追い越し様にねぎらいの一声でも掛けようとして、
やめる。

張り詰めた空気に水を差すようで、
何より、人をかまってる余裕なんか俺にはないはずだ。

登りで後輪がスタックして土を削るが、
踏み込む。

下りでフロントが流れても、
脚が回り過ぎても、

ただ踏む。

疲弊して朦朧としながらも、
実際、
俺は楽しいと感じていた。

ギアを巧みに操作し、
同じ負荷で走る人達を凄いと思う。

でも、
感覚が研ぎ澄まされて行くような一体感、
余計な事を考えずに踏むしかないシングルが、

やはり俺は好きなんだと気付く。

ギアが欲しいなんて、ただの言い訳で、
あったところで俺に上手く使えるワケがない。
自転車はそんなに甘くないだろう。

アスファルトのストレート。

自分の呼吸とタイヤが転がる音だけが
鮮明に響く。

前には誰も居ない。でも関係ない。

削ぎ落とす様にペダルを回し、

ゴール前、ヒルクライム。

ハンドルを引き込み、
サドルから立ち上がって思い切り廻しだす。

肺の奥が軋む。

カーブの向こう、

聞き覚えのある声、
喚声が静寂を破る。

ゴールライン、『52番!』とゼッケンを呼ぶ声。
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…なんとか、
自分を嫌いにならずに済んだらしい。

脚が痙攣してSPDが上手く外せずコケそうになりながら、
地べたに座りこむ。

駆け付けてくれる皆の笑顔。
それに応えられる事が嬉しい。


結果、21位。

後ろにまだ10台強はいたようで、
最下位は免れたようだ。

後れて、ヨッシャンもゴール。

ゲフゲフとシクロ咳を吐きながら、
『肺いてーっ、血の味する〜』と、笑いあう。
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何も言い訳する事はない。

束の間の充足感に今は浸りたい、と願った。

さぬきシクロの旅 レース編その1


俺は絶望していた。
 
山の一部を削り出し作られた公園をフルに使いきったコースは
それだけでは飽きたらず、

公園外周の舗装された車道を
一番長いバックストレートに設定していたからだ。
 
仮に誰かを抜いたとしても、
シングルの俺はここで全て帳消しにされる。
 

そんな俺に妻が言う。
 
『シングルの方がいいやん、負けた言い訳出来るし。』
 
確かにそうだが、
ギア比2.1でこのストレートはあんまりだ。
本当に、今回は最下位も覚悟しなければならない。 


とにかく、試走。

しっかり試走して攻略法を探る、
この作業がいつも楽しい。
 
一周した感想は、

アップダウンが激しく、
 
長い階段、
ダートのつづら折りダウンヒル、
ラクダのコブみたいなアップダウン、
斜面、

そしてアスファルトのストレートと、
ゴール前のヒルクライム。

面白いコースと言えばそうだが、
シングルには手厳しいコースだ。
 
スタートまで、せめて車両の点検。
セッティングは大阪を出る前日に、 
オーシャンサイクルの二人がしてくれていた。

振れ取りついでにヒトシが、
使わないので錆びて固まったリアブレーキを、
わざわざ動く様にしてくれていた。 
 
使わないにしても気持ちが嬉しいし、
振れ取りしてくれたイクジにも、
恥じない程度には走らないとな、 
 
なんて考えながら、
スタートラインに並ぶ。
 
遠慮したワケじゃないが三列目。
そしてまた周回数は5周。
 
どうせシングルには不利なコース、
一周目で出来るだけ前に出る作戦だ。
 
スタート前、

BGMがデカくなり、
4つ打ちのキックが心音にダブる。

やがて、  

空砲が耳を打った。

レースが始まる。
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…離されるものか、

ここで離されたらシングルじゃ
多分二度と追いつけない。 
 
スタートしてスグのヒルクライム、 
ギア比にそれほど不利はないはずだ。 
 

サブローザは進み、血が熱くなる。
興奮が俺に語りかける。
 
負ける為にシングルで走ってるんじゃないだろう。
どこまでシングルで走れるか、
 
俺は自転車をピストしか知らないんだ。
 

一つ目の障害、小さく急な階段。

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ココで先頭グループもダンゴになってる。
チャリを担ぎ上げ、1番内側を登る。
 
乗って、すぐ砂利ゾーン。
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ここは後傾して踏む。
前回の堺戦での砂場の要領だ。
 
