淡路島単独ライド

妻が「走りに行ってきていいよ」と時間を作ってくれたので、淡路島一周を企てた。


明石と島を繋ぐ渡船、ジェノバラインには自転車ラックが新設されていて、

こういったサービスアップは想像以上にツーリングの質を上げてくれる。


荷物は明石のコインロッカーへ放り込んできた。


島に到着するなり、

躊躇なく走りだす。


ボトルの水を一口飲むと、

潮の味がした。


今日はかなりの強風で、渡船上の

水飛沫がボトルの口に掛かったのだろう。


衛生上はわからないけど、

ミネラルを補給してる気分で悪くない。


淡路島を時計回り。このルートは普段なら軽く追い風で心地よいスタートになるのだけれど、

今日に限っては曇り空に向かい風と、

あまり快適ではない。


一気に行くか。


丁度折り返しになる福良港まで、

ノンストップで走りきる。


実は、

このロードバイクで淡路島に来るのは

初めてで、

そのせいか、こんなものだったか、

という印象。


それでも水仙郷の峠道は、やはりキツく、ここまで全く見なかったローディー達の群れが、はぁはぁ言いながら登っている。


殆どのグループが女性ライダーばかり、それを男性が引率している。


僕は、チョット失礼、といった風に

そのグループを1つ、2つかわして登る。


いい坂だ、やっぱり。


下りは一度事故してるだけに、流石に慎重になるけど、それでも以前の様な怖さは無かった。


恐らくこのバイクの安定感と、

トニックの岡さんから教わった加重、目線などが、少しづつでも出来て来てるのかも知れない。


水仙郷を越えて、

福良港まであと1つ2つ、峠がある。

そこに行くまでの、海岸線が実はキツい。


コンクリの路面、ガタガタとギャップを拾いながら、

薄暗い曇り空の下を走る。


いつの間にか、

僕はガーミンをチラチラと、

数字ばかり気にして走ってしまっていた。


風が強く、

速度が上がらない。


とはいえ、後ろから来たライダーに抜かされるのも面白くないなんて、

どうでもいい事を考えては黙々とペダルを回していた。


そんな折、


陽の光が射し込む。

薄く伸ばした雨雲にカッターの刃を切り込んだ様なその光は、

ひどく幻想的に海面をキラキラと輝かせた。


誰もいない道、

ボウボウと荒れる風の音、

そして、

自分の息遣いしか聞こえない。


そこに、この僥倖。


独りの世界に入り込む、

現実感を失う瞬間。


誰と走るかが大切、

いつもそう思うけど、

たまには独りもいい。


ワクワク感では遠く及ばないが、

開放感という意味では独りは悪くないし

独り占め出来る景色というのも、

これはこれで特別だと思う。


福良港に着いてしまった。


そうだ、グルメ、今日は太って帰るぞ、

と息巻いて来たのに、まだ何も口にしてない。

で、海鮮丼を、と店の前に行くが、

思ったより疲労がある様で、

食欲がない。

せめて、何か名物的なモンでも…


「ちりめんソフト」


のノボリが目にとまる。


まさかな。


いやでも、フランス料理とか、

牛乳使った魚料理とかあるもんな。


おばちゃんは「カルシウムたっぷりですよ〜」とソフトクリームにたっぷりちりめんジャコを振ってくれた。

おおよそ予想通りの味わいで、

塩っ気が濃厚な淡路牛のミルクの甘さを引き立て、

口の中に残るジャコの独特の弾力が楽しい食感だ。


マズイ。



いや食えない程マズくはないけど、

ブルーベリー味とかの方が、

満足出来たのではないだろうか。


なんなら、普通のバニラでよかった。


復路につく。


空はどんどん暗くなり、

風は暴風。


気を抜くと、ハンドルを持っていかれる。


海面の近い辺りでは、波が路上まで上がってきてる。


スーパーマリオみたいにタイミングを見計らって突破、という程ではないにしろ、波が引いた瞬間、全力で走る。


ふと風の音が止まる。


沿道の草木が進行方向に向かってなぎ倒されてる。

速度がグングン上がる。


これは、とんでもない追い風だ。


かと思うと、その追い風は突然、

転じて向かい風に、


やがて雨が降り出し、

早く帰りたいという気持ちになってくる。


この辺りで尻も痛くなってきて、

残り、あとたった25km。


なのに、

そこからは向かい風の中に小雨が混じり、なんだこれ最悪だ。


だんだん、心拍も上がらなくなって、

もうグルメどころじゃない。


あと僅かな距離が、

全く縮まらない感覚。


あぁ、これが淡路島だった。


行こうと思ってたカフェも、

道の駅にも寄らず、

まっすぐフェリー乗り場へ。


いったい何しに来たんだろう。


フェリーのシートにどかっと座って

飲んだ温かい缶コーヒーが、

やたら美味い。


前よりいい自転車に乗って、

以前より少しは上手くなった気がして、


それでも結局こんなモンだ。




輪行してウチに着き、

子供達を連れて、お茶でも行こうと

近所の小洒落たカフェへ。


なんせ昼メシを食いそびれてる。

子供にカヌレを食わせ、

僕はビールを呷った。


「パパー(携帯で)ゲームしたいー」


何言ってんの、こう言う所ではカッコつけてなきゃいけないんやで?


