コンポーネントの選択

中学生の頃。

『なぁっ!お前リーバイス好きなんやろ?
俺も501履いてるで!』と、

突然話し掛けてきた同級生の彼が
股がるママチャリは、

フロント20インチ、
リアが27インチのホイールで、
前ブレーキはキャリパーが届かずリアはフットブレーキ(足元にペグがあって、踏むとワイヤーが引っ張られてドラムブレーキが掛かる)という、

拾ったパーツで組んだみたいな
イカレた仕様。

ソイツに乗って、
商店街を歩くカップルに誰彼なく嫉妬し、全力で背後から突進して、

『死ねァッ!』

と叫びながら抜き去って行くワリに
ケンカは弱いので、
通常の三倍の逃げ足で駆け抜ける
パンクなヤツだった。

そんな彼の部屋には、
VOXのギターアンプ、
リッケンバッカーに、
ノートンやトライアンフと言った、
バイクの切り抜き写真。

今思えば、
筋金入りのロックンローラー
だったのかもしれない。

そんな彼とバンドを組み、
その10年後、
バンドもこれからって時に、
彼は事故に巻き込まれて、
短い人生に幕を降ろした。

当然僕達は、
『お前が死んでどーすんねーん!』
と泣き叫んだワケだけれど(笑)、

気付けばあれから、
もう20年近く時が経とうとしている。

『もし彼が生きていたら今頃は』

といった想像は、

20年という長い月日は
人を別人の様に変えるには
十分過ぎるという事を
知ってしまった僕らにとって、

余りにも不毛で、

今はただ、
彼の短すぎた人生の意味を探すだけだ。

それゆえか、
僕はいつの間にか、
普遍的なモノに憧れているのかもしれない。

「CAMPAGNOLO RECORD 10SPEED」

今度組むロードバイクの
コンポーネント。
10年ほど前の代物だ。

特に気に入ってるのはシフター、
ブラケットのデザイン。

'97年から'07年まで、変わる事なく、
同社のフラッグシップモデル、RECORDに採用されたデザイン。

ケレン味無くバランスの取れたシルエットは、普遍的な美すら感じさせる。

現在の11sがハイテクスニーカーの様な先進的デザインだとすると、
10sはチャックテイラー等に代表される、ローテクスニーカーに近い印象だ。

フルオーダーバイクで、
まさかレースにも出ようというバイクに
最新コンポーネントを組まない手はないのかもしれないけど、

意味や価値を自分で見出す事も、
オーダーバイクを作る楽しみと言っていいと思う。



もういい歳になった自分が、
相も変わらず、
何処かヒネくれた選択をしてしまうのは、
きっとアイツの反骨精神が自分の中に、
少しでも宿ってるからかも知れない。

生まれて来た事に意味や価値を持たせるのはきっと、

今を生きる人達に違いない。

















ビスポークフレーム

休みの朝、

ディーゼルエンジンの音が
ドロンドロンと気持ち良いヨッシャンの
ランクルの助手席に乗って、

僕らは熊取にあるソウ君とキョウコさんのお店、

ビストロリュドラガールに向かっていた。

高速を降り、
ギリギリ行き違い出来るくらいの道幅の農道に入る。

ふと、右前に何か落ちてる。
最初は木の枝かと思ったが、

ゆっくり動いてる。

ヨッシャンっ、なんかあるで!

『あっ!亀やっ!』

なんと30センチはあろうかという
ミドリガメが、道をノソッと横断している。

そこへ、対向車がやってきてしまい、
うわっ、早く逃げろ〜!

と叫ぶと、

車に気付いたカメはその場で
手足首をシュッと
甲羅の中に避難させたので、

僕らはその可愛らしさに思わず、
『いやでも、それじゃアカンやろっ笑』
とツッコミながらも大笑いした。

(対向車の人が上手くかわして行ったので亀は無事。)


関西のタフな自転車乗りであれば、
一度は挑戦してるのではないかという
山岳ルートが集まる辺り、
その麓に店はあって、
当然その周辺はそう君のホームコースであり、彼の案内で朝からライドする。

『2時間くらいなら、葛城山ひやかして帰るルートで行きましょう。』

と、勝手知ったる感じだ。

二人のロードバイクは当然KINFOLKで、
僕はCXに使い込んだロードタイヤを履かせて付いて行く。

ソウ君のフレームはその長身に合わせた迫力のサイズに、
ティアドロップ断面を持つ異形ダウンチューブ『ギガチューブ』を採用していて、マッシブながらスマートな印象が彼の人となりに良く似合っている。