そこからが、まるで登山の様な長い階段。
先頭グループも途中で降りて自転車を押している。 
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ココは端から担いで駆け上がる。
 
頂上は砂利で足場が悪く、
そこから急激なダウンヒル。
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なかなかの勾配でつづら折り、
前ブレーキをフルに使って降りる。
 
底まで降りたら、
ヒルクライムが待つ。
ダンシング(立ち漕ぎ)でハンドルが太ももに当たる程の急坂。
思いっきりハンドルを引き、踏まなければ、このギア比でも進まない。 
 
登り切る手前で、後ろのライダーが

『ええっ?!シングル?!…えらく重いギアで踏んでると思ったら…』

と声が聞こえたが、
シンドくて声が出せず、自嘲気味に笑って返した。

流石にこの日はシングルで挑むバカは俺しかおらず、
その後もいつも以上に声援をいただけた。
 
しかし、
一緒に走ってる人はシングルにだけは負けまい、と思ってるだろう。
 
登りきった山を次はなだらかに降り、
クリッピングポイントにコンクリの溝があるイヤラシイヘアピンを曲がると、
 
芝生ゾーン。

リアは多少滑るが、芝生って事で怖さはあまり無い。

しかし、ラクダのコブがその先に待ち構え、
上から見るとほぼ垂直に落ちるコブを降り、登り、また降りる。
やって見るとコレが楽しい。
 
さっき話し掛けてくれたチェレステカラーのライダーは
二つ前を走っているが、
それ程距離は開いてない。
 

目の高さに来る枝をくぐり、
シケイン。
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いつもより少し低いか、
ワリと楽に越え、
 
何とか チェレステに食らいついたが、
俺の少し後ろに一台、気配を感じる。 
 
コンクリートのヘアピンを回ると、
下ってすぐ一般道。
 
いよいよ、
アスファルトのバックストレート、
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背後の息づかいが迫る。

ギア比の事は十分承知、
わかっていても抜かれたくない。

ブラケットを握りなおし、俺はペダルを踏み込んだ。


(続く)

さぬきシクロの旅 観光編

土曜、朝5時。

支度する物音を布団の中で聞いていた俺は
妻の声で飛び起き、慌てて準備を始める。

前田さんの車を極力汚さない為に輪行袋に
入れられたサブローザを積み込み、

朝6時、大阪を離れる。

関西シクロが協力する香川県のシクロクロス、
『さぬきシクロ』に出場する為だが、

せっかく香川まで行くので
ツアーを計画。


前日から香川入りして初日は観光、
二日目はレース、といった感じだ。

まずは、

KINFOLKの代理店でもある神戸の
お洒落自転車ショップ、
Nice!your bike(N!YB ) へ。
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N!YB代表のヨッシゃんも、さぬきシクロにエントリー。
ツアーに同行してもらう事に。

前田夫妻とウチの妻合わせ、
五人での旅になる。

N!YBには徹夜明けの杉さんが仕事をしていて、
御自身のスケートブランドbluthのアパレルを見せてくれた。

『カッコいい…』

早朝からパーカーを衝動買いしてしまった。

杉さんに見送られながら出発、
俺達は海峡を渡る。
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香川県に入り、まずは『山越うどん』へ。
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「かまたま」にサクサクのチクワ天を乗せる。
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ふわっとして腰のある面が極上で、
早朝の行列も納得の旨さ。

次は「宮武うどん」。
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さぬきうどんの元祖と言える店で、
『ひやあつ』や『あつあつ』
と言った、さぬき独特の注文方はここから
生まれたらしい。

ピストで言えば『キングスピード』的な
存在か。

しかし数年前に店主が体力の限界を理由に閉店。
その後、新店主を迎え華々しく復活、
と言った経緯を持つここのうどんは、

当然ひやあつで頂く。
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冷たく締めた麺は粘りある腰を持ち、
それを温かい汁ですする。

かみごたえのある麺と酸味の効いた汁が
絶妙に旨く、まさにさぬきって感じだ。

最後は「がもううどん」。

これぞさぬきうどん、と言われるほどの
名店で、昼前の時間帯も相まって長蛇の列。

ようやく店内に入り、湯切りされどんぶりに入った麺は、
キラキラと輝いていかにも美味そう。
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食い方はおすすめのキツネうどん。