と言うと、

息子は少し気取ってストローを咥えた。


その様子を見て僕は思わず吹き出しそうになりながら、

淡路島を想う。


辛くて、

楽しかった。


やり過ぎなくらい心地よい疲労感と、

ウチに帰って感じる、この安堵感。


どうしようもなく

生きてると思わせてくれる自転車は、

僕にとって、


やはり大切な趣味なんだ。




kinfolk×GAP

ストリートブランドのロゴは

認め印になってしまった、

というのが昨今の印象。


工業製品メーカーの質実剛健な製品にブランドロゴをポンと押すだけで、

突然、尖ったセンスを纏うというのは確かだし、


そもそも自分の好きな服をリスペクトしつつ、自己流のセンスをエッセンスとして落とし込む、

というのがストリートブランドらしいと思うので、


要約した結果そうなった、と思えば

当たり前なのだけれど。


注目すべきはむしろ

ストリートブランドのロゴにはそれだけの力がある、という事。


ストリートブランドには必ずバックグラウンドとなるカルチャー(例えばsupremeならスケートボード等)が存在し、

その文化がロゴに染み付いているからで、


これはハイファッションや一般的なアパレルブランドには有り得ないモノだと僕は考えている。



kinfolk×GAPが発売開始され、

丁度一月経つ。


てっきり、GAPの既成製品にロゴをポン押しした物だと思ってけど、


そんなワケはなく、店頭で手に取ったスウェットは、

中学生の頃夢中になってたインポート物のNBAのスウェットと同じディテールを持つ、質実剛健な作り、サイドパネル、ガッシリしたリブ。


素材選び、センス、店頭の他のGAP製品の中ではトップクラスの品質だと感じた。


そして、グラフィック。

レーサーロゴと名付けられた

kinfolkのロゴは、

ストリートピストカルチャーに端を発したバックグラウンドを雄弁に語る。


実際、ロゴ、グラフィック製品は飛ぶ様に売れているらしく、この力は、まさにストリートブランドのソレだろう。


「グラフィックは、Kinfolkというブランドのアイデンティティ、そしてどんなカルチャーに裏付けられているものなのかを端的に表現してくれるものなのです」


と、クリエイティブディレクターのジェイ・ペリー氏は語る。


ハイエンドストリートを謳うkinfolkらしい、アパレルとしての素材やシルエットへの拘りと、ストリートブランドらしいロゴが融合されたコレクションを、

GAPとのコラボレーションによって、

手に入れ易い価格で購入出来る。

これは嬉しくて、


大人気なくバカスカ買ってしまった。


ストリートブランドのロゴは認め印。

このコラボレーションは間違いないし、


同じロゴが入った自転車に乗っている事を、

僕はとても誇らしく思う。





8to8ライド〜それでも僕らは坂を登る〜

野間峠。


ヨッシャンが遅れている。


登りきった頂上で踵を返して、

彼の様子を見に行こうと、

来た道を下り始める。


すぐ後ろにいたヤギさんとすれ違い、

その後ろ、その日のライドのメンバーとすれ違う中、目を凝らすがヨッシャンの姿が見えない。


下りはまだまだ深く、葛折りを上から1つ2つ見下ろしてもヨッシャンの影は見えない。


すれ違い様に見落としたか?


戻ろうと、ターンして登り出すと、

すぐソウ君が追って下りてきていた。

やはり、見落としたワケではなさそうだ。


何かあったのかも知れない。


僕らは特に言葉も交わさず、

またその坂をくだり始めた。



その前日。

週末のライドは何処へ行こう?


あれこれ悩んでると、ヨッシャンが、

ヤギさんのライドに皆んなでお邪魔しよう、と提案。告知内容では

長め、緩めのロードコースと書いてる。


ヨッシャンの膝の調子も微妙なので、、これは御誂え向きとヤギさんにメール。

そして、モチロン良いですよ!お待ちしてます、

と気持ちの良いお返事。


とはいえ、

集合場所の箕面駅に到着すると、

メンバーはお一人除いて皆顔見知り。

こうして顔見知りがまた一人、

増えて行くのは嬉しいモンだ。


が、この面子を見たヤギさん。

『緩く行く必要なさそうですね…』

と、予定変更。

1600upのコースに再設定された模様。


のっけから、

いいペースで箕面の山へ入っていく。


何度走っても気持ち良い箕面。

比較的綺麗なアスファルトの横に、

小さな渓流。川面に鎮座する苔生した岩岩を木漏れ日が輝かせる。


その横を、


ジュァッ、ジュァッ、とタイヤの音だけが、ペダルを踏むたびに響くのだ。


楽しくなってきてニヤニヤしてると、

ヤギさんのアナウンス。


『この先は短い坂がありますよ、短くてスグ終わりますけど。』


と言うので、僕はおどけて、

スグ終わらせる、って事ですか?笑


などと、余計な事を言ってしまい、

両脇のヤギさんとソウ君、

三人の間に暫しの静寂が流れる。


誰が合図するともなく、

一斉に駆け出した。

その様子にソウ君は思わず噴き出してしまう。


僕とヤギさんは、

本気だ。


拮抗し、くそっ、タイヤ半分

ヤギさんが前に出て、

大人気ない第1レース終了。


ハアハア言いながら苦しい苦しいと笑ってるのがまた楽しい。


そこから8to8ライドの本領発揮。

趣きのある峠を登りきると、

ヒビ割れたコンクリートの、

急勾配な下り坂。


そこでヤギさんからの前説が入る。

ここからこんな感じの荒れた路面で、

次に幅員が狭くなり、

その先に犬の散歩してる女性が居るので注意との事。


シャマルミレのブレーキをキキーッと鳴らしながら、


荒れた路面をクリアし、

なるほど幅員は狭くなって、

後は犬の散歩をしてる女性が、


本当にいた。


ヤギさんの、

まるでゲームの攻略本の様な正確な

前説に

(犬の散歩まで)知り尽くしてますね!と、皆で笑った。


ヨッシャンは膝を庇いながら走る中で、

つま先をバレリーナの様に伸ばすと痛まない、と気付いたという。


力は入りにくそうだけど、

つま先を伸ばせば当然膝は真っ直ぐ降りる。外膝の痛みはペダリングの膝の揺れが原因となる事が多いらしいので、

なるほど理にかなってる。

コレはいいアイデアかもしれない。


そして、野間峠。


勾配もキツく、トグロを巻く大蛇の背中を走るようにウネウネ曲がる。


この手のヘアピンコーナーは曲がりの深い部分が平坦に近くなる場合が多く、そこで休む、


でなく、あえて加速して、次の坂へ挑む。多少キツいが、個人的には、

この方が楽に登れる気がするのだ。

山頂のトンネルが見え、トップで着いたぞ、と、しょーもない優越感はすぐ冷めた。前に出過ぎだ。


ヨッシャンの膝が気になる。


とはいえ、戻るとなると、

この坂、もう一度上がるんか…


少し考え、いや、

でも、それも悪くない。


僕は意を決して

踵を返す。


下る中でソウ君と合流し、

更に下る。

あっ、

小さな声と共に僕らは彼の姿を確認した。


大丈夫?膝か?!


かなり辛そうだ。


僕とソウ君もヨッシャンの背中に着いて、また登り始める。

改めて、キツい坂だ。


ヨッシャン、膝いけてる?!