方や、
ヨッシャンのフレームはコンフォートな印象の強かったKINFOLKが、
レースユースを視野に入れて工房を変更したその雛形で、

チューブはカイセイのハイエンドである
『8630R』。
レースで十分戦える戦闘力を持ちながら、
オーソドックスなホリゾンタルのシルエットで、KINFOLKらしいオーセンティックな魅力にも溢れている。
その広い振り幅は
どこか彼の人間性と被って見える。


そして今回、
自分もロードフレームの注文を入れた。


先日、KINFOLKの正規取扱店でもある、ムーブメントで採寸してもらい、

身長171の自分の手足の長さも余りにも平均的で、

『まぁ、Mサイズっすね笑』

と皆んなで笑っていた。

当たり前だけど、
サイズに合わせるだけなら、
中肉中背であればツルシのフレームで
問題ない。

だからこそ、
自分の頭の中の『乗りたいバイク』
のイメージを、
ヨッシャンに伝えた。

チューブの指定は、
「一番太いヤツ」

後は使いたい用途。僕の場合は、
「レースもツーリングも行きます。」
くらいしか書いてない。

そして、
今回はそこに1つ、新しい試みとして、
44mm径のヘッドチューブを導入してもらった。
コレはヨッシャンが先シーズンCXに採用していて、
試しに乗っただけでも安定感の違いは明確だった。
KINFOLKではこの場合パラゴン製のヘッドチューブになるらしい。

細かなディテール(パイプの曲げなど)は伝えはしたけど、
オーダーした乗り味を損なうのであれば、好きにしてもらっていい、
という感じで、

最初はほぼお任せでいい、
なんて思ってたけど、
僕が書いた仕様書に目を通したヨッシャンに
『長っ!結局拘(こだわ)ってるやん!笑』

と言われて、自嘲的に笑った。



短い急勾配な坂に入る度、
そう君に嗾(けしか)けては、
ケラケラ笑いながらヒルクライムスプリントして遊ぶ。

パンパンになった脚でリュドラガールに着くと、
そう君がぱっぱと昼メシを拵(こしら)えながら、
乾杯。

『モッツさんのロード、早く出来上がると良いですね。』

正直、こうして一緒に走ってくれる友達が、沢山居るという環境があれば、
機材なんてそれに耐えうるレベルなら何でも良いと思う。

でもきっとそれは、
身体に、気持ちに、

ピッタリ寄り添う様に
仕上がってくるだろう。

ビスポーク・フレームとは、
よく言ったモンだと思う。

茹であがった、モチっとしたボリュームのあるパスタに、
しっかり辛いソースを絡ませたそう君の一皿。

柔らかいイカにアンチョビも効いて、
空腹にドシっと、コレは美味い!

赤いポロシャツに着替えたヨッシャンと、口元を拭きながら、

このランチ食べに来るだけでも意味あったな笑、と笑いながら、

ほなまた、と熊取を後にした。

次も、また次も。

楽しみは無限だと思う。








フレームのスケルトンとチューブセットの選択

忘れた頃に、それは送られてきた。

ロードフレームのジオメトリが描かれたスケルトンと、
よっしゃんからの『何か変更ありますか?』というメッセージ。

基本的にビルダーの福田さんにお任せしてるし、
どっちにしろ自分みたいな素人がセンチ刻みの話を出来るワケもない。
でも、分からないなりにも、
スケルトンを見れば心はときめく。

スケルトンというのは、この場合、
フレームの設計図、
いわば完成予想図で、

チューブの太さやヘッドの角度等が正確に記されている。

自分くらいの変態になると、
これを左脳に焼き付け右脳で色付けし、
扁桃体で立体化して酒の肴に変えてしまう事が出来るのだけど、

せっかく前回のCXのスケルトンがあるので、まず対比して違いを探ってみる。

結論から言えば、
CXに比べると、ロードバイクは
全体に短く、低くなってるようだ。

それでもサドルからペダルまでの長さはぴったり同じなのは流石ビスポーク。
ハンドルはロードらしく少しだけ遠くになった。

大きな相違点としては、BB高。
CXより10mm、下がっている。

TONICのオカさんからも先日伺ったけど、
BB高は乗り味にかなり影響するらしく、低い程安定するらしい。
軽いハンドリング重視の人には不向きかも知れないけど、
オカさんの様にコーナーをロケットの如く突っ込んで行く人には、
安定した乗り味の方が向いてるのだろうか。

