フルオーダーバイク

その日、
大阪は台風の影響で雨続き、

納車の日だというのに、まったくツイてないな、
と独りごちて、僕は8to8に向かっていた。

先日の夜、
『本日ここまで、明日には跨がれる様にしときます』と、

パーツを預け、1週間もしないウチに
ヤギさんから完成前の自転車の写真とメッセージが送られてきた。

仕事の早さに感心しながら、
その写真をクロームキャストでテレビ画面に飛ばし、大写しにして酒を飲んでみたが、やはり大変すすんでしまった。

その写真を脳内で反芻しながら、
乾き出したアスファルトを歩く。

考えてみれば、
カスタムオーダー、と言いながらも
全てお任せで完成したんだな、と
フと気付いた。

ビルダーの福田さん、塗装のアゼミさん、そして、組み付けはヤギさんに。

その道のプロに、自分の為だけの、
オリジナルを手掛けてもらえる。

なんと言う贅沢だろう!

僕はその対価を払うだけで、
この世に一台の自転車を、熟練の職人が3人掛かりで誕生させてくれるのだ。

8to8の扉を開き、
興奮を抑えられない僕を、

『モッツさん、おまたせ、出来てるよ』

と、ヤギさんはいつもの笑顔で迎えてくれた。

その奥に、
完成したKINFOLKが佇む。


ヤギさんに言われるままに跨ると、
それは新しい物に触れると言うより、
ずっと乗り込んで来たサドルに戻ってきた様な感動。

ハンドル位置はCXに比べ随分下がってる筈なのに、しっくりくる。

サドルの高さもキッチリ調整され、
膝の感覚もCXと全く同じだ。

なるほどこれがオーダーメイド…、
と、ペダルを踏み出して、

想像を超えるその軽さに驚き、
何度もギアを確かめた。

8to8は坂の途中にあるのだけど、
登りをトップギアで、楽に登れてしまう。
53×13というと、ギア比、
実に4.08。

正直自分では、下り坂でないととても使えないと思っていたギアで、登坂出来てるだけでも考えられないし、
なんならまだまだ踏めそうな予感に、

『…これはさすがに、調子に乗る…』と心中に呟いた。

大阪はその後数日悪天候だったけど、

その隙の僅かな晴れ間を突いて、
いつもの練習コースへ。

台風の影響か、とんでもない強風の悪環境下。

それでも、踏み出しが軽い。
つま先に入力した力は、
アスファルトを直に蹴り出した感覚で
車体を前へ進める。

シャマル・ミレ(車輪)は自ら回転しようとしているかの様で、

もっと重いギアを、と乗り手を誘う。

低くなったBBの影響か、
ビタリと路面に張り付く様に加速して、

いや、とは言えシフトミスを頻発させたり、コーナーのラインをウッカリ外しながら、

それでも自己ベストを更新して、
心拍数も同じくいつもより高くなっていた。

これが、
ビスポークフレーム…

フルオーダーメイド、
やはり、予想通り、
心に身体に、ピッタリ寄り添う様に
仕上がってきた。

テストライドを終え
乾いた布でフレームを拭きながら、

高すぎた自分の希望に自嘲しつつ、
それがカタチになって目の前にある
奇跡に、

僕はまた、今夜もワインを注ぐのだ。






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