『いや、膝はともかく、体力が…』


その言葉を聞いて、

僕らは声に出して笑ってしまった。



三人で、

それは苦しそうに、

僕らは坂を登る。


今シーズン、三人でのシクロクロス参戦はかなり少なくなる予定だ。


そうなれば、いわゆる結果はついて来ないかも知れないけど、


いつも僕らには、

僕らの楽しみ方がある。


それは苦しそうに、


それでも声に出して笑いながら、


僕らは坂を登るのだ。







犬鳴山チームライド


…けんめい、さん?…


「違いますね、イヌナキサンです。」


山道の看板を

息絶え絶えに読み間違えた僕に、

同じ様に息を切らせて

ソウ君が訂正を加える。


その日、僕らKINFOLKチームは

ソウ君の店に程近い、

泉佐野は

犬鳴山山域を走っていた。


落ちた松葉が昨夜の雨で濡れ、

路面はベタベタ。グリップは悪く、

斜度10%を超えるあたりのグレーチングでウッカリ踏み込んでしまい、

後輪はギュルんと空転してみせた。


突然のスリップに、

おっと、と驚く僕をハハ、と

力なく笑うソウ君が、

犬鳴山の名前の由来を話し始めた。


「昔々、この山に愛犬と鹿を狩に来た猟師がおったが、

あまりに犬が鳴くので獲物が逃げてしまい、

頭にきた猟師は愛犬のクビをはねてしまったそうじゃ。

じゃが、その首はそれでも跳ね飛んでいき、今まさに猟師に襲いかかろうと隠れていた大蛇にガブリと噛み付いた。

そこで命を救われたと気付いた猟師は、


おぉ、なんと取り返しのつかない事を、ワシはしてしまったんじゃぁ…ほんに、ほんにすまん事をした…と悔いて、


この山の僧となり愛犬を供養した。それを聞いた偉いお方が感動し、

この山をイヌナキサン、と名付けたという事じゃ…。」


と、日本昔話の様な話しを、

ザックリと説明してくれた。


しかし昔話ってのは今の感覚では

命の重さが随分軽い気がするな、

なんて話しながら、


まだ早朝の朝靄の中、

もがく様に僕らは山頂を目指す。

ヨッシャンが遅れていたので、

少し待つと呻く様に膝の痛みを訴えながら登ってくる。


どうやら膝の外側が痛いらしい。


僕はまだまだ初心者気分が抜けないのだけれど、

膝の痛みだけは、上、裏、外側、と三箇所きっちり味わった経験がある。


上と裏に関しては、サドルが低すぎか高すぎか、という所で概ね治り、

外側はクリート位置と膝の下ろし方で治る、というのが経験から得られた印象。

とはいえ、一度痛くなってしまっては休息する他無いので、

ヨッシャンの膝が爆発しない様にソウ君がルート、ペースを変えながら案内してくれる。


そんなソウ君の気遣いも何のその、


僕だけ気持ち良さげな道で1人ピューッと駆け出してしまい、ハッとして2人を待つが、来ない。

駆け出した位置まで4キロ程、

とりあえず戻って探したが、


居ない。


ヤバい、迷った。


と思った頃、ソウ君から着信。

ヨッシャンの膝を庇ってショートカットのルートに入ったとか。


結果二人を待たせて合流した。


コレ、昔話の世界なら苛立つソウ君にクビはねられてる所やな(笑)、

と、

言おうとしてやめる。


そこからの気持ちの良い高速コーナーを

三人で快走。


スタート地点のソウ君の店に到着し、

その後皆予定もあるし、

早々に解散する。


輪行で帰る電車の中でふと思う。


トレーニングの様に走るのも、

サイクリングとして走るのも、

僕にとっては同じ様に苦しく、

そして楽しい。


もし楽しさに差があるとすれば、


誰と走るか。


獲得標高でも、

消費カロリーでもないライドは

いつも特別で、

偏る僕の頭をニュートラルに戻す。


それが僕にとっての

チームライドなのかも知れない。












よくある夏の朝


僕のツイッターのタイムラインは

自転車の話題で埋め尽くされる。

とは言え、

いかにクランクを効率的に回すか、

という類の話は少なく、


いかに自転車と付き合っていくか、

という話題が殆どだ。


その中でもテースケさんがよく言う

「自転車は誰と乗るかが大切」

ってのは何の異論もない。


しばらく独りでのライドが続いてた事もあり、


なるほど、誰かと乗ると、

これほどまでに違うものかと、


たった今、


背後にナイトーさんの激しい息遣いを聞きながら、

それを痛感している。



今日はくそ暑い日曜日で、

気温は35度を上回る勢いらしい。


ナイトーさんと早朝に出発、

道中にある橋を全力でタイムトライアルしたら、あとは緩く周回して帰りましょう、暑いし。


という計画だったはずだ。


それがなぜか、

軽い向かい風の中を、

ここ最近ではこれ以上ない程、

クランクを回転させる事に集中していた。


口から心臓が飛び出しそうだ。


ルールは、

体調の優れないナイトーさんを牽いてインターバル2周3セット。