5mm下げたらコレが効く、
とは、
NAKAGAWAサイクルワークスのビルダー、中川さんも仰っていて、

今のCXからさらに10mmも下がるとなると、大きく乗り味が変わってくるんだろうな、と、想像だけで
年甲斐も無くドキドキしてしまう。


見た目の全体的な印象は、
太いチューブで構成されてるので鉄フレームとしてはマッシブ。CXに比べかなり前傾のスパルタンなポジション。

シートポストも20mm近く長く出せそうなので、セットバックシートポストが使えそうだ。


….楽しい。


…スケルトン楽しい。


チューブセットに関しては、
44mmヘッドが馴染む様な太いチューブをお願いしたので、

自動的にカイセイ8630Rになった。


コレは、クロモリにニッケルを配合したニッケルクロームモリブデン鋼という合金で、

同社のクロモリハイエンドの4130Rより高強度なのでより薄く太くする事もできるし、
特筆すべきは、熱を入れる事で強度が上がるという特性を持っているらしい。

コレが開発された背景に、
カイセイ社員が社運をかけた、
ってエピソードがあるらしく、
よっしゃんはそんなエピソードも大好きだと教えてくれた。

ちなみに、
よっしゃんのロードバイクも、
チャンヌのKINFOLK-CXも、
この8630Rで造られている。

そんなこんなで、
仕様は全て決定。

よっしゃんへのメッセージの返答は当然、

『どうぞよろしくお願いします。』

そのひとことに、

沢山の期待を乗せて返信した。




フレームの塗装

『えっ?トップチューブ太くないです?!』

とは、
塗装をお願いするクックペイントさんのインスタに上がってきた、
塗装前の僕のロードフレームを見た、
グレ君の言葉。

グレ君はロードレース経験もあり、実際にロードバイクを相当乗り込んでいるだけに、
パッと見だけでも太いトップチューブが脚にクる事を瞬時に察した様子で、

その驚きを遮るようにソウ君が
『まぁモッツさん豪脚ですからね(笑』と、
皮肉をかぶせる。

もちろん豪脚になった記憶も無いし、
実際、思うより脚に堪(こた)えるのかも知れない。

でも自分にとって、
それは求めた姿の副作用みたいなモンで、それで踏めないほど硬くもならないだろうし、どちらかと言えばツーリングよりレース向けの性格になった、
という事だと予想してる。


とにかく、今から塗装に入るワケで、
『もう色は決めてます?』とヨッシャン。

塗装はオーダーフレームの醍醐味だ。

パーソナルカラーにする人もいれば、
好きな車や憧れのレーシングカー、戦闘機なんかのカラーをサンプリングしたり、
自分なりにテーマを持たせてパーツのカラーと合わせる人もいるし、
塗装屋さんやフレーム屋さんと、カラーサンプルを見ながら決めるのも楽しいだろう。

