仕事と自転車


「…またかよ」


つい、僕は声に出してしまった。

他に誰もいない、葛城山の山中で。


何度も繰り返すつづら折りに、

さっきココを通ったのではないかという錯覚にすら陥った。


くだんのKINFOLK オーナーズミーティング、最後のチェックライドをしてる最中で、葛城山へ入るなり僕はソウ君を出し抜いて加速、

タイム更新を狙ったその30分後の話だ。


梅雨のうだる暑さと繰り返すコーナー、

集中は薄れ、ぼうっと仕事の事など考えてしまう。


先日、辞令があり、

僕は昇進、そして後輩を

今の僕のポジションへ昇進させる、という話。


その後輩は過去、このブログにママチャリ魔改造の件で何度か登場してる旧知の中だけど性格が違い過ぎて、

僕の仕事をとりあえずトレースする事にすら不満気だ。


二言目にはそれなら辞めると。


辞めたいならヤメろ。

代わりはいるさ。


僕はそんな苛立ちに任せてペダルを押し込んだ。


確かこの先は、

少し平坦で次のコーナーで一旦登りきるハズだ。


そのコーナーを曲がって軽い絶望。

また同じつづら折りが続く。


マジかよ、こんなキツかったっけ…


それでも、途中何台か抜く。

抜くと一瞬、

自分が速いような気持ちになるが、

そんなワケはない。

自分より速い人は確実に前を走ってるワケで。


あぁ、そうか、

アイツは追い付いてきたんだな。


特に理屈もなく、

僕はそう思った。


先日、彼に自転車の整備でネジをナメたって話をすると、

「モッツさんは機械弄りのセンスがないんでしょうね笑」なんて、リッターバイクのエンジンも自宅でバラしてしまう機械好きの彼は笑っていた。


僕は、サドルから尻を持ち上げた。


心拍は180を超えている。


どう考えても機械弄りじゃ彼に敵うと

思えない。


僕は何を思い上がっていたのか。


たまたま、僕が先を走り、

ラインを作っていただけの話。


得手不得手が違えば、

当然ラインは変わる。


引き継ぐ事は、

絞ればたったひとつ。


ゴールラインの位置を教える事。


他にはない。


葛城山の登頂ルートは、

一旦ゴールと見せかけてからの最後の

アップダウンがキツい。


その、最後の坂で穏やかにツーリングしてるロードバイクを数台抜いた。


最後の坂、僕は速度を落とさない。

そのまま登り切り、

山頂が見える。

そして、

僕は何故か拳を上げていた。



…気分がいい‼



うだる梅雨の空気を切り裂いて、

山林から真っ青な空が僕を睨んだ。


いつの間にかショウモないプライドに

囚われていた僕を、

気が付けば追い越していたようだ。


ソウ君がくれたレモンケーキを齧ると、みるみる体力が回復する。

大切な事はいつも、

自転車が教えてくれる。


いや、きっと自分を思い知らせて

くれるならなんでも良いのだろうけれど、


教えてくれるのだ。


矮小な自分を。


それでも前に進める、


自分を。










コメント
スキッドのやり方を検索してココに来ました。
久しぶりにカッコいい読み物に出会えた。
羨ましいなあ、文才のある方。
  • ryojiryoji34
  • 2019/05/25 11:19 AM
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