僕が落ちて来たらナイトーさんが抜きに来るので、

それを抜き返しペースを保つ。


という、

もはや僕を鍛える(虐める)だけの練習。


…ゆるく走るんじゃなかったっけ…


と独りごちながらも、イイ所を見せたいヨコシマな想いもあり、全力で踏み込んで見せる。


ナイトーさんの

「いやぁ、最近のモッツさん調子良いからなぁ〜」という口車に乗せられた格好だ。


速度計の数値はいつもより少しだけ速いタイミングで目標速度に到達する。


そこから更に伸び、

落ちない。


全部ナイトーさんのせいだ。


背後から追われる事でココまで違うのか。これは、引き離すまで休めない。


コーナーを抜けぎわ、

尻をサドルから上げ、

ナイトーさんを千切るつもりで

一気に踏み込む。


速度計の数字はまだ伸びる。

振り切ったか、

と軽く振り返ると、

そこにナイトーさんの前輪が見える。


いつも思うけどナイトーさんは

反応が速い。


僕が分かりやすいのかも知れないけれど。


そのまま最後のコーナーを抜け、

間も無くピピッとガーミンが自動計測でタイムを教えてくれた。


はあはあ言いながら息も絶え絶えに、

ガーミンを見て驚く。


ナイトーさん、すげータイム出ましたよ!(自分的に)。


実際、自己新記録だ。


引っ張り合った事も過去にあったのに、

その記録を上回った。


まさにナイトーさんのせいだ。


とはいえ、もしかして二台連なる事でエアロ効果が有るのかも知れない。

分からないけど、そのタイムを享受する程度には十分、身体は疲れていた。


「今日のワインは美味い、とか(ブログに)書かないでくださいよ笑」と、


両腕をハンドルに垂直に突っ立て、

肩の間に顔を落としていかにもシンドそうなナイトーさんは絶え絶えに笑って言った。


結局ハードな練習になってしまった。

これはでも、

テースケさんの

「誰と乗るのか」という定義とは何か少しズレてるんじゃないかな…、

と思いつつ、

いつものカフェに寄る。


僕らはRAPHAの熱心なファンと言う事もあり、ジャージがお揃いになってしまった。

なんだか面白くて、

せっかくなので写真を撮ってもらおうと、

ナイトーさんが店員の女の子に話しかける。

こういう時のナイトーさんはスマートで、反応も速い。


おじさん二人で朝カフェ。


彼とは歳も同じで、

子供も歳が近い事もあり、

話は尽きない。


ウチに帰ってログを見て、

自分もナイトーさんも自己新記録を出してる事を確認し、

なんと言うか、


二人で協力して山でも登って来たような、また何時もと違う達成感を味わう。


夕方、


妻の母が大量にコロッケを揚げてくれたので、

僕は酒を買ってくる。

セブンイレブンのPBワイン。


ヨセミテロードスパークリング・ロゼ。


泡で800円しないワインを他に知らないし、味も薬品を思わせる安いロゼ独特の渋み。

しかし、言うなればDr.ペッパー的な絶妙なバランス感で、

案外悪くないし、


これが、コロッケと絶妙に合う。


粗めのミンチ肉からジワっと出る肉汁を泡が弾き、スッキリした渋みが脂を流す。

ジャンキーで、止まらない。


ガツガツとコロッケを頬張りながら、

また泡をグイッと飲む。


今日はよくあるクソ暑い日曜だったけど、

そこに僅かな達成感があるだけで、

家庭料理もご馳走になるし、

安い酒でも美酒になる。


今日もやはり、

ワインが美味いのだ。







親友のバイクを選ぶ ーARAYA TUR編ー


僕には絵描きの親友がいる。


何もないところから突然その道を選び、

今は東京在住。

絵描き兼、絵の先生として生計を立ててる事を尊敬しているし、


彼と小学生からの付き合いが続いている事を誇りに思っている。


そんな彼が、ダイエットも兼ねて、

片道30km程の通勤先まで自転車で通勤したいとか。

そこでどんな自転車を買えばいいのかと、ワクワクする様な案件をメールで送ってきた。


条件は、先の走行距離、画材を積んで走れる積載量。雨の日でも走れる泥除け付き。


後は予算、10万前後。


流石だ。


中学生の頃共に自転車で他府県まで走ったり、

高校生の頃はナゾのチューブラーのロードにバイト代を注ぎ込むくらいには彼は自転車が好きだったので、

分かってるな、と言う感じだ。


実際こんなブログを書いてると、

「本格的な自転車が欲しい、予算は5〜3万は出せる」的な相談をされる事もしばしば。

よく知らんけどトレックのFXがええんちゃう?


とか勧めてるんだけど、


10万で完成車となれば選択肢も少なくない。


車種は、ランドナー、

もしくはスポルティフだろうか。


違いはタイヤのサイズで、

最初は700cのスポルティフを勧めたが、よくよく調べるとランドナーの方が積載量が多く前後輪のパニアにサドルバッグハンドルバッグを搭載した「フル装備」に向いているという。