でも、
センスの良い塗装屋であればお任せしてしまうのも悪くない選択だ。

餅は餅屋じゃないけど、
やはりロゴ1つ、色使い1つとっても、素人では到底マネ出来ないバランス感がある。

僕もつい拘ってしまい、細部までゴチャゴチャ注文したくなるクチだけど、
せっかく作るフレームが独りよがりになり過ぎるのは望むトコではない。

そこで、

今回はツートーンカラー、好きなオートバイの写真を送って、
このカラーでお願いします、
とだけ伝えて後はお任せとした。

その写真に写っていたのは、

ガソリンタンクを
美しいブルーとグレーベージュに
塗り分けられた、

トライアンフ社 ボンネビルT120。

1959年に誕生したそのオートバイは、
当時最速を誇り、
イギリスのロッカーズ、カフェレーサー達に愛された。

(写真はココから拝借
カフェレーサーとは、
ロッカーズ達が自慢のカスタムバイクに跨り、カフェに夜な夜な集ってはレースをしていた事に始まったそうで、

そんなところも、ここ数年のハンドメイドバイクブームに通ずるモノを感じる。

そして何より、

イギリス、ロッカーズ。
僕らが中学生の頃、
ワケもわからず古いバイク雑誌や音楽誌をめくっては大騒ぎしていた。
それは憧れだった。

カフェレーサー、リーゼント、リッケンバッカー…。

パンクなロカビリー野郎と、
大人になったら乗りたいな、
と語り合った、
ノートン、そして、トライアンフ。

まさか、僕が今、
自転車に乗ってるとは夢にも思うまい。

このカラーは、天国にいる彼への
僕なりのジョークだ。






コンポーネントの選択その2

ドライブトレインのコンポーネントは
決めてるので、
次はサドル周り、ハンドル周りのパーツを揃えていく。

ステムはフレームと同色にする事にしたので、同じタイミングで塗装に出す必要があり、最優先で選択する事に。

もう一度スケルトンと睨めっこして、
ほんの僅かにスローピングしてはいるものの、ほとんどホリゾンタルに近いシルエットを活かし、
ステム角をトップチューブと水平にしたいと考えた。

最近のロードバイクは殆ど上方に向かいヘッドチューブの角度に対し6°か10°の角度で、水平ステムと比べるとハンドルは少し近くなる。

水平ステムはヘッドの角度に対し、
17°。

この17°ステムというのが実はかなり少ない。

おそらく、余程腕が長いとか、逆に身体の小さい女性が使ったりするのだろうか、限定的故にラインナップは本当に少なく、ほとんどがセカンドグレード、しかもアルミだけだったりする。