出汁にあげの甘味が染みだし、
喉ごしの良いツルツルの麺も相まって溶ける様な旨さ。

『どの店も個性があって旨いし楽しい』

とは、ヨッシゃんの言葉だ。

この辺で一息、コーヒーでも飲みに行こう、
とスマホでそれぞれ店を探す。

ヨッシゃんが探した店は憧れのお洒落カフェ的な触れ込みなのに、
写真は古びた港の倉庫。

面白そうなので、
ソコへ行くと、外見は確かに倉庫、
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だが中は広く居心地良いお洒落カフェに。
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周辺の町並みも実にお洒落かつクリエイティブで、
高松の熱を感じつつ、

ソコから直ぐそばにある競輪場へ。
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ギリギリ2レース観る事が出来た。

最終レースは逃げ切ろうとした先頭を、
後方の二台が一度追い越したにも関わらず、
その二台をまたまくり返して、ゴール!
話題の深谷選手の走りだった。

むちゃくちゃ速いし、大迫力で、
ヨッシゃんは700円の勝利!

日が暮れて、
塩入温泉ログハウスを目指す。

湯船に浸かり、ぬるっとした湯を堪能して
ると、
ヨッシゃんが露天風呂に向かった。
と思いきやすぐ出てきたので、
混んでるのかと思いながら俺も外へ出ると、

ただのテラスで、全裸のおじさんが1人涼んでるだけ。

やりきれないが、お湯質は最高だった。

買い込んだ具材と山越うどんで買った麺と
出汁で鍋。
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さんざん遊んで明日がレースなのを忘れそうだが、
初参戦のヨッシゃんの緊張感で、

我にかえる。

ネットに明日の情報が上がっている。
コースはつづら折りとロングストレートがはっきり別れてるので、
速度差がありそうだ。

そして俺もヨッシゃんもC3B。
人数は若干少なく33名くらいか。

目標は20位以内。

何度かのレース経験で俺が知った
一番大切な事、

遠慮せず前に出る。

20位?

セコい事言わずに

明日は勝ちにいくんだ。


EVA-BIKE(FUJI CLASSIC) 完成

EVA-BIKE(FUJI CLASSIC)2012/01

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Spec

Frame and Fork : FUJI CLASSIC
B.B : SINZ
Headset :Ritchey 
Stem :Spank 1 Timer Stem 
Handle : TIOGA R60
Rim : F.R/VELOCITY DEEP-V
Hub : F.R/HALO TRACKHUB PURPLE
Spoke:Paint spoke 
Tire : KENDA KONTENDER 700×26
Cranks :SINZ Expert Square Taper Crank 160mm
Chainring : SINZ Expert Chainring Black
Cog : GRUNGE 18T
Saddle : GRUNGE TURBIN SADDLE
Seat Post : FUJI
Pedals : wellgo B109P
Toe clip: HoldFast

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ニップルはマニキュアにて塗装。

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構想製作期間ちょうど1年てとこでしょうか。
やっととりあえず納得出来る形になったようです。

次回、製作後記。



和歌山クロスファイア

 一年前。
 
男二人でスタバに佇み、
 
『モッサンなー、抜くの好きならコーナーでの抜き方教えようか?
まず前を走るヤツの…で、それが…』 
 
…クロスボンバーだったかなんだったか、

コーナーでの追い抜きテクニック。
 
次のシクロのレースに向けて
Ino3が教えてくれた高等テクニックだが
ひどく危険に思え、

ビビる心中を悟られない様、
さも余裕といった感じで
コーヒーを啜ってみせた。
 
 
 