そこまでするかはともかく、


絵描きの彼が画材をパニアバッグに積め込んで、

美しいクロモリのランドナーで山を越える姿を想像しただけで、


胸が踊る。


ARAYA製、TUR 。

ダブルバデッドのクロモリフレームに、

ロストワックスのクラウンを持つクロモリフォーク。


giantや石丸自転車も勧めつつも、


どう考えてもARAYA製がカッコよ過ぎる。


ホリゾンタルのラグフレーム、

650B規格対応のタイヤサイズ。

輪行を意識したセパレートの専用マッドガード。

丸ハン、ダブルレバー。

オリジナルリム。


まさに、美学の塊。


僕の紹介をうけ、

早速取扱い店を回ってくれたんだけれど、


1店舗目はニットー製キャリア(片側24000円)しか付きません、と15万の見積もり出してgiant勧めてきたり、

次の店舗では他の客と遊んで相手してくれないなど、


結局近所の、

アラヤの取扱いは無いが非常に対応が良いショップでミヤタのCXモドキを勧められ、

価格も安いしそこで決めると言う。


アルミ製のCX入門用としてもハンパなイメージを払拭出来ないその完成車は、素人同然の彼が片道30kmを走るには、僕にはどうにも不適としか思えず、


店はともかく、それならTURの廉価版、

FED(6万円)の方が絶対良い、

と勧めた。


そして彼はまた違うアラヤ取扱い店へ。


もし、

僕の意見が無ければ恐らくミヤタを

買っていただろう。


彼の様に

さぁ、自転車を買おう、

という層が手荒に扱われる現実は少なからずあるのかと思う。


真っ当に自転車に乗るならそれなりの敷居を跨いで来い、というのは分かる。


いや、やっぱ分からんか。


どんな業界であれ、

目先の利益ばかり追うとどうしても文化そのものは衰退していくというアレなんだろう。


とにかく、

次に選んだ取扱い店は三度目の正直。


彼の話をちゃんと聞いて対応してくれただけでなくサービスも親密にしてくれて、

それだけで彼も他の自転車用品全てその店で決める、という話になったそうだ。


しかも、

納期がFEDは12月、TUR(9.5万円)は9月という事で、後者に即決したという。

ヨッションも言ってたが、

良いショップとの巡り合わせってのはあるもんだ。


正直、3万の違いであのスペックなら無理してでもTURにして欲しいと思っていたので、

これは嬉しい報告だった。


別に僕には何の利益もないんだけれど、

「コレは楽しい!」と思える自転車を選んで貰えたのではないか、という自己満的予測。


その結果、彼がまた自転車に目覚めでもしたら、とワクワクしてしまう。



中学生の頃、

彼と22時に待ち合わせ、

自転車で福井県から京都を目指した。


国道161号線、

真夜中のヒルクライム。


登りきって降り出し、

その降りの直線はブレーキを掛けなければ、およそ速度50kmは楽に稼ぎ出せる程。


で、


その後にくる減速コーナーで、

彼はガードレールにダイブ。

シャツはボロボロ。擦過傷は肩にサケの切り身でも付けてるかの様だ。

それでもと根性を見せて走り続けようとすると、

直後に僕がパンク。


これはもう、ヤメた方がいいな、

と笑いながら星空の峠を僕らは折り返した。


もし叶うならもう一度、

彼と走りたい。


その願いは、

もしかすると叶うかもしれない。


次は、東京から福井まで、山脈を越えるのも良い。


晴天の、ウネリ続ける山道を、

息を切らして追越し追い越されながら。


もう30年以上の付き合いだ。


語り合っても語りきれるワケもない時間を、


ペダルを回すその息遣いの中で感じ合えると、


今の僕なら、

確信出来るのだ。









南大阪サイクリングコースご案内 葡萄〜FJC編

今回は、

大阪市内から南東へ走り、

生駒山地は信貴山をクルッと回って

お洒落カフェに寄って帰ってくるサイクリングコースをご紹介します。


難波あたりを出発終点として、

ざっと3時間半ほどのコースになります。


バームクーヘンと自転車のカフェ、FRANCY JEFFERS CAFEにて朝食を摂る事を目標として出発しますので、

朝6時頃の出発がオススメです。


まず難波から26号線を南下し、

大和川サイクリングロードへ。

このサイクリングロードは道も荒れ気味ですし、変化のない景色が楽しいとも思えない、

なんなら向かい風の中を修行僧の様に黙々と走るセクションです。


たまにロードバイクを目の敵にした

ナニワのオジさんが、

追い越す瞬間


『なんじゃこらー!』


と叫んでくる事もあるので、

十分距離を取って追い越して下さい。

真っ直ぐ行けば柏原市民文化会館に到着します。


サイクリングロードが好きでない方や、

時間を間違えちゃったオッチョコチョイさんは、

国道を南東方面へ走れば多少早く柏原市へ入れます。

その場合も、

信号待ち等でナニワのオジさんに


『兄ちゃん競輪選手か?!』


とか聞かれますので、ええまぁ。とテキトーに答えておいて問題ありません。

二度と会う事も無いと思います。


柏原市に到着したら葡萄坂の入り口、

大県南の交差点へ向かいます。


坂の麓にコンビニがあり、

目を三角にしたロード乗り達が


『….かかってこいよ…』


と言わんばかりの雰囲気で

タムロしてるのが目印です。

でも実際に声を掛けると気さくな方が多いのでご安心下さい。


葡萄坂に入ると墓地の辺りから急勾配になり、

墓地といえば、

最近は少子化過疎化の影響で墓守りが居なくなり、墓が荒れ放題で社会問題になっているとか。

皆様、お墓参りはされましたでしょうか。


とにかく、

このコースでは最も厳しい登坂でもありますし、

達成感に浸る為にも、

後でログ見てニンマリする為にも

葡萄坂のゴールとされる変電所まで、

しのごの言わずに全力で駆け上がって下さい。

だいたい20分くらいの登りですし、

僕は今年墓参りに行ってません。


変電所を過ぎると、

その先には痛快な下りが続きますが、

すぐにまた登りになります。


この辺りでボトルの水が無くなり

アイヤーとなった頃、

タイミングよく自販機が現れますが、

『自転車を立てかけないで!』

と張り紙されてますので、

決して立てかけてはいけません。


トップチューブに跨り器用にボトルを満タンにしたら、


また坂を登ります。

ずいぶん高い所まで登ったなぁ、と思う

のどかで素敵な景色も見下ろせます。

この辺りまで来ると、

葡萄坂を全力で登った事を後悔しはじめる事と思います。


十三峠の裏に入ると、

斜度も峠の名に恥じないなかなかの登りごたえなので、


なぜあの時全力で走ったのか、

そんな事に何か意味があったのだろうか、

と自問自答しながら必死で踏んで頂けると思います。


小さなトンネルを潜ると十三峠の頂上。

駐車場はアベックの車でいっぱいです。

こちらはと言うと、

汗でずぶ濡れの自転車おじさんか憂いた表情で地上を見下ろしてるだけ。


こんな所に用は無いので、

サッサと下る事にします。


十三峠は道幅も狭く路面も荒れ気味で、極上の減速コーナーが続きますので、

下りは大変危険です。

心して下る様、お願いします。



下りきったら、

そのまま真っ直ぐ170号線まで出て、

左へ向けて走ると、すぐ

FRANCY JEFFERS CAFEが見えてきます。

倉庫を改装したこのカフェは大変大きく、

なんと店内まで自転車を入れて、

自転車と一緒に食事が出来るので、

盗難の心配なくユックリ出来ます。

外のスロープから店内に入り、

さらに大きなスロープで二階まで自転車を持ち込み、先に席を取ります。

スロープには滑り止めしてあり、

クリートでも滑りにくいのですが、


僕の場合手すりを使わず降りていたら

滑ってコケそうになりました。

皆さんも、滑り止めしてあるからといって油断してはいけないとキモに銘じて下さい。


他のコーヒースタンド同様、

カウンターにて注文します。


コーヒーとハーフサンドを注文し、


「1300円になります。」


え?


「あ、1300円になります。」


…決してお金が無いってワケじゃないんです。

ただ、朝メシで千円越えするのは幕の内のOLかしら、という話しで。


とはいえ気の利いた冷製スープも付くし、実際食事は美味くボリュームもあるので、結果満足頂けるかと思います。

他にもメニューは充実していますので、

何度来ても飽きそうにないです。


また、店内には自転車撮影用のラックや、自転車雑誌、自転車用品を使ったインテリアなど散々インスタバエする環境が整うだけでなく、

存分に自転車を堪能出来ますし、

セルフで頂けるお冷にはレモンが沈められていて、渇いた喉に最高です。

因みにこのカフェの店内に持ち込める自転車はスポーツバイクのみで、

となると、僕の後輩が作った魔改造ママチャリはどうなのかしら、

と思うのですが、

線引きが分からなければ、店員さんに聞きましょう。

何であろうと、

店員さんがダメっていったらダメなんだからね!