そこでカーボンステムと同等の軽さの
17°ステムを探した結果、
ZIPPの一択となった。

ここのブランドは
レーシーなイメージが大変強く、
あまり好きなブランドでは無かったけど、シンプルなだけでない個性的な
美しさにも惹かれた。

出来るだけCXバイクとのポジション差を少なくしたくて、
ハンドルはDEDAのZERO100、サドルはフィジークのアンタレスと、
CXと同じにした。

シートポストはソウ君からゼロセットバックのトムソンを譲ってもらう。

ここまで読んで、

『同じブランドで揃えないの?』

と思う人は、
多分自転車乗りには少なくないと思う。

でも、例えば洋服で言ったら全身同じブランド、というと、
想像するのはスーツなどのコンサバティブなスタイルになる。

でも、ストリートピストから自転車を
好きになった自分的には、
どこまでもカジュアルに、ファッションとして楽しみたい所もある。


色んなブランドをミックスする事がファッションだと、今は亡きジャンニ・ベルサーチが言った様に、

ひとつひとつのパーツをそれぞれ
選択出来る自由を満喫する。

そして、
個性的なパーツ、普遍的なパーツを組み合わせ、
どんなバイクになるか妄想に耽り、
心を踊らせる。

これは楽しい時間だ。

どんなパーツでも規格さえ合えば、
どのみち一台の自転車になる。


その姿を思って僕はまた、
ワインをひと瓶、
今夜も空けてしまうのだ。





最後の選択

パーツ集めは、
楽しくも気の遠くなる作業だ。


RECORD10SPEEDはとっくにディスコンになっていて、海外のオークション等を利用して2年近くかけてコンポを揃えた格好だ。

リアディレイラーは、
KINFOLK-CXを多段化した時に買った物をオーバーホールして使う事にした。

最後にワックスをかけ、
美しい曲線を描き、滑らかに光る
ボディにしばし見惚れてから、

箱に詰めこんだ。

時を同じくして、
ヨッシャンからフレームが届いた、
と連絡を受け、KINFOLKチームのマッコイさんが僕のフレームを持った写真が送られて来た。

それは、

サファイアの玉石に
強い光を当てた様な、
予想外の、それでいて、
美しい塗り分け。

クックペイントアゼミさんの、
『音楽を意識した』とのコメントが
嬉しい。

ステムも同色で塗り分けされている。


僕は逸る心を必死で抑えつけ、
今やる事はパーツ集めと自分に言い聞かせた。それゆえか、
その後は早かった。

ヘッドパーツの色は黒一択だと思ってたけど、フレームに合わせたくなって
ピューター(白銅)に変更。

ホイールはカンパニョーロ製のアルミリムで1番軽い物を選んだ。


パーツは揃った。

後は、組み立てだ。

幸運な事に腕の良いメカニシャンが
僕の周りには沢山いて、
誰に頼んでも遜色なく仕上がって来るのは間違いないと思っていたけど、

今回は、
hutte8to8さんにお願いする事にした。
メカニシャンは同店主のヤギさん。
通称、バレットヤギ。

丁寧なその仕事ぶりはピストに乗り出した頃から良く知っていて、
言うまでも無く、
シクロクロスのライバル。

いつも、
彼の組むバイクの佇まいは、
柔軟さの中にどこかピンと背筋の伸びた真っ直ぐさを感じていて、

まるで組み手の性格がバイクに反映された様な、

もし自分が組んでもらうなら、
ヤギさんにお願いしたいと思っていた。

とはいえ、

ここまでパーツを揃えて持ち込みなんて、
嫌がられないかな…

8to8の門戸をたたいて、
ヤギさん、お願い出来るかな…、
と恐る恐る聞くと、

『勿論いいよ』

と、気持ちの良い返事が返ってきた。


フルオーダーバイク

その日、
大阪は台風の影響で雨続き、

納車の日だというのに、まったくツイてないな、
と独りごちて、僕は8to8に向かっていた。

先日の夜、
『本日ここまで、明日には跨がれる様にしときます』と、

パーツを預け、1週間もしないウチに
ヤギさんから完成前の自転車の写真とメッセージが送られてきた。

仕事の早さに感心しながら、
その写真をクロームキャストでテレビ画面に飛ばし、大写しにして酒を飲んでみたが、やはり大変すすんでしまった。

その写真を脳内で反芻しながら、
乾き出したアスファルトを歩く。

考えてみれば、
カスタムオーダー、と言いながらも
全てお任せで完成したんだな、と
フと気付いた。

ビルダーの福田さん、塗装のアゼミさん、そして、組み付けはヤギさんに。

その道のプロに、自分の為だけの、
オリジナルを手掛けてもらえる。

なんと言う贅沢だろう!

僕はその対価を払うだけで、
この世に一台の自転車を、熟練の職人が3人掛かりで誕生させてくれるのだ。

8to8の扉を開き、
興奮を抑えられない僕を、

『モッツさん、おまたせ、出来てるよ』

と、ヤギさんはいつもの笑顔で迎えてくれた。

その奥に、
完成したKINFOLKが佇む。


ヤギさんに言われるままに跨ると、
それは新しい物に触れると言うより、
ずっと乗り込んで来たサドルに戻ってきた様な感動。

ハンドル位置はCXに比べ随分下がってる筈なのに、しっくりくる。

サドルの高さもキッチリ調整され、
膝の感覚もCXと全く同じだ。

なるほどこれがオーダーメイド…、
と、ペダルを踏み出して、

想像を超えるその軽さに驚き、
何度もギアを確かめた。

8to8は坂の途中にあるのだけど、
登りをトップギアで、楽に登れてしまう。
53×13というと、ギア比、
実に4.08。

正直自分では、下り坂でないととても使えないと思っていたギアで、登坂出来てるだけでも考えられないし、
なんならまだまだ踏めそうな予感に、

『…これはさすがに、調子に乗る…』と心中に呟いた。

大阪はその後数日悪天候だったけど、

その隙の僅かな晴れ間を突いて、
いつもの練習コースへ。

台風の影響か、とんでもない強風の悪環境下。

それでも、踏み出しが軽い。
つま先に入力した力は、
アスファルトを直に蹴り出した感覚で
車体を前へ進める。

シャマル・ミレ(車輪)は自ら回転しようとしているかの様で、

もっと重いギアを、と乗り手を誘う。

低くなったBBの影響か、
ビタリと路面に張り付く様に加速して、

いや、とは言えシフトミスを頻発させたり、コーナーのラインをウッカリ外しながら、

それでも自己ベストを更新して、
心拍数も同じくいつもより高くなっていた。

これが、
ビスポークフレーム…

フルオーダーメイド、
やはり、予想通り、
心に身体に、ピッタリ寄り添う様に
仕上がってきた。

テストライドを終え
乾いた布でフレームを拭きながら、

高すぎた自分の希望に自嘲しつつ、
それがカタチになって目の前にある
奇跡に、

僕はまた、今夜もワインを注ぐのだ。






KINFOLK RoadRacer

KINFOLK RoadRacer  2016/09

P1240540.JPG

Spec 
 

Frame:KINFOLK
Fork : ENVE ROADFORK2.0
COMPONENTS: CAMPAGNOLO RECORD 10SPEED
Headset : CHRIS KING inset8
Stem : ZIPP ServiceCourse SL 100mm
Handle :DEDA ZERO100
WHEELS: CAMPAGNOLO Shamal Mille
Tire : Continental Grand Prix 4000S II
Saddle : fi'zi:k ANTARES k:ium
Seat Post : Thomson MASTERPIEC
Pedals : Time Xpresso2

 