今年の初バンク走行会は、
1月の凍てつく寒風の中行われ、
 
俺は前を走るフジタさんの尻にかじりつく様に走っていた。
 
練習走行前、

トレインを組んで練習してみよう、って話になり、
レコードライン(一番内側の最短ライン)から、
ずいぶん上(外側)を走っていたが、
 
何周かしたあたりでバンクの旋回中、
フジタさんの尻が突然
右に揺れたかと思うと、
 
一瞬で視界左端に消えた。
 
高い位置から一気に左下へ降下する様に
レコードラインへ入って行く。
 
バカのひとつ覚えみたいに
レコードラインばっかり走っていた俺には、
こんな走り方があるのかと、
 
新鮮でカッコよく見えた。
  
 
そして、 
最後の競輪レース。
 
レース前は、
いつもの牽制トーク会。
 
『いやー、今日調子悪いしゆっくり行きますわー。』
『こんなんで怪我でもしたらバカらしいからな〜笑』
『後ろからゆっくり着いてくわー。』
 
そんな会話を遮るように空砲が鳴り、
レーススタート。
 
先導車に続いて走り始める。
 
無論、
 
調子悪気な人は居ないし、
怪我の心配してるフシもなければ、
ゆっくり着いてくる奴などいない。
 
皆、本気だ。 
 
まったく大人げねぇなぁ、
 
と俺は内心苦笑しながら、
ソウ君の後ろ、
三番手に張りついた。
 
作戦は、
長身のフジタさんとソウ君を風避けに
して、ゴールスプリントで捲る(追い抜く)戦法。
 
今日のタイムトライアルで一番速かったフジタさんは、
先頭で逃げきる作戦のようだ。
 
ジャンが鳴り、前の二台の速度が上がる。
着いて行くのもやっとだが、
車群から俺を含めた三台が飛び出す形になった。
 
 
そして最終コーナー。
 
二番手のソウ君が、
先頭のフジタさんに仕掛け、
 
並んだ。
 
ココだっ、
と俺は右から二台を抜こうすると、
フジタさんが車体を右に振り牽制、
俺はバンクの高い外のラインへ弾かれる格好に。
 
フジタさんは巧い、が、感心する間もない。
 
もう外からは抜けない。
 
ふと、
 
練習走行中のフジタさんの軌道を
思い出した。
 
正確には、
思い出す前にバンドルを切っていたと思う。
 
… 

Ino3が続ける。
 
『モッサンなー、抜くの好きなら、アウト、イン、アウトで走る
前のチャリをアウト、アウト、インで内側に入れん様に、
中から抜き去んねん、それが…』
 
 
Ino3が言ってたのは平地でのコーナーの話で、
バンクにはアウトインアウトとかの概念は無い。
 
が、インに斬り込むこのライン取りは、
フジタさんの見せたイメージとダブった。 
 
 
俺はバンクの高い位置から左に急バンドルを切り、
一気にレコードラインへ降りて行く。
 
それは、
 
すり鉢の表面を遠心力でぐるぐる回り降りる鉄球を、
鉢の斜面をまっすぐ底に向かって滑らせた鉄球で追い越す事に似ていた。
(写真青ラインがモッツ)
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想像を上回る速度が出て、
思わず赤板(レコードラインの内側。走ってはいけない)
に入りそうになる車体を必死でコントロールする。
 
気が付けば、
二台は俺の右に並んでいた。
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二人は苦悶の表情でゴールスプリントを
もがきだす。 
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ソウ君が咆える。
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が、

俺は二人の背後で脚をタメ続け、
尚且つ、
バンクの急坂で加速がついてる。

わるいが、
 
今の俺は速さの次元が違う。
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脳の真ん中が痺れる様な快感に酔う。
 
確か、
『それが、クロスファイヤーや』
 
Ino3 はそう言っていた。
 
ゴールラインを超え、
歓声。
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久し振りの一等賞。
 
惰性でバンクを走り息を整えながら、
 
しかし、
フジタさんから教わった作戦でフジタさんを抜くとは、
なんたる恩知らず。
 
いや、むしろ恩返しか、
 
 
などと考えながら、
皆の元へ。
 
悔しがったり笑いあったり、
いい大人が子供みたいにはしゃぐ。
 
ま、結論から言えば、
偶然勝てたに等しいのだが。
 
それでもやっぱ気持ちいい。
 
そしてそこからの、 
 
 
ビール。
言うまでもなく最高。
P1170192.jpg 
しかも、ソウ君、
俺の大好きなヒューガルデンを出してくれたり、
 
本来お休みのお店を、
特別に開けてくれて、
貸し切り状態で打ち上げ。
健闘を讃えあう。 
 
生がきにキャビア、本格フレンチと美味い酒。
P1170197.jpg
P1170188.jpg
美人シェフの彼女、恭子さんともゆっくり話せて、
夕方から飲み始めたのに、あっつー間に終電。 
 
幸福感の計測器があれば、
針は間違いなく振り切ってただろう。


まったくもって、
次のバンク、と言うか、

またバンクのミンナに会うのが楽しみだ。


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