さて、

カフェを出たら、店の前の国道170号線を北上、県道24号線に入り、まっすぐ大阪市内へ向かいます。


この道は自転車レーンが整備されていて、信号は多いもののとても走りやすいと思います。


ただナニワのオジさんも多く、

抜いても抜いても信号無視して抜き返してくるのでココぞ、という直線で残った力を振り絞り、フルスピードで抜き去るしかないかも知れません。


内環状線を超えれば、

もうすぐ終点、難波です。


大阪の素晴らしさを堪能出来る

周回コースだと思います。


ぜひ挑戦して、

ナニワのオジさん達を堪能して下さい。




帰省ライド

歯のブリッジが割れた。


すぐに歯医者に行き、

ブリッジ作り直しって事で、

総額二万四千円とか。


妻は別に何も言わなかったけれど、

電車代を節約するという口実で、

盆は僕一人、

自走で帰省する事にした。


実家までは

片道150kmくらい。

淡路島一周と考えれば

どうという事は無い距離だ。


事前に荷物を実家に送って、

朝7時半に出発すれば

昼過ぎには着く。


兼ねてからの願いだった

自転車での帰省だ。


途中、良さげなパン屋で休憩を取り、

残りの距離を携帯で調べる。


まだ80kmもある。

いや、

もう80kmしかない、

と、

出来るだけ楽しそうなルートを寄り道しながら探して走り、

浮かれてオーバーペース気味で、


実家のある街との県境にある峠を登る頃には、もう脚を回すのも辛くなっていた。


あと数メートルで市内に到達するってトコで電話が鳴る。


母からだ。

後どれくらいで市に着くのか聞いて来たので、まぁ、あと5秒くらいかな笑。


と、そこで母は初めて僕が自転車で帰ってる事に気付いたらしく、


家の玄関に着いた僕の顔を見た母は

開口一発、

「あんた二児の父やのに、事故でもしたらどうするの!」

と怒られた。


そりゃまぁ、そうか。


後を追って電車で来る予定だった妻は

娘の発熱で帰省出来なくなり、

前乗りで帰ってた息子は従兄弟と親父とべったり遊んでる。


二日目は特にやる事もないし、

僕はせっかく自転車もある、

という事で、

市内一周してみる事にした。


さて、

行くか。


そういえば、小5の頃だったか、

自転車で市内一周してくる、

と自分的市内一周を目指し、

母に見送られて出発した事があったが、

随分小回りな一周だったし、

結局最後はオモチャ屋に寄って、

本屋で立ち読みして敢え無く帰って来てしまった。

恥ずかしく、苦い想い出だ。


流石にあの頃よりはマシなルート取りで走り出し、


最初の丘に差し掛かる頃、

20代の頃この辺りでパトカーから逃げた事に気が付いて

…嫌な事思い出したな、と

少し憂鬱な気持ちになってギアを二枚落とし、

一気に丘を駆け上がった。


その丘は以前父の自転車でヒイヒイ言いながら登ったのだけれど、

ロードだと大した事はないと感じたので、機材ドーピングってのはあるな、

と痛感する。


港側に出ると美しく、赤レンガ倉庫等、観光地として整備されていた。


その先にある壁の様な港大橋。

僕は幼少の頃この辺りに住んでいて、

親父の趣味で着せられた巨人の原選手のユニフォームでよく走り込みをしていた。

港大橋の端をせっせと駆け登る小2の僕には、その坂はとても大きかった。


とはいえその頃、

リトルリーグに入ってたワケでもなかったし、

何の為に走り込んでいたのかは

今も不明だ。


さて、

半島に入るとサイクリング感はぐっと上がる。


穴場の海水浴場へ向かう道だが、

学生の頃その海の家でバイトしていて、

同じバイトの女の子を好きになったけど、

その子に「ミエハルさん」とアダ名されたし、

当然叶わぬ恋に終わった事を思い出しながら、


僕は、半島の反対へ抜ける峠道、

「ノーマ峠」へ入る。


減速コーナーが繰り返す、走り屋のメッカで凶悪な峠道。


僕の友人も何人かガードレールの向こうへ飛んで行ってると聞いていたが、

登りで自転車なら大して怖くない。


が、


なんと、


峠は減速コーナー区間手前で通行止めになり、


代わりに

トンネルが貫通していた。

それはいい。


僕はトンネルなんか無いコースだと思ってライトもテールランプも外してきていたのだ。


なんてバカなんだ。僕は。


そのトンネルは思ったより長く、

緩やかにカーブして出口は全く見えない。


よりによって今日は黒いジャージを着てる。


暗闇の中で、自分の置かれた状況を鑑みて、トンネルに入った事を後悔した。


対向車のライトが逆光になれば、

後方からくる車には完全に僕は見えなくなるのではないか。


死が脳裏をよぎる。



せめてテールランプがあれば。


携帯のライトをつけ、

背中のポケットからチョイ出しにし、

少しでも視認して貰える様に、

大袈裟にハンドルを振ってダンシングを始める。


とにかく、この登り勾配のトンネルを、

全速力だ!