美しいステムのグラデーションは、TT、DT同様にして、

ハードロックを感じさせるザクザクとした切り返しの上に柔らかにかかる。

 

イメージ画像として送ったモーターバイクのガソリンタンクの輝きそのもの

を表現した様にも見える素晴らしいセンス。

P1240526.JPG

カンパニョーロrecord10sの中で気に入ってるのは、

5本アームのクランクにタイタニウム色のチェンリング。

11s以降は黒に、最新の物は更に4アーム化されているけど、

自分が憧れたのは最新鋭でもネームバリューでもない、

このコンポーネント。

 

P1240477.JPG

CHRISKINGのピューター(白銅)色のヘッドパーツが上手くマッチしてると

思うのですがどうでしょうか・・・・。

職人さん達の技術とセンスが特に集約しているのがこのヘッド回りだと

思ってます。

 

そう、ちなみにクックペイントにイメージとして

送ったモーターバイクの画像はこちら。

これがこう。

 

P1240481.JPG

見事としか言いようがありません。

 

ホイールの黒リムや、ネオクラシカルなセレクト、

個人的にはいかにもピストムーブメントを拗らせて?引きずってきた

仕上がりで、大変自分らしいと思ってます。

 

走りに関しても、前回述べた様に自分史上最高でしょう。

 

しかし、

当然の事ですが、僕一人で職人さんとやり取りなんか出来るワケはなくて、

 

僕の拙い言葉やイメージを、ちゃんと理解し、

職人さん達に僕が思う以上に伝え、仕上げてくれたプロデューサー、

総監督ともいえる、

kinfolk自転車部門を一身に背負って立つ、ヨッシャンの力あってこそだし、

 

もし、

カッコよく、後悔しないフルオーダーバイクをオーダーしたいと迷ってる方がいれば、

僕は一顧客としても、彼をよく知る友人としても、

選択肢に入れて間違いない、と胸を張って言えるのです。

 

最後に、KINFOLKのフレームに書かれる「RunWithTheHunted」ですが、

たぶん逃避行的な意味でしょうか?

勝手にそう理解してるんですが、

 

先日ヨッシャンに「毎回おんなじ場所を練習練習、でもそれだけじゃないでしょ。」

と言われて、あ、

確かに、

誰かに勝つ為に、誰かを負かす為に自転車に乗ってるんじゃないな、

と僕に気付かせた直後に

 

「勝つ為なら必要なんでしょうけどw」と言ってくる天邪鬼な彼ですがw。

 

 

それぞれの生き方や人生があって、その上での自転車だ。

 

例えば誰かが、最高の仕事をする為、自分の暮らしを守る為に。

ほんの少し、いや、最高の段取りで、心をリセットし、頭を空っぽにする為に。

 

さぁ、逃げよう。

 

自分探しなんかじゃない、偏った自分をニュートラルへ戻すだけのライドへ。

 

KINFOLK BICYCLEは、その為の極上の機材なんだと、

そこに触れたなら、誰だって理解できる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ブレーキシュー交換(カンパニョーロレコード 2010)

僕のロードバイクはホイールに、

シャマルミレというカンパニョーロ製のアルミハイエンドモデルを使っているのですが、


スポークの太さや組み方、何よりリム面までブラックアウトされたルックスが気に入っていて、月間500kmくらいの走行でかれこれ2年以上使ってますが、目立つ退色や色ハゲもありません。


割高な上、寿命も短いと言われる専用の青いブレーキシューもようやく交換時期という感じで、乗り方にもよるでしょうが噂される程削れるとも思いません。


とはいえもう流石に交換時期。


ブレーキシューを交換してみます。


2011年以前のカンパニョーロレコードのブレーキシューは、

なんと船に挿してあるだけ。

パーツクリーナーでカスを飛ばして、反対側からラジオペンチで摘んでにゅ〜っと抜くだけです。

すっごい楽にというか、

気持ち良く抜けます。

嵌める時もしっかりパーツクリーナーを船の中やシューに拭いて、

指で押し込むだけ。またしてもにゅ〜っと入っていくので、なんだか癖になりそうです。

この様にして交換する事で、

角度調整ナシでシューを交換出来るとの事。


作業しやすい様にホイールは外した方がいいですが、船を外したり付けたりするより随分楽だと僕は思います。


近年のカンパニョーロで同じ事が出来るか分からないのですが、

2011年以前のカンパニョーロを使ってる方は、一度この取替え方を試して頂きたいです。









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