その時、後方から、車の音。

祈る様にペダルを回す。


どうやら気付いてくれた様子で、

その車の動きで後ろの車両も交わしてくれた。


でも、次のグループの先頭が気が付いてくれるとは思わない。


その矢先、出口と思わしき光が見え、

僕は全速力で走りきった。


大層な恐怖体験だったが、

トンネルを抜ければ

緩やかで長い下り。その先は、


白く美しい浜が広がる。

水着の女の子に癒される、

かと思いきや、家族連れか、でなければ半身に墨が入った悪そうな若者がこれ見よがしにタムロしていて、


20年前と余りにも変わらない風景に、

なんだかまた憂鬱になる。


海岸を抜け、山間に入ると、

昼間だというのに農村に

殆ど人が居ない。


オシャレな感じのカフェに入ると、

サイクルラックなんかもあって現代的だ。

そこから田園を抜ける新しい道は、

走りやすく気がつくともう、

ウチに着いてしまった。


50kmもないじゃないか。


もう一度小高い丘に逆から登って街を見下ろす。


四方を山に囲まれた街。

若い頃、僕らはよく、

この街を箱庭と呼んだ。


それは色んな意味での閉塞感を表していて、それは今も変わらない。


良くも、悪くも。



翌日は、地図で見てもクネクネと蛇行し、激しい勾配と標高を予感させる市外の山間部に向かった。


そこは案の定、

とんでもなく蛇行した山道で、

それは想像以上に気持ち良く、

写真を撮るのも忘れ夢中で駆け上がってしまった。



最終日、自転車で大阪へ帰るのはさすがに母に止められ、

父が娘に会うついでに僕と息子を車で送ってくれた。


その夜、

父と飲む。


おやすみを言って寝室へ駆け込んで行く息子を、娘がキャッキャ言いながら追いかけて行く姿を愛でた後、


親父が

「お前は何しでかすか分からんからな。今回も突然自転車で帰ってきたり」


ハハハ、と愛想笑う僕に、

続けて

「でもお前の人生はワリと良いんじゃないかと思う。点数付けるなら、そうやな…」


「85点」


何その半端な。


「給料安いからな、85点」と言って親父は笑った。


田舎にいる頃から親父には迷惑ばかりかけていた。

そして実際、

あの街に良い想い出なんかあまり無い。


いやでも、


嬉しくて楽しいだけの事なんて、

大した想い出じゃないんだろう。


振り返れば、

良くも悪くも変わらないあの街が

いつも赤点だった僕を、


今も変え続けているのだと思う。







東京サイクリング


「うそうそ、ホントに思ってないから言えるんじゃけん…」


「…かわいいと思っとお…。かわいい…。これは本音やけ」



…サイクリングロードってのは、

真っ直ぐだと思い込んでボーッと走ってると、

思わぬ所で行き止まりにぶち当たってしまう。


でも、その行き止まりに関して言えば、


ガードの向こうに芝の伸びた見晴らしの良い小さな丘があったので、

ガードを跨いで写真を撮ろうとしていると、


丘の下から、

こっちが赤面する様な、

先のカップルの会話である。

見てはイケナイ物でも見るように、

脇の下から覗き見た彼らは、

日焼けピクニックをするカップル。


1人は短髪でビキニパンツのマッスルガイ。

もう1人は対称的に線の細い、男性。



…その時僕は感じたんだ。


東京の「自由」ってヤツを…。



荒川サイクリングロードは、

野球少年達とサイクリストでごった返し、

まぁ、走りやすい歩道、くらいの感じで、ビュンビュン飛ばすには時間帯を選ぶ必要があるのだろう。


走る先々に野球のグラウンドが広がってるのは、大阪の河川敷も同じで、


あらためて日本人の野球愛の深さを

痛感しながら、

全国どこの河川敷にもある様な、

サイクリングロードをひた走る。


短期の東京出張にわざわざロードバイクを持ってきたので、

宿舎から遠くない荒川サイクリングロードの起点へ向かい、


当て所なく走るのもどうかと思うので、

今回はネットで調べたコースをトレースする事に。


荒川サイクリングロードから入間サイクリングロードへ、

そのゴール手前で逸れて「サイボクハム」で昼メシにトンテキを食らうルート。


ざっくり片道80km、

往復しても160kmくらいか、と

走り出したものの、

あまりにもサイクリングロード然としていて黙々とクランクを回し続けるだけの道のり。


前週に、

都内に向かって観光がてら走りに行った時の方が、楽しかったかも知れない。


その日は、

LUGに飯食いに行こうと走ると

お店は引越し中。

ちゃんと調べて来なかった自分に苛立ちながらも、


それならという事でRapha東京に。

ここで食べたTDFサンド?がメチャクチャ美味くてスッカリ機嫌を良くし、

偶然通りかかった皇居周辺で行われていた、

パレスサイクリングという、

皇居周辺道路を一部自転車専用道とし、

サイクリングコース化するイベントに混じってみた。


道端ジェシカみたいなトライアスロンな女性ライダーや、貸し出しされてるタンデムバイクに乗る若いカップル、

家族で自転車を楽しむ人々など様々。


その中でガンガン飛ばすローディーの方が場違いな気もしたので、

それなりにスピードを抑え、距離を稼ぐ方向でグルグル走ってると、


カーボン製のロードバイクばかりの中で一際目立つスチールのフレームを見つける。


アーミーグリーンの、カラビンカだ。

飛び抜けてオシャレな感じがしたし、

INSTAでいつも見てるホンザキ氏かな?


でもまさか、この大東京でそんな偶然あるだろうか、という気がして、

声をかける事なくスッと前に出た。

(後でご本人からインスタで連絡を貰いました。)


皇居周辺という事で、

道は綺麗だし景色も良く開放感もある。

何よりこんな都市のど真ん中で自転車専用道なんて、

非日常感が気持ち良い。



そう、

今こうして走るサイクリングロードにも、

確かに非日常感はあるのだけれども。


そう言えば、

すれ違うロードバイクに乗る人に、ヘルメットを被ってない人を結構な数見たと思う。

これは文化の違いか、分母の違いか。


僕自身、ヘルメットに救われた経験が何度かあるので、怖くないのかな、とは思うけれど、

それがスタイルであれ何であれ、

他人がとやかく言うモノでもないし、

そういうのは好きじゃない。


そう、

東京は自由…。



荒川サイクリングロードから入間サイクリングロードに入ると、

幅員は狭くなり、

サイクリストもグッと減る。


暑さで参ってきて、

水といっしょにジュースも買って、

ゴクゴクとその場で飲み干し、

水は水でボトルに入れるけれど、

夏の陽射しがボトルを温めてしまって、

買い足した水はすぐヌルくなってしまう。


サイクリングロードを逸れて、

サイボクハムの近くまで来ると、

なるほど、東京も少し走ればそれなりの田舎町に到達するんだな。

そう感じて間も無く、

目的地、サイボクハムに到着。


なんだか腹は減ってるのに食欲がない。

正直、

肉とかハムとか、

ムッとする。


が、

目の前に現れたトンテキとハム。

とりあえずカブリつくと、

甘く香ばしい肉汁が

じわっと舌を包んで、

一気に食欲を思い出させる。


コレはビールしかない、

と、

慌ててノンアルコールビールを購入したがコレはまぁ、

やっぱあんまり美味くないな。

でも、

いかに東京が自由とはいえ、

流石に飲酒運転はマズイし。


ここら帰路、80km。


とりあえず残り数キロでサイクリングロードはゴールなので、そこまで行ってみたが、


何もなかった。


予定通り、折り返すか。


でも国道で真っ直ぐ帰ったら50kmほど。


…やっぱ、

真っ直ぐ帰るか。


そう、東京は自由なんだからね!


特に面白くも何ともない、

ただ都心へ向かうだけの国道を、

信号で捕まり、

車に邪魔扱いされながら、

僕は黙々とペダルを回す事に。


水の飲み過ぎで腹はポチャポチャしてるのに喉ばっかり渇く。


たまらず自販機でキレートレモンを買う。爽やかな酸味が恋しい。


って、よく見たらキレキレレモンて買いてあるやん!甘っ!

フザケやがって…!


類似品と本物の見分けもつかない程の渇きを潤せるのは、


やっぱりビール。ビールしかないで…。


日も暮れはじめた頃、

誰も待たない宿舎に到着。


近所のコンビニで買ったビールに

早速指を掛けそうになったが、

その手をそのまま冷蔵庫へ入れた。


まだだ。


ここで焦って飲まない。

大人は堪える事で幸福感を跳ね上げる術を知ってるモンだ。


シャワーを浴びて埃と汗を流し、

そこで初めて脚にキテる事に気がつく。


部屋着に着替え、

せっかくだ、グラスも出そう。


誰が置いてったのか、

これは中々良いグラスだ(多分)。


冷蔵庫から出したビールのプルトップを

僕は勿体つけずに引いた。


『パシュッ』


小気味良い音が、鼓膜を震わせ

耳小骨を伝う。


グラスに注いだビールをンぐンぐと飲み干して、

誰ともなく「うまい」と呟いた。


誰にも縛られず、

誰も知らない街で暮らす事が

自由だと思ってた頃があった。


自由とはなんだ。


クタクタに疲れた脚。

飲み干すビールの喉越し。

舐め回すように今日のログを見つめる時間。


誰かと比べる事もなく、

比べられる事もなく、


達成感と、

自分の事が少しだけ

好きになれる時間がある。


好きな自分でいられる事こそが、

きっと自由という事で、


東京ってのは、

そんな人が沢山集まる街なんだろうなと

ボンヤリ思いながら、


ソファの上で僕の意識は溶け落ちた。










チェーン洗浄

ヨッシャン、明日どうする?、


と前触れもなくメッセージを送ったのに、

「六甲コーヒーコースで。」

と、気持ち良い返事が返ってくる。


それを受け、

少し上がったテンションを利用して、

チェーンの洗浄でもしちゃうか、と。


個人差はあると思うけど、

僕の場合は150〜200km毎に洗浄。二回に1度はそのまま洗車という感じ。


今回はとりあえず、ドライブトレインだけ、綺麗にしておく。


使うのは、

パークツールCM5.2と、

ディグリーザー。水に洗剤、

グランジブラシと、

チェーンオイル。

あとはボロ布のウエス。


チラシを敷いて、

さて、やるか。

まずクリーナー本体の蓋を外し、

チェーンを挟み込んでから、

蓋を金属製のクリップで、

パチコン、パチコン、と留める。


本体は樹脂製だけど、

実際持つとシッカリとした作りで

剛性感もあり精度も高いと感じる。


ロード乗りでまだコレを使ってない人には、一刻も早い購入を勧めたいくらいだ。


ディグリーザーをラインまでなみなみと注ぎ、

後はペダルを反時計回りに40回転。

コレだけでも随分キレイになるんだけれど、

ディグリーザーを紙に吸わせて廃棄して、

次は中性洗剤入りの水をクリーナーに注入。40回転。

最後は、真水に入れ替え、

また40回転。


ウエスで拭き上げれば、チェーンはピカピカになる。


次は後輪を外し、

カセットの清掃。


と言っても、ウエスの端と端をピンと張り、

それをギア板とギア板の間に入れて、左右に擦り取る。

バラすよりも手軽だし、それなりにキレイになってくれるので、日常の清掃には

コレで十分だろう。


後はグランジブラシなる三方向から挟めるブラシにディグリーザーを吹き、チェーンリングをガシガシと汚れを擦って、

ウエスで磨く。


フレームに飛び散ったディグリーザーの汚れなどを拭き取って、

車輪をハメこむ。


チェーンを掛けたら、

お気に入りのチェーンオイルを注油し、


余分な油を拭いて出来上がり。


慣れれば30分くらいの作業だろうか。

ピカピカに輝くチェーンを見下ろしながら、グローブを外し、

僕はボトルに入れたアイスコーヒーを啜った。




翌朝、

予定通り走り出す。


変速がパチッ、パチッと気持ち良い。


登りで引き離したハズのヨッシャンに、下りで追い抜かれる。


彼もずいぶんカンが戻ってきたようで、

競う様にして僕らは六甲の山を下り、

麓のコーヒースタンドに入る。


無機質な内装の奥にある

有機的で物々しい焙煎機が、

ロースターでもあるタオカコーヒーの雰囲気を一層良くしてる様に思えた。


「モッツさん今日誕生日でしょ?」


そう言って、

ヨッシャンが奢ってくれたコーヒーを口にする。


これは美味い。


シングルオリジンのライトローストは、

ライドの後にピッタリな爽やかさで、

思わず二杯も飲んでしまった。


そうこうしてると、

今時見ない車高の低いファミリアが、

ボォンと音を立ててテラス席の前を曲がっていく。


奥に車を止め、

歩きながらやって来たのは、

山を走って来た帰りというコッシーだった。


自転車の話になると僕らは完全にオタクで、ついつい身体が冷えるまで話に花を咲かせてしまう。


「モッツさんのロード、持ってみて良いですか…あれ?ヘッドガタ出てますよ?」


えっ?!マジで?!そういえば全然締め直しもしてないわ…


日常整備は疎かにしちゃいけないな、

チェーン洗ってばっかじゃなくて。


いつまで経ってもビギナーぽさが抜けないもんだと自嘲して、

僕らはコーヒースタンドを後にした。






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